第452話 パンダ工房に厨房を借りに行く
レオナねえの魔剣をチャムねえに作ってもらうことになり、明日はベレッタお姉ちゃんの部屋と武器屋さん防具屋さんの奥の部屋をピカピカにすると張り切っていますが、今度はアイリスお姉ちゃんが待ったをかけた。
「レオナだけずるい!私も豪華な槍が欲しいんだけど、お願いしていい?」
「ほほう。どんな槍がいいんスか?」
「ちょっと待ってて!」
アイリスお姉ちゃんが、入り口に立て掛けてあった自分の槍を取ってきた。
「もう慣れたからこれと同じ形状がいいかな?黄金の槍でお願いします!」
「グレイブっスね。オリハルコンを金色にするのはそんなに難しくないから大丈夫っス。ルーン文字の色は?」
「黒で!」
「了解っス!じゃあ、作るのはクレイモアの次ってことで」
「やったーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「黄金の槍かーーーーー!そんなん絶対格好良いだろ!」
「私の黄金の剣とお揃いね♪」
「あ、プリンちゃんも頼まなくていいの?」
そういえば、杖グループ以外でプリンお姉ちゃんだけ武器がそのままなのか。
「私は今使ってるバスタードソードで十分です。鋼の色が好きなので・・・。いえ、鋼の色とも少し違うのですが、あの美しい色がすごく気に入ってるんです♪」
「そうそう!あのバスタードソードってウチの作品なんスよ!」
「え!?そうだったのですか!」
「あれもオリハルコン製なんスけど、白銀に近いっスよね?白っぽいオリハルコンだけを集めて作ったからあの色になったんス!」
「なるほど、狙って作った色だったのですね!素晴らしい色合いだと思います!」
やっぱりチャムねえって、一般的な剣と違うのを作りたい人なんだね。
だから武器屋さんとしては異質に見えてお断りされてたんだ。
「さてと、いい加減メシ食おうぜ!」
「そうでした!急がないと帰るのが遅くなってしまいます」
というわけでハム姫を呼び出して、テーブルの上にお母さんに作ってもらった料理をいっぱい並べてもらった。
最近彼女の出番が無かったので料理当番に任命したのだ。
ちなみにハム姫も一緒に料理を食べます。料理当番はおいしい仕事なのだ。
「魚だ!これは嬉しいかも!」
「おおおおお!久しぶりの魚っス!」
「この前リリカ島でゴブリン達を遊ばせてあげた時に、アイテム召喚でゲットした魚網を貸してあげたら、魚をいっぱい捕まえてくれたのです!」
「朝から魚を捌くのが大変だったけどね!」
「あいつら思ったよりも使えるよな。漁師として育成しようぜ!」
「でも弱い」
「適材適所というやつですね」
焼き魚うめーーーーー!
またリリカ島にゴブリンを放して、いっぱい捕まえてもらおう。
「そうそう!明日パンダ工房に行って、お料理教室の交渉をしなきゃなのです。厨房を貸してもらうの」
「いいかもな!あそこの厨房ならかなり大きいだろ。料理教室で作った料理を従業員に食わせりゃ全員ハッピーだ!」
「いつやるの?うちのお母さんは暇だからいつでも大丈夫だけど」
「あ、そっか!みんなと合わせなきゃならないわね。お母様の予定を聞いておかなくちゃ・・・」
「ウチはいつでも構わんぜ!仕事よりもクリームシチューが最優先だろ」
「いやいや!一応予定くらい聞いてあげなさいよ!」
パンダ工房の都合もあるし、開催は一週間から二週間後ってとこかな?
とまあそんな感じでワイワイと夕食を楽しみ、いつものように大浴場で湯治をしてから家に帰りました。
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さて、今日はまずパンダ工房に行かなきゃだ。
ベレッタお姉ちゃん達には『少し遅くなるかも』と言ってあるんだけど、出来るだけ急いでパンダ工房に向かった。
ちなみにパンダ工房に行くのは、ホニャ毛と悪そうなお兄さんを除いたいつものメンバーです。集団でお邪魔しても迷惑でしょうから。
ガチャッ
「いらっしゃいま・・・、ってクーヤじゃないの」
「あれえ?なんでラン姉ちゃんまた受付してるの?ジャーキー工房は?」
「営業って疲れるじゃない?」
・・・だから何?
「サボってただけじゃないですか!」
「大丈夫よ。ジャーキーの美味しさは絶対なんだから、わざわざ売り歩かなくたって向こうから買いに来るもん。中央公園でジャーキーの叩き売りをした時に大好評でさ、口コミでわーっと広がってくれたのよね~」
おお~、いつの間にか実演販売までやってたのか。
「たしかにジャーキーは最強ですからなあ」
「んで、今日はどうしたのよ?」
「ベイダーさんと交渉しに来たのです」
「へーーー。たぶん社長室にいるんじゃない?」
「おい受付!社長室まで案内しやがれ」
やる気の無いラン姉ちゃんを見て、レオナねえが絡み始めた。
「いや、アンタら常連じゃない!なんでわざわざ私が案内しなきゃならないのよ。勝手に行っていいわよ」
「ところがそうはいかねーんだよな~。その交渉にランも関わってるし」
「ちょ、巻き込まないでよ!私はここでグータラしていたいの!」
「そうか。ランの将来が勝手に決まってしまうかもしれんが、それでいいと言うのなら好きにしてくれたまえ」
「いきなり来て不安になること言わないでよ!あーもう!案内するわよ!」
自分の将来に関わるとか言われて放っておくわけにもいかず、結局ラン姉ちゃんも一緒に社長室に移動することになった。
将来と言っても、お料理教室に参加するってだけなんですけどね~。
トントン ガチャッ
社長室のドアをノックした瞬間開けると、今日はベイダーさんとライガーさんの両方が揃っていた。
「パンダ社長、お久しぶりでございます!」
『ブモ?』
「いやいやいやいや、なぜそっちに話し掛ける!?」
「つーか、ノックした瞬間ドアを開けたら意味が無いだろ!」
流石はマッチョコンビ、キレのいいツッコミなのです!
「今日はベイダーさんに話があって来たのですよ!」
「ん?俺なのか」
「実はですね・・・」
知り合いのマダム達を集めてお料理教室がしたいんだけど、参加人数が多くなりそうなのでパンダ工房の厨房を貸してほしいと交渉した。
従業員達のその日の昼食と夕食は、お料理教室で作った料理を振舞う予定で、間違いなく驚く激うま新料理が登場するから、パンダ工房の料理人とラン姉ちゃんを参加させた方がいいと強く勧めた。
「なんで私まで参加しなきゃならないのよ!」
「参加しないと家族全員不幸になりますよ?」
「脅迫!?変な壺は買わないわよ!」
「ラン姉ちゃんの家族だけクリームシチューが食べられないのですよ?どう考えたって不幸じゃないですか」
「・・・そのクリームシチューって、そんなに美味しい料理なの?」
「マジで激うまだぜ!想像の10倍くらい美味い」
「ぐぬぬぬ、じゃあ参加してもいいか~」
よし、ツンデレの攻略完了。
「メシが美味くなるのなら、むしろ歓迎じゃないか?」
「料理教室とは面白そうだ!厨房の貸し出しを許可しよう」
「「やったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
ワー パチパチパチパチパチパチ!
というわけで、パンダ工房の厨房を借りることが出来ました。
「それとですね、ライガーさんに緊急ミッションが発生しました」
「・・・は?」
ペカチョウを召喚し、机の上にルーンメイスを出してもらった。
「この最強武器で、カロリーゼロをぶっ倒してください!」
その一言を聞き、すべてを理解したお姉ちゃん達がニヤッとした。
「いくら何でもカロリーゼロは無理だろ!!」
「いや、そうでもないぜ?おそらく倒せるだろう」
「しかもカロリーゼロを手に入れたら、あの技が使えるようになるよね!?」
「訓練しなきゃダメだけど、頑張れば出来ると思うのです!」
「ライガーロボだ!」
ルーンメイスさえあればカロリーゼロを倒すのはそう難しくないと思うんだけど、問題は意志の共有ですね~。
強い武器を手に入れたことで、召喚士の常識が変わるかもしれない。
まあ、知らない人にルーン武器を貸すつもりはありませんが!