第477話 合格者に超大物が混ざってた!
『ジャーキーの誓い』が思った以上に格好良かったので、ジャーキー屋さんのアホ三人衆がワーワー騒いでます。
でもそろそろ筋肉審査の方に戻らなきゃならないので、運命の再会編はこれくらいにしてもらいましょう。
っていうかラン姉ちゃんまったく忙しくないじゃん!クッソぬるい職場で忙しいとかほざいてるのはいかにも彼女らしいですが。
まあ、これなら映画作りで引っ張り回しても全然問題無さそうですな。
「はいピコねえ」
ピコねえに2枚の金貨を差し出した。
「む!?なんか知らないけど、記念品が2枚追加されたよ!」
「いえ、この2枚は中央区の宝石屋さんにでも売って支度金にしてください。最初の金貨はアホ三人衆の再会記念品ですから、コレとは別にして大切にしまっておいてください」
「支度金!?うは、メチャメチャ助かる!!ありがとう専務!」
「でも千年前に実際に使われていた貴重な金貨ですから、宝石屋さんに売る時、千年モノだということを強調しまくって、売値を吊り上げた方がいいですよ?」
「「千年モノ!?」」
「こんな綺麗なのに、千年も昔の金貨なの!?」
「間違いない情報です。中央区にある一番大きな宝石屋さんのオーナーは、やり手ですが結構誠実ですので、ピコねえが全力で交渉したら『古代の金貨』として買い取ってくれるんじゃないかな~」
「コレって、そんな凄い価値がある金貨だったのかーーーーー!」
たぶんこの金貨って1/5オンスくらいだと思うから、えーと大体6グラムかな?
1グラム5300ピリンだったから、これ1枚で31800ピリンってとこか。
「もし32000ピリンとか言われたら、ただの金として査定されていますので、他の宝石屋さんに売りに行った方がいいかもしれませんね」
「へーーーーー!ってか、なんでこの子金に詳しいの?しかも金貨の大きさを見て一瞬で計算したよね!?天才か!!」
「そうそう!クーヤってアホだけど妙に賢いのよね~」
「ししょーにゃんだから当然にゃ!」
おおう・・・、むず痒くなってきたから金の話はもうやめよっと。
「あ!ピコねえ、そろそろ筋肉審査が終わってるかもだから向こうに戻りますよ」
「そういえば、アレから結構時間が経った気がしますな。えーと、32000ピリンだったら別の店に売りに行けばいいんだよね?」
「うん」
「オッケーオッケー」
「記念品は売っちゃダメだからね!」
「あとでネックレスにしてもらうにゃ」
「あ、それなら私のもペチコに頼んでいい?」
「じゃあ、あたしがまとめてパンダ工房に依頼しておくわ」
ピコねえとぺち子姉ちゃんが、ラン姉ちゃんに金貨を手渡した。
「さて、いい加減仕事に戻るわよ~」
「ピコにゃん、また明日にゃ!」
「おう!まだ何も決まってない気がするけど私は必ず帰ってくる!金貨が高く売れたらジャーキーを買いまくる予定だから、たっぷり作っといてね♪」
「あ、まだ働けるって決まってないのか!クーヤ、ピコルのこと頼んだわね」
「お願いにゃ!」
「任されたのです!」
というわけでピコねえと一緒に筋肉審査の会場に戻ったけど、まだテーブルが大渋滞している状態だったので、ピコねえを連れてベイダーさんの所に移動。
映画制作会社が動き出すまで、彼女をジャーキー工房のアルバイトで雇ってほしいって頼んだら、快い返事を頂けました!
ピコねえが雇用契約書にサインをし、早速明日からジャーキー工房で働くことが決定したので、とりあえずこれで一安心。
その間に、レミお姉ちゃんの専属ハムちゃんに、『明日の朝ママさんにお話があるので家まで行きます』とハムちゃんメモに書いてもらうと、すぐに『はいはーい!ママに伝えとくわよん!』返事が来ました。
あとはママさんに助手1号を紹介すれば、ピコねえはオッケーですね。
ついでに2号と3号もいるって伝えとこう。
筋肉広場に戻ってきた。
ビュン!
「ほほう・・・。ちょっと筋肉が足りていないと思ったのだが、それどころかむしろこの中で一番強いな!文句なしの合格だ!」
筋肉神セットを装備している挑戦者が小さくガッツポーズした。
「よしッ!!」
おお!?
なんかあんまりマッチョじゃない女性が合格したみたいですぞ?
しかもこの中で一番強いって評価されてる。先頭バッター確定じゃないですか。
「普段からフルアーマーを着ているのか?」
「うむ。しかしいつも剣を振り回しているので、メイスの扱いに不安があった」
「剣を!?なるほど。それでメイスの振りも美しかったのか・・・」
彼女が鎧を脱ぐと、深い緑と水色が入り混じった、すごく特徴のある長い髪の美女が姿を現した。
背筋もピンとしていて、なんだかやたらと格好良い女性だな~。
ウチのプリンお姉ちゃんと雰囲気が近いかもしれない。
「名前は?」
「セシル・オルガレイダスだ」
「「!!」」
オルガレイダス?なんかどこかで聞いたことあるような・・・。
「オルガレイダス・・・、伯爵家の方でしたか!」
ガタン!
まさかの伯爵家の登場に、ライガーさんが姿勢を直した。
「そう畏まらないでくれ。伯爵家の生まれとはいえ所詮は三女だ。祝福の儀で召喚士と判明してからは期待もされず、剣士の真似事をしながら好きなように暮らしているだけの穀潰しに過ぎん」
とててててててて
「初めましてなのです。セシルお姉ちゃん!」
すごいのが出現してしまったからには、ボクが斬り込むしかないでしょう!
「お、おいクーヤ!」
「ハハッ!構わんよ。初めましてハイパー師匠!」
「召喚士が最強の職業になって良かったね!カロリーゼロさえ手に入れてしまえば、もうただの穀潰しじゃなくなるのです!」
「その通りだ!こんなに心が躍るのは生まれて初めてかもしれん。だから何としても審査に合格したかった。大きな夢が叶いそうだぞ!」
「普段から身体を鍛えていたおかげですね!」
高貴だけど傲慢な感じではなく、好感が持てる貴族かもしれない。
自虐タイプけど、それは召喚士という不遇職だったせいですね。
貴族には来てほしくなかったけど、こういう雰囲気なら全然問題無いと思う。
このお姉ちゃんだけかもですが、オルガレイダス家の評価一段階アップかな?
(おい!クーヤの野郎がまた貴族に特攻したぞ!)
(見てるこっちがハラハラするよ!)
(ん~、でも王妃様よりは全然マシなんじゃない?)
(凄いですね・・・。一瞬で緊張感が吹き飛びました)
(さすクーと言わざるを得ない)
向こうでお姉ちゃんズが小声で会話してるっぽいですが、アレ絶対ボクのこと話してるでしょ!どんな会話をしてるか大体想像できますけど。
とにかくボクがセシルお姉ちゃんの相手をしている間にも筋肉審査は継続され、ギリギリ勢も含めて十数名ほどの合格者が出たようだ。
それからライガーさんとお姉ちゃんズが審議をし、挑戦する順番を決めた。
もちろん強い人から盾の訓練を始めてカロリーゼロに挑むのですが、順番待ちの人達は自分の番が来るまでひたすら筋肉を鍛える感じになります。
筋肉審査はこれっきりじゃないので、合格できなかった人達もお金を貯めながら筋肉を鍛え、そろそろいけるだろうと思ったら審査を受けに来るって流れですね。
そしてカロリーゼロに挑戦する最初の3名ですが、セシルお姉ちゃん、アンリネッタさん、そしてパンダ工房の従業員であるガストンさんに決まりました!
「私も審査に合格するハズだったのにな~」
「ピコねえのへなちょこ筋肉で受かるわけないじゃないですか」
「クソガーーーー!でも就職先が見つかったからいいや。んじゃそろそろ宝石屋に行って金貨でも売ってきますかのう」
「あの大きな宝石屋さんで金貨1枚に45000ピリン以上の値がついたら即売りしていいと思いますよ。たぶん適正金額だと思うから」
「了解でやんす!あと明日の朝、ジャーキー工房の前にいればいいんだよね?」
「あい!遅刻しないようにね。先輩にボコボコにされるから」
「くそお、先輩め!おぼえてやがれ!」
負け惜しみのセリフを吐いた後、呪詛を撒き散らしながら、ピコねえがパンダ工房から飛び出していった。
やっぱピコねえ面白いな~。
この人をゲットできただけで、ボクも大収穫でした!