第469話 新婚さんにまたもや吉報が!
話し合いも終わったので、パンダ工房の外に出た。
相変わらずリズお姉ちゃん一人だけ残りましたけどね。
マグロのおっちゃんとメルお姉ちゃんに貸しているトナカイがいたので、側に駆け寄り話し掛けた。
「もうすぐあの二人がハイドリムドに帰りますので、トナカイくん達の仕事もしばらくお休みなのです!」
『『クォン!?』』
・・・ん?なんだか思ってた反応と違いますね。
エーーーー!って感じでショックを受けているのです。
『クォンクォンクォン!』
『クォンクォンクォンクォン!』
「シャンクルが必死に訴えかけてねえか?」
「なんて言ってるの?」
「それがですねえ、マグとメルと離れたくないって。毎日美味しいもの食べさせてくれるし、二人ともすごく可愛がってくれるって」
「へーーーーー!そんなに懐かれてるなんて羨ましいわ~!」
「だったらマグロのおっちゃん達にあげちゃえば?ハムちゃんの代わりに」
言われてみると、ボクから離れると寂しいと思って専属ハムちゃんを貸し出せないだけで、マグロのおっちゃんもメルお姉ちゃんも、クーヤちゃん仲良しポイントが余裕で100貯まってますね。
ハムちゃんじゃないけど、懐いているトナカイを1体ずつプレゼントするのはアリかもしれない。あの二人から離れるほうが寂しいわけだもんね。
ペカチョウを召喚した。
「ペカチョウに緊急ミッションです。マグロのおっちゃんとメルお姉ちゃんをココに連れて来てください!二人ともあの馬車の部屋にいます」
『チュウ!』
ペカチョウがパンダ工房の入り口のドアを開け、中に飛び込んでいった。
待つこと5分くらいで、ペカチョウが新婚夫婦を連れて来た。
「一体何なのだ!?この黄色いのに『チュウチュウチュウチュウ』と袖を引っ張られて連れて来られたんだが?」
「クーヤちゃんの側に誘導されたってことは、クーヤちゃんが呼んだのかしら?」
当然ながら、二人とも意味が分からず混乱してます。
「ボクが呼びました!そしてまた二人に吉報です!」
「またなのか!?」
「今日は随分と吉報続きですね♪」
「帰る時にトナカイを見つけたので、『もうすぐマグロのおっちゃんとメルお姉ちゃんが帰るから、しばらく仕事はお休みだよ』って言ったら、トナカイ達に『優しいし可愛がってくれるから二人と離れたくない』って言われたのです」
「「!!」」
二人がトナカイに近寄り、首の辺りを優しく撫でた。
「コイツらにそんなに慕われていたとは・・・」
「なんて良い子たちなの!お母さんは感激です!」
「「お母さん!?」」
新婚かと思ったら、すでに子供までいたでござる。
トナカイ達も目を細めて、幸せそうな顔をしてますね~。
「テケテケテケテッテンテーーーン!」
ビクッ!
突然のレベルアップ音に、マグロのおっちゃんとメルお姉ちゃんが驚いた。
「クーヤちゃん仲良しポイントが100貯まりましたので、二人にはハムちゃんが1体ずつ貸し出されます!・・・といつもなら言うのですが、マグロのおっちゃんとメルお姉ちゃんには可愛いトナカイが1体ずつ貸し出されることになりました!」
ワー パチパチパチパチパチパチパチパチ!
お姉ちゃん達から大拍手が巻き起こった。
「いや、すでに借りているが?」
「今回はそれとは違うのです!ボクの召喚獣なので、どうしても『貸し出す』って言い方になってしまうわけですが、プレゼントと考えてください!ハイドリムドに帰ってからもずっと一緒に暮らせますよ♪」
「「!!」」
二人の顔がぱあ~っと笑顔になった。
「本当にいいのか!?ハイドリムドでも一緒にいられるのか!!」
「やった!この子達とずっと一緒にいられるんですね!」
感極まったメルお姉ちゃんがトナカイに抱きつくと、トナカイが嬉しそうに『クォン!』と鳴いた。
「これで二人がハイドリムドにいても、ボクと『トナカイ通信』で会話できるようになりました」
「なんだその『トナカイ通信』ってのは?」
「例えば、ボクに伝えたいことをトナカイに言うだけで、トナカイがボクに伝言してくれるのです。ただ、ボクの伝言をそっちに伝えるのが難しいかもですね・・・。四本足ですので、土に前足で文字を書く感じになります」
「召喚士ってそんな事まで出来るのか!確かに、足で書かれた文字を解読するのは難しそうだな」
「トナカイ語を覚えればいい」
「無理に決まっとろう!」
「いくら愛が深くても、『クォン』の聞き分けは難易度が高いですね・・・」
まあトナカイに決まった以上、四本足でやり繰りするしかないです。
「お?そうなると、馬車を引くのはトナカイに任せられるな!」
「それです!でも馬車の高さをトナカイに合わせる必要がありますね~」
「まあそれほど変わらんと思うが、すぐにでも合わせるか」
「あ、その前にトナカイを一度リフレッシュさせるのです」
2体のトナカイを再召喚した。
「わあ~~~~~!ツヤツヤになりました!」
「じゃあボク達はそろそろ行くのです。また明日ね~♪」
「クーヤ、本当にありがとうな。正直、トナカイが一番嬉しいぞ!」
「ありがとうございました!」
これでようやくパンダ工房での用事は終了です。
話の流れから、マグロのおっちゃん達のアレコレを全部済ませちゃったけど、放っておいたら馬を借りたり護衛を雇ったりしてただろうから、今日のうちに色々話せてよかったです!
あ、トナカイ通信のことを王妃様に知られると面倒な展開になる予感が・・・。
でも聖なる水の残量とか知らせてほしいし、少々の面倒事もやむなしか!
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空飛ぶ島に行ってからの行動パターンは前の日と一緒で、ボクはスズメちゃんの特訓をして過ごしました。
ただ結構元気になったチャムねえが暇を持て余し始めたので、『第一回コカトリスグランプリ』が開催され、それがメッチャ面白そうで気になりすぎて、結局今回も長距離飛行は無理でした!
ルールは、コカトリスに乗って街を3周するだけ。
タマねえが奮闘したようですが、やはり街をよく知るチャムねえが優勝し、『丸洗い券』を一枚獲得。そして副賞としてハム水を一気飲みさせられてました。
ちなみに『丸洗い券』は近い内に使ってみるそうです。
なぜそれが優勝賞品になったのかは知りませんが、賞品は『真・丸洗い』ってことになっているらしく、参加してないボクまで駆り出されるみたいです。
まあいいんですけどね!
どうせだから何か理由をつけて、ベレッタお姉ちゃんも丸洗いしましょう。
聖書を翻訳してくれたお礼ってことでもいいですし。
まあそんな感じで楽しく過ごして家に帰ったわけですが、お母さんからコピーした聖書4冊と原本を受け取りました。
その内の1冊はマグロのおっちゃんに渡すとして、残りをどう使うかしっかり考えなきゃですね~。
もちろんお母さんは残りの1冊をゲットし、くつろぎタイムの間ずっと読みふけってました。しばらくこんな状態が続きそうです。
―――――そして、とうとう重大発表の日を迎えました!
聖書の前に、まずは召喚士なのです。
ボク達なんかより、ライガーさんが一番張り切ってるでしょうな!
お姉ちゃん達と一緒にブロディさんのお店に行き、本物の筋肉神装備と、注文した筋肉神装備モドキを2セット受け取り、ごちゃごちゃ聞いてくるブロディさんをスルーしながらパンダ工房に向かった。
「おお!知らんマッチョがいっぱいいるぞ!」
「細い女の子とかもいるけど?」
「召喚士でも、マッチョが嫌で普通の仕事をしている女性は多いですよ」
「集結させたわけだから、そういう子がいても不思議じゃないよね~」
「だから何が始まるんだよ!?」
「もうすぐ分かるっつってんだろ!」
食堂に入ると、すでに座席の半分ほど埋まっていた。
「ライガーさん、筋肉神装備とモドキ2セットを持って来たのです!」
「ありがとうな!」
「何人くらい集まりそう?」
「満員になるだろう。食堂に入り切らんかったら入れ替えてもう一度繰り返す」
「なるほど~」
「ブロディさんも席に着いてください!」
「召喚士じゃないのに、いいのか?」
「早い者勝ちだ。どうせ全員立ち上がる」
「まあそう言うのなら・・・」
遠慮したんだと思うけど、ブロディさんが後ろの方のテーブルに着いた。
・・・さてさて、もうすぐ召喚士の常識が覆されますよ!
『筋肉神ハイパーライガー、激闘の記憶』を見た召喚士達がどんな反応をするのか、すごく楽しみなのです!