第451話 レオナねえと黒眼鏡に自慢する
チャキン
鞘から抜いたロングソードの剣身を見たシーラお姉ちゃんの目が大きく開く。
「黄金の剣だ・・・」
「な?死ぬほど格好良いだろ!」
「でも金で作られた剣って折れそうじゃない?」
「いや、金じゃなくて『オリハルコン』とかいう最強レベルの硬さの鉱石で作られてるらしいぞ?」
「へーーーーー!これほど豪華なのに最強の剣だなんて、メイン武器に昇格するに決まってるじゃない!」
「わははははははは!やっぱりそう言うと思ったぜ!」
「でも私って一日しか働いてないけど、貰っちゃっていいの?」
「いいんじゃない?そもそも全員愛用してる武器が違うんだし、格好良いからってロングソードに変えたりしないでしょ」
「そうですね。上手いこと武器がバラけていますので、争奪戦にならないのが私達のいい所です」
「じゃあ貰っちゃうわね♪これはテンション上がるーーーーー!!」
見た目はちょっと成金趣味って感じではありますね。
どこかの金持ちが真似して作ってポッキリ折れて死にそうな予感。
「そしてコイツが、オレの新しいメイン武器だ!」
チャキン
「ぶはッ!真っ赤じゃない!!」
リズお姉ちゃんがルーン文字を光らせた。
いや、光ってはいないか。真っ黒のルーン文字が浮かび上がった。
「うは!ルーン文字が黒くてメチャメチャ凶悪そう・・・」
「魔剣なのです!」
「その呼び方格好良いよな!オレも魔剣って呼ぼう!」
「そういえば黄金の剣のルーン文字って何色なんだろ?」
シーラお姉ちゃんが黄金の剣を光らせると、黒く縁取られた白文字だった。
「意外と普通だった。でもこれが一番良いような気がするわね」
「うん。地が金色だから、変に色が付いてると野暮ったいと思う」
「メイスも光らせてみよう」
タマねえが黒いメイスに魔力を流すと、緑色のルーン文字が浮かび上がった。
「やっぱり呪われてるじゃないですか!」
「だから呪われてないっス!赤と青と緑と紫で悩んだんスけどね~。緑のルーン文字って珍しいから採用してみたんスよ」
いつの間にかチャムねえとベレッタお姉ちゃんもすぐ側に来ていた。
「でも嫌いじゃない。黒に緑もカッコイイ」
「気に入ってくれたみたいで良かったっス!黒に青もオシャレなんスけどね~」
チャムねえセンスあるなあ。これは分かってる人だ!
そして中二病説も濃厚だ。言動は普通だから心の奥底に眠る中二病か。
ボクもそのタイプなので気が合いそうです。
チャキン
ナイフを鞘から抜いて魔力を流し、黒い文字を浮かび上がらせた。
そしてリズお姉ちゃんの隣に並ぶ。
「見て見て!お揃いなのです!」
「魔剣仲間だな!」
「へーーーー!赤いナイフも格好良いわね!」
「時代はヒヒイロカネっスからね!もう何本か作ろうと思ってるっス」
「あ、それならレオナがすごく欲しがりそう!」
「絶対欲しがるだろね~。近い内にクレイモアの注文が入ります!」
「クレイモアっスか。アレもいい武器っスよ~!」
アダマンタイト製の黒いショートソードと、オリハルコン製のレイピアもあったんだけど、使い手がいなかったので、とりあえずその二つはペカチョウ行きとなった。
魔法屋さんに移動し、くつろぎ空間で休憩する。
今日はメッチャ暑かったので、みんなにバニラアイスとチョコレートアイスケーキを御馳走してあげよう!
テーブルの上にチョコレートアイスケーキを置いて切り分けていると、ベレッタお姉ちゃんとチャムねえが興味津々で見ていた。
ただ全員分用意できないので、残りはバニラアイスです。
アイリスお姉ちゃんがバニラアイスをガラスの器に入れていき、それにナナお姉ちゃんが魔法で溶かしてくれたチョコをかけると、美味しいチョコアイスに生まれ変わるのだ!
ベレッタお姉ちゃんとチャムねえが、チョコレートアイスケーキをスプーンですくって口に運んだ。
「冷たくてビックリした!甘くてメチャメチャ美味しい!!」
「何なんスかコレ!?今まで食べた中で一番美味しいんスけど!!」
「チョコの美味しさは他のすべてを凌駕する。ぶっちぎり」
「マジで美味いよなコレ!」
「チョコをかけたバニラアイスもすごく美味しいよ♪」
「こっちも全然負けてないと思います!」
「今日は暑かったし最高だね~♪」
今度フルーツソースを作ってみようかな?
いちごソースをかけたパフェとか、リリカちゃんが大喜びしそう。
みんなでワイワイやっていると、レオナねえと悪そうなお兄さんがエロビデオ屋さんから帰って来た。いつの間にか夕食の時間になってたようです。
「今日も充実した一日だったぜ!」
「しかし、たまに4時間超の大作が紛れ込んでるのがキツイな。それでも内容が良ければ歓迎なのだが、だらだらと1時間も目的地まで歩いているのを見させられた時は宝石を叩き割りたくなった」
「そんなひでえのあったのかよ!タイトルに書いといてくれ」
「もう書いた。『早送り不可。地獄の4時間』ってタイトルだ」
「早送り不可だと!?キングオブクソだな」
ガタン
なぜかリズお姉ちゃんが立ち上がり、こっちに背中を見せている。
「・・・ん?おいリズ、メイン武器が変わってねえか?」
あ~、さりげなく背中の大剣を見せたのか!
この人魔剣が気に入り過ぎて、背負ったままアイスを食べていたのだ。
「気付いたか。まあ、気付くようにわざと見せたんだけどな!」
「わざと見せた?」
「お前がエロビデオを見ている間に、オレは魔剣を手に入れたぜ!」
「マケンって何だ?」
チャキン
リズお姉ちゃんが背中の鞘から大剣を引き抜くと、真っ赤な剣身が姿を現した。
そしてこっちを振り返り、黒いルーン文字を浮かび上がらせる。
「うおおおおおおおおおお!カッケエ!!」
「何だその格好良い大剣は!?真っ赤じゃねえか!!」
「スゲーだろ?『魔剣ラドギアス』だ!」
いつの間にか魔剣に名前付けてるし!
しかもカッコイイし!
「お、おい!そんなカッコイイ剣、どこで見つけたんだよ!?」
「オレ達はな、二日かけて鍛冶屋の大掃除をしてたんだ。その報酬として最強の魔剣をチャムから譲り受けたんだ!」
「「チャム??」」
レオナねえと悪そうなお兄さんがチャムねえを見た。
「そう言えばこの二人って、チャムねえが武器職人だってこと知らないかも?」
「ああ!そういやずっと個室に籠ってたもんな」
「武器職人ってマジ?」
「ルーン武器を作れる鍛冶屋なのか!?」
「ラララ工房7代目のチャムっス。よろしくっス!」
「チャムこそが、オレ達が求めていた伝説の鍛冶屋だったんだ!」
「ミルラの塔で拾い集めた武器を打ち直せるようになったんだよ~」
「うおおおお!スゲーじゃん!」
「本当に凄いな。あの破損した武器が全部復活するのか・・・」
チャキン
ボクとシーラお姉ちゃんとタマねえが、手に入れたばかりの武器を掲げ、魔力を流してルーン文字を浮かび上がらせる。
「「な、なんだと!?」」
「格好良いでしょ!チャムが作る武器は強いだけじゃなく素敵なのよね~♪」
「黄金の剣に、真っ赤なナイフに、黒いメイス・・・」
「しかもルーン文字が格好良すぎる・・・」
そういえば悪そうなお兄さんって、ショートソードを隠し武器として一本所持してたよね?あの武器を見たら欲しがるんじゃない?
ペカチョウに黒いショートソードを出してもらった。
「悪そうなお兄さんって、もしかしてこんな武器が欲しかったりしない?あっ、ナナお姉ちゃん、ルーン文字を光らせてください!」
「はいはーい」
チャキン
ナナお姉ちゃんが黒いショートソードを鞘から抜いて魔力を流すと、紫のルーン文字が浮かび上がった。
「うお!格好良すぎる!こんなの欲しいに決まってるだろ!!ルーン文字の色も恐ろしい程のセンスだが、黒い剣ってのが最高だ!俺は暗器使いだからな」
「へーーーー!面白い職業なんですね」
「なるほど!黒い鞘に入れれば暗器として最適っスね」
「でもこれを渡すには条件があるのです!」
「言え!」
「魔法屋さんの奥にあるベレッタお姉ちゃんの部屋と、武器屋さん防具屋さんの奥の部屋をピカピカにすると貰えます!」
「引き受けよう。4時間徒歩動画を見てる場合じゃねえ!」
絶対欲しがると思った!でも予想以上の食い付きなのです。
「ちょっと待ったーーーーー!アタシもリズみたいな赤い剣が欲しい!!」
「ほら、やっぱりレオナが騒ぎ出した!」
「クレイモアっスよね?残念ながら今は在庫が無いので、病気が治るまで待ってほしいっス」
「おおおおお!アタシの『魔剣アルギオン』を作ってくれるのか!!」
「「すでに名前まで付けてるし!!」」
カッコイイ剣に釣られて、エロコンビが個室から出てきました!
一応掃除は手伝いますけど、この二人メインでバリバリ働いてもらいましょう。
・・・ボクも魔剣に名前付けた方がいい?
前回の問題の答えですが、職業ルーレットの一覧に『ネクロマンサー』が紛れ込んでいるのが恐ろしい罠でした。
第442話でベレッタお姉ちゃんが、『禁呪である死霊魔術に魅入られ、終には人間をもやめてネクロマンサーとなり、ミルラの塔を支配した裏切り者』と言っております。
そして第441話で、『見た目は死神なんだけど・・・』と言っていましたので、おそらくゾルヴィア・ダグニはアンデッド化しています。人間としての理性が残ってるっぽいので、普通のアンデッドとは違いそうですけどね。
ついでに職業ルーレットにはタマねえの職業と同じ『バーサーカー』もちゃっかり入っていまして、それが当たっても狂気で頭がおかしくなり、通り魔になって投獄されていた可能性があります。
怖いですねー恐ろしいですねー。(´・ω・`)ラッキーマンで良かった~。




