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第470話 パンダ工房に召喚士が集結

 

 ワイワイ ガヤガヤ


 上映を予定していた時間になる頃には、パンダ工房の食堂が召喚士で溢れ返っており、これから一体何が始まるのかと大騒ぎになっていた。


 ライガーさんの人柄が知れ渡っているのか、『すべての召喚士に関わる重大発表』という謳い文句に対して疑いを持っている人はいないようで、それが一体何なのかってのを予想して盛り上がってる感じですね。



 ライガーさんが前に出て、『ピッ!』とホイッスルを鳴らした。



「俺の呼び掛けに応えてパンダ工房まで足を運んでくれた皆に感謝する!仕事や学校を休んでまで来てくれた人が大勢いるのは承知している。だが、それほどまでの重大発表なのだ!絶対に後悔させないから安心してほしい」


 ワー パチパチパチパチパチパチ。


 まったく意味が分からないだろうけど、とりあえず歓声が巻き起こった。


 歓声が収まると、ライガーさんがテーブルの前まで移動した。


「重大発表と言ったがそれはもう少し後だ。その前に見てもらいたいモノがある」


 ライガーさんが古代の映写機を指差した。


「ココにあるのは、そこにいるAランク冒険者達が手に入れた、風景と音声を記憶できる魔道具だ。これに少し前に記憶したモノが入っているので、まずはそれを見てもらおうと思っている。正直、恥ずかしいのだが仕方あるまい・・・」


 召喚士達が『何のこっちゃ?』って顔になった。


「では早速始めようと思う。向こうの壁に注目してくれ!」


 召喚士達が何もない壁に目を向けた。



「それではこれより、『筋肉神ハイパーライガー、激闘の記憶』を上映します!」



 ボクが割って入ると、眉を吊り上げたライガーさんがパッと振り返った。



「こらクーヤ!勝手につけた変なタイトルを皆の前で叫ぶな!」


 てへぺろ顔で召喚士達に手を振って応えた。


「くっ!まあいい、ではスタートだ!」


 ライガーさんが再生ボタンを押して、素早くボク達の方に移動した。



『見えた!カロリーゼロが1体、他に魔物の姿は無し。チャンスだ!』



 映画はレオナねえのセリフから始まり、食堂ののっぺりした壁に、カロリーゼロの生息地である岩場の風景が映し出されると、召喚士達が目を大きく開いた。



「「おおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーー!」」



 ブオンッ


 メイスを一振りしたライガーさんが歩いていき、カロリーゼロと対峙した



「あのフルアーマーの戦士ってライガーなのか!?」

「鎧がピカピカ光ってるぞ!」

「エエエエエ!?もしかしてあのカロリーゼロと戦うの!?」

「嘘でしょ!?いくら何でも無謀すぎる!」



『いざ勝負!!』


 タタタッ ドゴッッ!



「「いったーーーーーーーーーーーーーーー!!」」



 筋肉神と大巨人による凄まじい殴り合いが始まり、一瞬にして召喚士達が総立ちとなった。



 ズザザザーーー


『かはッ!』



 従業員達に見せた時と同じく、ギャラリー全員が召喚士の夢と希望を背負った筋肉神ハイパーライガーを応援しており、ピンチになると悲鳴をあげ、攻勢になると右腕をブンブン振り回して全力で声援を送っている。



 ゴシャッッ!



「「うおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーー!!」」



 筋肉神ハイパーライガーがカロリーゼロの左足を破壊すると、あまりの大歓声に映画の中のお姉ちゃんの声すら聞こえないほどで、『今だ!』『頭を狙え!!』『いけライガー!』『勝てるぞ!!』と、熱狂の渦に頭がクラクラしてきた。



 ドゴッ!


 ガギン!


 ゴギッ!


 ズガン!



 ―――――そしてとうとう筋肉神ハイパーライガーが、大巨人を撃破。



「「うおっしゃああああああああああああああああーーーーーーーーーー!!」」



 ライガーさんが慎重にカロリーゼロに近付き、一言呟いた。 


 力尽き倒れているカロリーゼロの身体が消える。



『やった!ストック成功なのです!』


 ボクの声を聞き、振り返ったライガーさんの顔がカメラに映った。


『カロリーゼロを手に入れたぞ!!」』


『『おめでとーーーーーーーーーーーーーーー!!』』



 従業員達に見せた時は、ずっと大騒ぎしていてボク達の会話なんか聞こえなかったんだけど、召喚士達の場合は『ストック』する場面こそが重要だったので、この場面ではむしろ静まり返っていて、あの時の会話が全部聞こえた。



「カロリーゼロを召喚獣(サモンビースト)にしやがった・・・」

「何ということだ!!」

「ライガーさん強過ぎいいいいいーーーーー!!」

「いやいやいやいや!カロリーゼロだぞ!?冒険者達だって武器を何本も犠牲にしてようやく倒せるかどうかって相手なのに、ちょっと有り得んだろ!」

「有り得んも何も、たった今倒すとこ見ただろ!」



 映像が止まって、のっぺりした壁に戻った。


 会場が落ち着くのを待ち、ライガーさんが一歩前に出た。



「御覧の通り、俺はカロリーゼロを手に入れた!しかし勘違いしないでほしい。自慢がしたくて皆を集めたわけではない」



 そんな発言をしたライガーさんの全身は、オリハルコンの輝きに包まれていた。



「「筋肉神ハイパーライガーだ!!」」



「自慢してるようにしか見えんな」

「みんなが映画に夢中になってる間に着替えて、フル装備で登場したもんね」

「すでに『筋肉神ハイパーライガー』って覚えてもらえたようで何よりなのです」

「あれは伝説になる」


 ボク達の会話が聞こえたようで、半身だけ振り返ったライガーさんに睨まれた。


召喚士(サモナー)なら当然分かってると思うが、肉体を限界まで鍛えたところで倒せる魔物など限られている。だが俺は身長が4メートルもあるカロリーゼロを撃破した!頑強で名高い大巨人を倒せた理由は一つ、この最強装備を身に着けていたからだ」


 そう言ったライガーさんがルーンメイスを天に掲げ、全身に魔力を流して筋肉神装備をすべて光らせた。


「「おおおおおおおおおおーーーーーーーーーー!」」


「しかしこの装備はかなり重い。鋼鉄のフルアーマーよりもだ。まあとにかく何が言いたいかというと、このバカみたいに重い最強装備を着て戦える筋肉さえあれば、誰にでもカロリーゼロを倒すことが出来るということだ!」


「「うおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーー!」」



 召喚士達が雄叫びをあげた。



「ここで重大発表だ!俺はカロリーゼロを自慢する為に人を集めたのではないと言っただろう?すべての召喚士(サモナー)に、カロリーゼロを手に入れるチャンスを与えたいと思っている!」


「「うおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーー!!」」


 会場の盛り上がりが最高潮に達しました!


「ただ一つだけ問題があってだな、この最強装備は、後ろにいるAランク冒険者達に借りた物なんだ。こいつを借りるのに100万ピリンかかってる。カロリーゼロを撃破するまでという条件でな。すなわち、カロリーゼロに挑戦するには一人100万ピリン必要ってことになる」


「装備を借りるだけで100万!?ちょっとボッタクリ過ぎじゃない?」


 召喚士達から非難するような目で見られた。

 まあ最初からこうなることはわかっていたのですが、ちょいキツいっスね。


「それは違う!この最強装備を手に入れる為に、冒険者達は呪われたダンジョンに突入し、何度も死線を潜り抜けた。数百体のアンデッドを撃破し、ようやく手に入れた貴重な装備品なのだ。アンリネッタ、このメイスを持ってみろ」


 ボッタクリじゃないかと騒いだアンリネッタという筋骨隆々の女性が、ライガーさんからルーンメイスを受け取った。


「重い。これって間違いなく鋼鉄製じゃないね。一体何なのさ?」

「オリハルコンという伝説の鉱石で作られた武器と防具だ。噂のミスリルよりも硬い鉱石なのだぞ?手に入れようったって無理だろうな」

「オリハルコン・・・」

「この伝説の最強装備をオークションにかけたら、いくらの値が付くと思う?」

「・・・正直想像つかないけど、光り輝く伝説の武器防具一式なら、軽く億を超える値が付いても不思議じゃないね」

「言いたいことが分かったか?売りに出せば大金持ちになれるのに、召喚士(サモナー)達の未来の為に大切な宝物を貸してくれたのだ。カロリーゼロとの戦闘で装備が破損したら大損するのを承知でな。では話を戻すぞ?これを借りるのに100万は高いか?」


 アンリネッタという女性が、ボク達に向かって深く頭を下げた。


「激安でした。ごめんなさい!」



 最初はマッチョで怖いお姉さんだと思ってたけど、ちゃんとごめんなさいが言える良い人でした。逆に彼女のおかげて全員を納得させることができましたぞ!


 若干作り話が入ってるような気がしなくもないので、こっちも何とも言えない気持ちではあるのですが、最強装備を貸してるのは事実ですから、そんなおかしな話じゃないと思う。


 それに100万のお金にしたって、貧民街(スラム)を良くするために使うわけですからね~。


 とりあえずこれで、一番ネックだった部分は乗り越えたかな?

 

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