第472話 ライガーさんの仕返し
さてさて。
ルーンメイスの破壊力を見せた後、盗難が不可能ってのと、呪われたダンジョンの証明は終わりましたが、次はお姉ちゃん達の実力を見せなければなりません。
それも盗難防止に繋がるわけですが、実力行使で伝説の装備を奪おうと考える人にも絶望感を与えなければなりませんので。
召喚士の未来を守るため、権力者が相手だろうとボク達は一歩も引きません!
揉め事を未然に防ぐためにも、力を知らしめておく必要があるのです。
「じゃあ次は、あのダンジョン内部のヤバさを見せてやるぜ!」
「いや、だからもう無茶しなくていいって言ってるでしょ!」
「次見せる動画は違う日に記憶したヤツだから大丈夫だ」
「その『レ%@』ってのは何?」
「あ~、えーとだな、風景と音声を記憶したモノのことを、動画とか映画とか映像とか呼んでるんだ」
「ほうほう、動画に映画に映像ね?覚えた」
ライガーさんが映写機の方へ歩いていった。
「どっちから見せるんだ?」
「燃やす方から」
「ああ、滅茶苦茶バトルの方か」
あ、なんでライガーさんがそっちに行ったのかわかったかも。
「おそらく、呪われたダンジョンの恐ろしさとAランク冒険者の強さに衝撃を受けると思うが、召喚獣となって活躍するカロリーゼロが出てくるので、そっちも注目して見てほしい」
「「おおっ!」」
4階のビデオとチェンジし、レオナねえが再生ボタンを押した。
ガシンッ! ガシンッ! ガシンッ! ガシンッ! ガシンッ!
カロリーゼロが階段を上がっていくシーンからスタートです。
下からのアングルだと実は結構怖いですね。
カロリーゼロがズッコケて落ちてきそうで、ハラハラドキドキするのだ。
「カロリーゼロだ!」
「これって階段を上ってるのか?」
「へーーーー!ダンジョンの中ってこうなってるんだ~!」
4階に到達したカロリーゼロのすぐ左にゾンビが出現した。
ドガッ!
すかさずメガトンパンチでぶっ飛ばし、カロリーゼロが画面左に消えた。
「今、一瞬キモいのが見えたんだけど!!」
「何かいたな!」
「カロリーゼロに殴られてた!」
召喚士達がそんな会話をしていると、画面右から左にゾンビが何体も横切っていくのが見えた。
「うぇえええ!?キモいのが左に行った!」
「今のってゾンビじゃないのか!?」
「そう言えばこのダンジョンって、アンデッドが出るんじゃなかったか?」
ゾンビが右から出てこなくなり、レオナねえ達が階段を駆け上がっていった。
バゴッ! ドガン! ゴシャッ!
クーヤちゃんロボの戦闘音が鳴り響く中、階段を上り切った戦場カメラマンが左を向いた。
『『ウヴァアアアァァァァァアアアアアァァァアアア!!』』
もちろん現場は地獄絵図。
数十体のゾンビが蠢いており、吐きそうになるほど悍ましい光景だ。
「おわあああああああああ!!」
「なんじゃこりゃあああああああああ!!」
「ゾンビの大群だ・・・気持ち悪っ!」
ドガッ!
「見て!カロリーゼロが1人で戦ってる!!」
「おおおお!頑張れカロリーゼロ!」
その直後、カロリーゼロがパッと消え、巨大な火の玉が投げ込まれた。
ゴファーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!
ゾンビの大群が火だるまになり、現場はもうメチャクチャだ。
『『グオオオエエエァァァァアアアオゴゴゴゴゴゴゴゴ』』
『炎との挟撃だ。斬りかかれッッ!』
『『うおおおおおおおおおーーーーーーーーーー!』』
ザシュッ! ズシャッ!
レオナねえ達が一斉にゾンビに斬り掛かり、ゾンビは炎で燃え上がってるし、紫色の血や腐肉が飛び散りまくってるしで、もはや地獄の極み映像だった。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
絵面があまりにも凄惨すぎて、召喚士達も呆気にとられている。
「強い・・・、これがAランク冒険者か!」
「よくあんなのに突っ込んでいけるね・・・」
「ねえねえ、カロリーゼロは?」
「ん?そういえばいないな」
そこでようやくライガーさんが口を開いた。
「偵察・陽動という役目を終えたから、火の玉が飛んでくる前に消したのだ」
「なるほど!」
「これで呪われたダンジョンのヤバさがわかったろ?恐怖に震えながらアンデッドの大群と戦いまくり、そこまでやってアタシらは伝説の武器防具を手に入れたんだ」
「この地獄を乗り越えなきゃ手が届かないというわけかい。ハハッ!こんなのあんたら以外にゃ無理だよ!」
その言葉を聞き、口端を上げたライガーさんがこっちを見た。
「ここはもう十分だろう。次の動画にチェンジしてくれ」
「オッケイ」
もちろん次は2階中央広場でのバトル映像だ。
レオナねえが2階のビデオと入れ替え、中央バトルまで進める。
ドガッ! バキッ! グシャッ!
「見ろ!カロリーゼロに敵が集まっているだろう?敵が全てアンデッドなので、残念ながらパンチで倒すことが出来ないのだが、ああやって最前線で大暴れして敵の注意を引きつけ、後ろの冒険者達が楽に戦えるようにしているのだ!」
「「なるほど!!」」
「冒険者達の戦闘も見所満載だが、俺が皆に見せたかったのはカロリーゼロの方だ。もう気付いてる者もいると思うが、これまでの戦闘でカロリーゼロは三つの役割をこなした。偵察に陽動、そしてほら!自ら盾となって仲間を守っているだろう?」
これを召喚士達に説明したくて、ライガーさんはそっちに行ったわけです。
召喚士達にとって重要なのは、カロリーゼロの活用法なのだ。
「そうか!カロリーゼロが手に入れば、冒険者にだってなれるのか!」
「そんな使い方が・・・」
「重い物を運んだりも出来るよな!」
「その通りだ。カロリーゼロさえあれば何だって出来るぞ!」
ん?ライガーさんがボクの顔を見てますね。
「ちなみに今ダンジョンで戦っているカロリーゼロだが、実はあの黄色い子が操っている。すなわちクーヤがカロリーゼロの活用法を一人で考え、その全てを俺に伝授してくれたのだ。あの子が俺の師匠だ!」
なにィィィィ!?ライガーさんが裏切りよった!!
「え?あの子が!?」
「そうか、だから冒険者達と一緒にいたのか!」
「いやいやいやいや!ちょっと待て!あの小っちゃい身体でどうやってカロリーゼロ倒したんだよ!?」
タタタタッ
ぺたぺたぺたぺた
アンリネッタさんがショタのぷにぷにボディーを触りまくっている。
「筋肉の『き』の字も無いんだけど?ぷにっぷになんだけど?」
口を尖らせてライガーさんを睨みつけた。
ニヤニヤ笑っててムカつきますね!変なタイトルを叫んだ仕返しですか!?
「もう!しょうがないなあ。コレ!」
アンリネッタさんの胸んとこにカブトムシをくっつけた。
「コレって?」
アンリネッタさんの胸にくっついてるカブトムシを指差す。
「うわっ!いつの間にか虫が付いてるし!」
ブブブブブ
カブトムシを飛ばせてホバリングさせた。
「・・・ちょっと待って。これってガジェムじゃないの?」
「「な、なんだってーーーーーーーーーー!?」」
「たまたま運良くガジェムを手に入れることが出来たのです。この子を何度もぶつけてカロリーゼロを倒したの。でも内緒ですよ?」
「いや、思いっきりみんな聞いてるけど?」
「そんなバナナ!!」
ぐぬぬぬ・・・、人畜無害な子供生活を満喫してたというのに!
まあカブトムシとカロリーゼロくらいならバレてもいいかあ。
「そんなわけでクーヤもカロリーゼロ持ちではあるが、ガジェムなんて誰も持ってないからカロリーゼロの倒し方を教えたりは出来ない。まあ俺の師匠ってことだけ覚えといてくれ!」
「あはははは!筋肉神の師匠とは凄いじゃないか!」
「かわいい師匠だなおい!」
「「うわっはっはっはっはっはっはっはっは!!」」
まあ、小さな子供が偶然ガジェムを1体手に入れて、それでカロリーゼロを倒したってのは有り得る話ではあるので、大きな騒ぎにはならないと思う。
これから何人もの召喚士がカロリーゼロ持ちになるわけですしね~。
しかし『筋肉神ハイパーライガー』って名を流行させた仕返しをくらうとは!
そこのお姉ちゃん達!ニヤニヤするのやめなさい!