表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/509

第46話 タマちゃん

 

 ―――突然ですが、誘拐されました。



 なぜこんな事になったのかというと、むしろ俺が聞きたいくらいです。

 昨日までの平和空間を考えても、次の日誘拐されるなんて誰が思います?


『このまま家族の一員として、ぬくぬく成長して行くんだろな~』


 そんなふうに考えていた時期が、俺にもありました。

 しかしですね、不幸というモノは突然やって来るのです。



 あの時、庭にさえ出なければ、こんな未来は訪れなかったでしょうに。






 ************************************************************




 ―――――ショタの回想シーン―――――




 クリスお姉ちゃんは会社へ出勤し、ティアナ姉ちゃんは学校へ登校して行った。

 レオナねえはまだ冒険から帰って来ていない。いや、冒険なのか知らんけど。


 そしていつものように朝からゲーム大会が始まったんですが、リリカちゃんが『モンキーコング』にドハマりしました。


 主人公はサルで、恋人ザルを助け出すのが目的のゲームなんだけど、敵ボスのゴリラが樽を転がしてきて、主人公のサルがそれをジャンプしながら最上階まで辿り着くと、最初のステージはクリアだ。


 次のステージに行くと突然難易度が上がるんだけど、それがまた面白かったりするのですよ!これも間違いなく伝説の名作ゲームですね。


 しばらく一緒に遊んでいたのだけども、昔遊びまくった俺はさすがにリリカちゃんほどハマれないので、庭に洗濯物を干しに行くお母さんのお手伝いでもしようかと、一緒に庭までついて行った。



 うん。身長が低すぎて、物干し竿まで手が届きません!

 お母さんごめん!ショタはお手伝いすらまともに出来ないのか・・・。


 ・・・ん?



「にょあっ!!」



 何となく隣の家に生えている木を見上げたら、木の枝に座ったおかっぱ頭の女の子がこっちを見ていて、目が合ってビックリした!!


 10歳くらいかな?しかし黒髪って初めて見たかも・・・。


 日本じゃ黒髪が当たり前だったけど、この世界に来てからは、街でも黒髪の人は歩いてなかったと思う。茶髪なら見たけど。(ちなみにクーヤちゃんは金髪です)


 そうこうしてるうちに黒髪の子は木をスルスルと降りて行った。



 ・・・何か変な子だなあ。


「って、こっち来たーーーーー!!」



 黒髪の子は塀を乗り越え、うちの庭へと侵入。

 入って来るなら普通に正面の門から入って来なさいよ!!


「あらタマちゃん、おはよ~」

「おはよー」


 どうやらお母さんとは面識があったらしい。

 まあそりゃそうか、隣の家の子だしな。


「タマちゃん?」

「タマねえ」


 なにィ!?一瞬で呼び方を訂正してきやがった、だと!?

 なんかよくわからん展開だけど、『タマねえ』って呼べばいいのか?


 クンクンクン


 あの~、匂いを嗅ぐのヤメてもらえませんかね?なぜみんなショタの匂いを嗅ぐのでしょうか?毎日お風呂入ってるけど、嗅がれるとすごく気になるのですよ!


「うぇっ!?」


 両脇を掴まれ、タマねえに持ち上げられた。

 世間一般でいう『高い高~い』の体勢だ。


「これは()い」

「あんまり良くない!」


 なんかわからんけど、この人すげー苦手だ!!


「気に入ったから秘密基地に連れて行ってあげよう」

「秘密基地?」



 地面に降ろされたと思ったら、今度は脇腹に抱え込まれた。



 スタタタタタタッ


「のわあああああぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!!」


 ショタを抱えたまま、タマねえがダッシュ。


「あら、お出掛けかしら?夕食までには帰って来るのよ~~~?」


 ちょ、お母さん!言うことはそれだけなんスかーーーー!?

 目の前でショタが連れ去られてるんですけど!!



 そんなわけで、タマねえに抱えられたままショタは街へと飛び出して行った。




 ◇




 タマねえは速度を落とすことなく街を駆け抜けて行く。



 なんつー体力だよ!!

 小っちゃいショタとはいえ、人を抱えたままずっと走れるものなのか!?


 そういや10歳くらいなら職業持ちか。もうこれは間違いなく戦闘職だろ!!

 職業の恩恵ってスゲーな!この女の子が特別凄いのかもしれんけど。



 ・・・・・・ちょっと待て。


 なんか街の風景が殺伐として来てませんかね?

 ココってもしかして、貧民街(スラム)とかそういう場所なのでは・・・。



「着いた」


 ようやくタマねえの脇腹から解放され、大地に降り立つことが出来た。



 目の前には倒壊寸前の建物。

 辺りを見回すと、非常に殺風景で、嫌な予感しかしない。

 さっきまで快晴だったのに、なぜかこの辺だけ空が曇ってるし。


 それにしても秘密基地って、この廃墟なの!?


「入って」


 ここはキミの家ですか!?


「あい!」


 でも良い返事を返してしまうショタであった。



 廃墟の中に入ると、タマねえによって掃除がされているわけでもなく、どこにでもあるような普通の廃墟だった。


 半分崩れている危ない階段を上がって2階に到着。


「・・・・・・・・・・・・」


 屋根も崩れていて、曇り空が見えてるんですけど・・・。

 その天井の穴の下辺りにタマねえが座ったので、なんとなく隣に座る。


「夜になると綺麗な星が見える」

「ほうほうほう。でも空は曇ってますよ?」


 ・・・・・・いや、ちょっと待てや。


「夜までこの廃墟にいるつもりなの!?『夕食までには帰って来るのよ~~~?』ってお母さんに言われたんだけど!!」

「少しくらい遅くなってもヘーキヘーキ」

「平気じゃないよ!!みんな心配するでしょうが!!」



 ―――激しくツッコんだ直後、突然目の前が真っ暗になった。



『なんだ!?』

『え?なに?』


「よーし、捕獲成功だ!」

「お前ら、暴れるんじゃねえぞ?」



 何なんだよ一体!?

 もしかして、背後から袋を被せられたのか!?



「うっし!アジトに帰るぞ」

「この黒髪のガキも連れて行くのか?」

「黄色いのだけ連れて帰ったら、人を呼ばれるかもしれんだろ!」

「そうじゃなくて面倒臭ェんだよ!殺せばいいだろ!」

「馬鹿かお前は。不吉な黒髪を殺して呪われたらどうすんだ!!」

「んなもん信じてんのかよ!」

「じゃあお前が殺れや!!」

「くっ!まあいい、連れて帰ってから考える」

「じゃあ行くぞ!!」



 おーーーーーーい!!なんかめっちゃ物騒な会話が聞こえるんですけど!!

 まあ、とりあえずタマねえは殺されずに済んだってことか・・・。



 そんなこんなで、俺とタマねえは袋を被せられた状態で、奴らのアジトに連れて行かれたのだった。






 ************************************************************




 ―――――話は冒頭に戻る―――――




 俺とタマねえは、奴らのアジト内の牢屋に閉じ込められていた。

 目の前には鉄格子があるので、これで牢屋だということがわかった感じ。



「さて、どうしようか」

「・・・ごめんなさい。こんなことになるなんて」


 タマねえもショックだったらしく、しょんぼりしている。

 5歳児相手に謝罪してるくらいだから、本当に後悔しているのだろう。


「このままだとボク達どうなるの?」

「たぶん外国に売られる。奴隷にされるかもしれない」


 そりゃイカンですよ?

 せっかく狙撃ハウスを脱出したのに、今度は外国で奴隷生活ですか?


「じゃあ売られる前に逃げるしかないね」

「どうやって?」



 家族にはデンジャーショタだと知られるのを避けてたんだけど、ここにいるのはタマねえだけだ。それにこんな状況なのだから、本気を出さざるを得ないでしょう。


 悪者どもに思い知らせてやろう。かわいいショタには棘があるってことをな!!

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ここでショタの本領発揮か!(召喚士)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ