第446話 〆はもちろん赤くてデッカイやつ
お風呂でサッパリしたボク達は、魔法屋さんに戻るために神殿の外に出た。
「風が気持ちいーーー♪」
「服まで貸してもらって感謝っス!」
二人は千年前に着ていた一張羅しか持っていないので、お姉ちゃん達から着替えの服を貸してもらったのです。
「明日クリスねえを連れて来て採寸してもらうから、とりあえず明後日には自分の服が手に入るぞ」
「クリスお姉ちゃん休みなの?」
「昨日言ってた」
「ほうほうほう。そっか、ベレッタお姉ちゃんとチャムねえは病気の療養中だから、オルガライドの街には連れて行けないのか・・・」
「そうなんだよね~。街に死の病を持ち込んじゃったらかなりマズいことになると思うから、二人にはしばらくこっちで暮らしてもらわなきゃ」
「千年後の世界がどうなっているのかメチャメチャ気になるけど、病気を感染すわけにはいかないので、しばらくジッとしてます!」
「服屋さんを連れて来てくれるんスね!感謝っス!」
まあボク達は毎日空飛ぶ島に通勤してたんだし、もうしばらく通うくらい全然問題ないですね。ダンジョンアタックしなくてもいいから遊びに来るだけだし。
「えーと・・・、必要なのは水と食料と衣類と寝具といったところでしょうか?」
「そういえば、今夜寝るための布団はどうするよ?」
「あのソファーを貸して下さい。それで十分!」
「そうっスね!」
「ところで二人とも、体調はどう?」
体調のことを聞かれ、二人は己の身体と向き合った。
「・・・かなり良くなったかもしれない!」
「熱が下がってるかも!」
「えええ!?熱があったの?」
ナナお姉ちゃんがチャムねえのおでこに手を当てた。
「うん。たぶん平熱だと思う」
続けてベレッタお姉ちゃんのおでこにも手を当てる。
「二人とも問題ないんじゃないかなあ?」
「まさか、一発でこんなに体調が良くなるなんて・・・」
「ハム水凄すぎないっスか!?本当に女神の湯だったっス!!」
「だろ?」
「一気飲みしたのも効いたんだよ!」
「明日も一気飲み」
「「な、なんですとーーーーーーーーーー!?」」
完治するまで毎日です!明らかに効果があったみたいですしね。
魔法屋さんに到着した。
ベレッタお姉ちゃん達が、今夜のベッドにするためのソファーを確認している。
「うん、十分だね」
「ウチは全然問題ないっス」
しかし、ソファーをぽふぽふしたレオナねえが渋い顔をしている。
「病人が寝るんだから、これで良いとは言えんな。しゃーない、アタシのベッドを貸してやろう。まだ未使用だから気持ち良く眠れるハズだ」
「アタシのベッド?んなもんどこにあるんだ?つーか、この街に泊まり込むつもりだったのか?」
「いや、泊まり込む予定はなかったけど、使うつもりはあった」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
ベッドなんてどこにあるのかと思ったけど、わかったぞ!!
間違いない、エロビデオ屋さんだ!それは管理人室にあるんだ!
この愚姉、アイリスお姉ちゃんとナナお姉ちゃんを連れ込んで、いかがわしいことをしようとしてやがったのか!なんて欲望に忠実な人なんだろう・・・。
「天使様、メメトンゼロのお肉ってまだありますよね?二人の夕食にご馳走してあげませんか?」
あ、もうすぐ夕食の時間か。
「まだまだ大量にあるのです。バッファローのお肉もあるよ?」
「ではダンジョンアタックお疲れ様ということで、焼肉パーティーをしましょう」
「いいかも!」
「「賛成!!」」
ボク達もそろそろ家に帰らなければならないので、まったりしてる時間はありません。そのまま魔法屋さんの外に出て、鉄板を二枚並べて肉を焼き始める。
ジュワー パチパチパチパチ
ベレッタお姉ちゃん達は病人なんだけど、ハム水でかなり元気になって食欲も出たらしく、メメトンゼロのステーキに齧りついた直後、満面の笑みになった。
「「おいしーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
「メメトンゼロの肉を食ったのって初めてなのか?」
「2回くらい食べたことあるけど、今食べたお肉の方が断然美味しいの!」
「このタレがメチャメチャ美味しいっスよね!」
「それはクーヤちゃん秘伝のタレなのです」
「ここだけの話だが、10種類くらいの野菜を煮詰めて塩と香辛料で完璧な味に仕上げてるから、マジで秘伝のタレなんだ。真似しようったって無理だろな」
「ひえーーー!タレを作るのにそこまでやるんだ!?」
「料理人顔負けじゃないっスか!」
我が家のソース作りはガチ仕様なのだ。
「こっちのお肉もすごく美味しい!!」
「ほわああ~、メメトンゼロよりも美味しいかも・・・」
「とある魔物の肉なんだが、秘蔵してるんで未だに名前も知らねえんだよな。アタシらは、クーヤが命名したバッファローって呼んでるけど」
召喚獣にすれば一発で名前がわかるんだけど、別に強いってほどでもないから、ステーキやジャーキーにした方がいいに決まってるのだ。
まあ別にバッファロー呼びで全然問題ないし、放っといていいんじゃないかな?
こうして、ダンジョンアタックお疲れ様パーティーも大盛況のまま終わり、寝る場所に案内するということで、案の定、エロビデオ屋さんに入って行った。
「「なんでエッチな動画屋さんに!?」」
「まさか宿屋がこの店だとは思わなかったよ!!」
「しかもやたらとピッカピカに掃除されてるっスよ!?」
「エロビデオ屋の管理人として責任を果たしたまでだ」
「しかしベッドまで用意しているとは思わなかった。流石だな」
「明日から忙しくなるぜ?」
「分かっている。仕事に戻るのは全てをチェックしてからだ」
レオナねえと悪そうなお兄さんが凛々しい顔で会話してるけど、一日中エロビデオ見まくるだけじゃないですか!全然格好良くないです。
ガチャリ
「うは、こっちの部屋までピカピカ・・・」
「ここが管理人室だが、ベッドは奥の部屋にある」
ガチャリ
「「ベッドでかっ!!」」
ドアが開けっ放しだから声だけ聞こえて来るけど、エロビデオ屋さんにはあまり関わりたくなかったので、見学には行かなかった。
とりあえずこれで病人二人のサポートは十分と判断し、そろそろ帰ろうと店の外に出て、メインストリートまで移動した。
「そうそう!皆さんどうやってこの島まで来たのですか?下は海のハズだし、空でも飛ばないと無理だよね?」
「ウチもメッチャ気になってたっス!!」
その言葉を聞き、お姉ちゃんズがニヤリと笑った。
「アタシらには、クーヤという秘密兵器があるからな!」
「ハムちゃんの大群を見て驚いてたけど、本当に驚くのはこれからだよ!」
「クーヤの実力はあんなもんじゃない」
お姉ちゃん達に耳打ちし、あのセリフを叫んでもらうことにした。
そしてみんなの数歩先に立って、星のロッドを光らせる。
「ああ・・・」
「この日をどんなに待ち続けていたことか!」
「さあ、祈りましょう!」
「今こそ目覚めの時!」
「「いでよ、ドラちゃん!!」」
その直後、みんなの目の前に巨大なドラゴンが出現した。
「「ブホッ!!」」
真っ赤なドラゴンを見上げ、古代人二人が口をあんぐりと開けた。
「ド、ド、ド、ドラゴン!!」
「う、嘘でしょ!?こんなとんでもないモノを召喚獣にしたというの!?」
古代人と言えど、ドラゴンを使役した人を見るのは初めてみたいですね。
ベレッタお姉ちゃん達が驚いている間に、お姉ちゃん達がいつものように手際良くゴンドラを装着した。
「まあドラゴンのことは、明日にでもクーヤが話してくれるさ」
「じゃあまた明日来るねーーーーー!」
「お大事に~♪」
二人に手を振りながら、全員ゴンドラへ乗り込んでいく。
「ちょっと!まったく説明しないで帰るとか酷いっス!!」
「これじゃあ気になって眠れないよーーーーー!!」
当然ながら、苦情の声などガン無視でドラゴンは空へ飛び立った。
明日はクリスお姉ちゃんも驚きまくるだろね~!
すごく楽しみなのです♪