第453話 召喚士に夢と希望を!
社長室の空いたスペースにコカトリスを召喚した。
本当はベイダーさんもライガーさんも仕事前の忙しい時間帯なんだけど、重要なイベントだから仕事をしてる場合ではないのです。
「おい、何だこのデカい鳥は!?」
「新しく手に入れた召喚獣なのか?」
『コケーーーーーーーーーーーーーーー!』
突然けたたましい声で鳴いたので、マッチョ二人がビクッとした。
コカトリスがムーンウォークで後ろ向きに進んでいく。そして最後にクルクル回転してから『ポウ!』とつま先立ちしてポーズを決めた。
「「キモッ!」」
「何なんだこの変な鳥は!!」
「実はですね~、ボクが遠隔操作して、大スターにしか出来ない不思議なダンスをさせていたのです!」
「遠隔操作だと!?」
スタタタタタッ
こっちまで移動させ、大きな翼でマッチョ二人の頭をなでなでした。
「オイ、やめろ!頭をモシャモシャするな!」
「嘘だろ?召喚獣を自分で操作できるなど聞いたことが無いぞ!」
「偶然発見したのですが、召喚士って実は召喚獣と視覚を共有できるのです。それがおバカな召喚獣の場合、意識の共有まで可能なのですよ!」
「意識の共有・・・。なるほど、それで遠隔操作が可能というわけか」
「そしてカロリーゼロはおバカな子だったのです!」
「ふむ。しかし突然意識の共有が出来ると言われてもピンと来ないな・・・」
「クーヤ、あのビデオを見せてやろうぜ?ミルラの塔4階のゾンビバトルだ!」
「あっ、いいかも!アレを見たら絶対ピンと来るよ!」
「ゾンビバトルって何!?」
なるほど~。カロリーゼロを手に入れるということがどういう意味を持つのか、アレを見れば一目瞭然ですね。
社長室の立派な机の上に映写機を置き、左側の壁に向けてから『ミルラの塔4階』ってタイトルが書かれた色付き宝石をセットした。
「何だその魔道具は?」
「ビデオとか言っていたが、クーヤが持ってくる物はいつも意味不明だな」
「また変な物が出てきたわね!」
ガシン! ガシン! ガシン! ガシン!
2階3階4階のビデオは、まずカロリーゼロが階段を上がっていくところからスタートなのです。
「「なんじゃこりゃあああああ!!」」
「カロリーゼロが階段を上がっとるぞ!?」
「またとんでもない物を持って来やがったな。これって誰かが見た光景なのか?」
「え?この魔道具ってカメラだったの!?」
マッチョ二人は初体験ですが、ラン姉ちゃんは一緒に遊んだことがあるから、カメラのことを知っているのだ。
「アタシらは『古代の映写機』と呼んでいるんだが、コイツは風景と音声を記憶できる魔道具だ」
「風景と音声を記憶できるだと!?」
「そんな魔道具が存在したとは・・・」
「あのカロリーゼロは、ボクが遠隔操作してるんだよ~」
「カロリーゼロを手に入れたらどんなことが出来るのか、しっかり見ておけ!」
「ちょっと!上に気持ち悪いのがいるんだけど!!」
「アレが私達の天敵、ゾンビです!」
「腐ってるし、ものすごく臭い最悪な敵」
4階に到達したクーヤちゃんロボがゾンビを殴り飛ばし、画面の左側に消えてしまった。でもドッカンドッカン戦ってる音が聞こえていて、数十体のゾンビが陽動に引っ掛かって画面を横切っていくのが見えた。
そしてお姉ちゃん達が階段を駆け上がり、ゾンビ集団に巨大火の玉を投げつけ、炎上したゾンビの後方から一斉に斬り掛かった。
「うおおおおおおおおおお!お前ら少し見ない間に、よく分からん場所で、こんな凄まじい戦闘をしていたのか!」
「・・・カロリーゼロがいない。そうか!敵を陽動してから消したのだな!?」
「ちょっと!何なのよこの化け物集団!キモすぎるーーーーー!」
ライガーさん、召喚士だけあって見ている場所が違うな~。流石なのです!
本当にとんでもバトルなので、マッチョ二人とつるぺたが大興奮でしたが、全滅させるまで見せる必要が無いので停止し、2階を攻めた時の色付き宝石と入れ替えた。
今度は、2階中央を攻めた時の超激戦シーンを見てもらう。
「クーヤちゃんロボが、タンクの役割をこなしているのがわかりますか?」
「タンクって何だ?」
「なるほど!頑強なカロリーゼロが前に出て囮になることで敵の注意を引きつけ、他の仲間達が楽に戦えるようにしているわけだ!」
「ところで、何でみんな装備が光ってるの?格好良すぎない!?」
ラン姉ちゃんナイス!
今の一言で、お姉ちゃん達がとってもご機嫌になりましたぞ!
「この戦闘ってかなり長いハズだから停止するぞ。見せたかったのは戦闘じゃなく、カロリーゼロの役割の方だ」
レオナねえが停止ボタンを押した。
「これは革命だぞ・・・」
「どういうことだ?」
「カロリーゼロを手に入れる事さえ出来れば、冒険者として活躍できるようになるんだよ!今クーヤがやってみせたのは、偵察、陽動、盾の役割の三つだ!」
「おお、なるほど!」
「しかも重い物を運んだりも出来るんじゃない?」
「その通りだ!馬車の商売くらいしかやれる事が無かった召喚士が、何だって出来るようになるんだ!魔物のスタンピードを思い出せ。街の守護神がどれほど役に立ったと思う?」
「そうか!召喚士全員が街の守護神になれるわけか!」
「凄いじゃない!」
ライガーさんがこんなに興奮している姿は初めて見るのです。
召喚士の可能性が広がったことで、失われていた夢が大復活したんだね♪
「ただし・・・」
レオナねえがルーンメイスを手に取り、ルーン文字を光らせた。
「カロリーゼロを撃破出来たらの話だ!」
みんなの視線がルーン文字に集まった。
「そういえば、その光は何なんだ!?」
「あの古代の武器に、文字なんか彫られていたか?」
「あーーーーー!さっき戦闘中に光ってたヤツ!」
「本当はトップシークレットなんだが、見た目だけですげー武器だってのは明白だし話してもいいか・・・。でもベラベラしゃべらないでくれよ?特にラン!」
「しゃべらないから教えてよ!約束する!」
「この前ライガーのおっちゃんとベイダーのおっちゃんに売った古代の武器の価値が3000万ピリンだとしよう。オークションに出したら5000万超えそうだけどな」
マッチョ二人が頷いた。
「だがこのルーンメイスの価値はそんなレベルじゃねえ。最低でも1億超えだ!」
「「1億!?」」
「理由はもちろん、恐ろしいほどの破壊力を持つ武器だからだ。そして、この武器を作ることが出来る鍛冶屋が一人もいないからだ」
本当は一人いるんですけどね。
でも病人だから、たしかに今は一人もいませんね。
「そんなに強いのか?あのメイス以上に?」
「タマが実験して判明したんだが、ルーン文字を光らせることで、1.5倍~2倍くらい強くなる感じだった。2倍は言い過ぎかもだけど、マジでそれくらい違うんだ」
「うん。魔物を叩けばわかるけど全然感触が違う」
「なるほど・・・。ちょっと貸してみてくれ」
レオナねえが、ライガーさんにルーンメイスを渡した。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
どうやったら光るのか、メイスを調べているもよう。
「スイッチも何も無いぞ!?」
「わはははは!そんな便利なモノはねえ!魔力を流し込むんだ」
「はあ!?魔力を流し込む?・・・魔法使いでもないのにどうやって?」
「アタシが魔法使いに見えるか?」
「バリバリの戦士系だな。知らなかった!そんなことが出来るとは・・・」
―――――10分が経過。
ペカッ
「「光ったーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
「うおおおお!やっと成功したぞ!なるほど、やれば出来るもんだ!」
初めてペカらせた時って、本当に感動するのですよ!
「俺もやってみていいか!?」
「私もやりたい!」
「ん~、そろそろ帰らないとマズいんだが、まあやってみ」
みんな仕事のことなど完全に忘れてそうです。
とりあえずこれで、カロリーゼロ討伐に向けての最低限の準備はできたかな?
あとは鎧と盾を渡して、筋肉神ハイパーライガーに進化させなきゃだね!