第439話 急転直下。ダンジョンアタック終了?
部屋にゾンビを封印した後、60体もの敵と戦った広い通路の埃を吹き飛ばし、大量の装備品とビデオテープを回収した。
すぐ奥にゾンビがいっぱい入って来た扉があったんだけど、チラッと覗いたら階段の反対側から来る扉と繋がっている感じだったので、一旦階段まで戻って右側の空間をキレイに掃除した。
時計回りで進みたかったので、本来はこっちが正規ルートなのだ。
ミルラの塔は基本的に左右対称になっているので、反対側のゾンビ部屋を掃除してから奥の部屋へ入ると、やはりそこはさっきチラッと覗いた場所だった。
ここにいた敵は最初の戦闘で撃破していたので、安全に掃除することが出来た。
その広い空間での選択肢は三つ。
左の扉、中央の扉、右の扉。どの扉を開けるかだ。
「やっぱ真ん中は最後だろな。今回も時計回りで問題無いだろ」
「左の扉から攻めて右の扉から帰ってくるパターンだよね?」
「そういう作りになっているのか知りませんけど、それだと分かりやすいですね」
「えーと?外周から攻めるってことは、オレとシーラが先頭でいいんだな?」
「そうだな。中央を攻める時にアタシ達とチェンジしよう」
「それでいいわ」
「了解です!」
というわけで左の扉を開けてみたんだけど、1階にもあった長い通路だった。ただ敵の数が倍増しているようなので、戦闘で不覚をとらないよう慎重に進んで行く。
戦闘回数以外は1階の探索とほとんど変わらないので詳細は省きますが、仕事の丁寧さに定評がある街の掃除屋さんの実力は本物で、危なげなく2階の外周をピッカピカにして、2階のスタート地点である階段の上まで戻って来た。
1階に降りたらまた敵がリポップしてたけど、これも問題無く速やかに撃退し、ミルラの塔を脱出した。
「みんなお疲れ様~♪」
「お疲れ!」
「相変わらず最初はゾンビ地獄でしたが、外周はそこまで苦労しませんでしたね」
「だな!問題は中央だ。いきなり激戦になるだろう。覚悟しといてくれ!」
「クーヤちゃんロボを突撃させる?」
「お、それは助かる!でもどうせ足もとが障害物まみれだろうから、まずナナとミルクルーナが埃を吹き飛ばしてから突撃ってことにしよう」
「おっけー!」
「任せて」
「クーヤ本体はタマが守る!」
というわけで、相変わらずお宝で荒稼ぎはしてるけど、これが通常営業なので目新しいことは何もなく、今日もお仕事ご苦労様でしたって感じで探索は終了です。
翌日、リポップしていた敵を倒しながら2階へと進み、三つの扉の真ん中を開けて中央ルートへ突入した。
1階でもそうだったんだけど、なぜかゾンビはリポップしていませんでした。
ビデオテープも落とさないし、アイツだけホント意味わかんないよね~。
扉を開けた瞬間10体以上の敵の姿が見えたけど、お構いなしに風魔法で埃を吹き飛ばし、予定通りクーヤちゃんロボを発進させた。
たぶんお姉ちゃん達だけでも大丈夫だとは思うんだけど、1階中央広場の退路を塞がれる罠のことを考えると、クーヤちゃんロボを囮にした方が安全なのだ。
「フンガーーーーーーーーーー!」
ドガン! バゴン! ズガーーーン!
先頭で孤立しているクーヤちゃんロボは大人気だ。
半分くらい初めて見る敵だけど、噛まれても殴られても引っ掛かれても痛くないので、耐えるだけなら大丈夫なのです。
囮として素晴らしい活躍なんじゃないでしょうか!
アンデッドは倒せないけどパンチ力は凄まじいので、とにかく無限に敵の注意を引き付けられるのだ。タンクってこういう役目なんだね~。
そうこうしている間にお姉ちゃん達がどんどん敵を倒していき、もう少しの辛抱だとか考えていると、フルアーマー骸骨が3体も現れた。
1階ではシーラお姉ちゃんが戦ったので、レオナねえ、プリンお姉ちゃん、リズお姉ちゃんの三人が戦ってみることにしたらしい。
ただボクはずっとモテモテだったので、お姉ちゃん達の活躍をチラ見するくらいしかできなかった。
でもやっぱりフルアーマー骸骨だけは別格で強いらしく、フロアボスみたいな敵なんだろうって意見で一致したようです。
ミルラの塔2階中央の戦闘も無事終わり、お宝を回収しながら進んで行くと、ココには1.5階みたいな通路が無かったけど、1階中央から2階へ上がる階段までのルートと酷似しており、ようやく塔の作りを理解することが出来た。
どうして簡単に上の階に進めるよう作らなかったのかは謎だけど、やっぱり重要な塔だから、敵の侵入を妨害できるように作ったとしか思えませんね。
・・・しかし最上階って何階なんだろな~?
そして次の日、3階の探索はハラハラドキドキのクーヤちゃんロボの階段上りから始まった。
コントみたいになってたまるかと根性で3階まで到達し、2階ほどじゃなかったけど大量のゾンビを引き連れて広い場所に移動。そこで大暴れして敵を一ヶ所に集めて炎の範囲魔法で一網打尽に。
ミルラの塔の攻略法も確立された街の掃除屋さん達は勢いに乗り、敵がさらに増えて難易度が高くなっているにも拘らず3階もピッカピカにした。
―――――そしてミルラの塔4階。ここで異変が起きた。
階段を上がって100体もの敵を撃破し、お掃除しながら奥の部屋に突入すると、真っ黒い大きな塊が宙に浮かんでいたのだ。
「なんだこりゃ??」
「真っ黒!!」
「気持ち悪いわね・・・。近寄っても大丈夫なのかしら?」
「真ん中の扉が塞がれちまってるな」
「アレを何とかしないと中央に進めませんね」
「どうする?」
カン カン カン
アイリスお姉ちゃんが槍の柄でつつくと、甲高い音が鳴り響いた。
「カチカチなんだけど!」
「すごく邪魔。何これ」
「クソが!剣でぶった斬ってやる!」
リズお姉ちゃんが、さっき拾ったばかりの損傷の酷い大剣を構え、ルーン文字を光らせた。
ガギン!!
「痛ってえええええ!!」
「マジかよ!ルーンの剣がぶっ壊れるとは・・・」
「物理攻撃は効かないとか?」
「魔法が効くか試してみようか」
ナナお姉ちゃんとミルクお姉ちゃんが色んな魔法を撃ちまくったけど、結局黒い塊に傷一つつけることが出来なかった。
「こりゃお手上げだな。ダンジョンアタックもここまでかな?」
「道を塞がれてるんじゃどうしようもないよ」
「なんかスッキリしねーけど、こんなんしゃーねえだろ」
「とりあえず掃除だけやって帰るか」
「それが私達の本職だからね!」
「本職じゃねえし!」
というわけで、みんなしぶしぶ最後のお掃除を始めました。
しかしこんな終わり方ってある?最上階を目指すほどの勢いだったのに、一本道を塞がれて終了ですよ。
「何なのさ、この真っ黒!」
『チュウ!』
ハムちゃん達と一緒に黒い塊の前で文句を言ってたら、一瞬何か聞こえたような気がした。
パキッ
「ふぁっ!?」
黒い塊の薄皮というか、殻みたいなのが一枚剥がれ落ちた。
「なんか黒い殻が一枚剥がれた!」
「「なにッ!?」」
全員集合して黒い塊を見つめていたけど、見られていると恥ずかしいのか反応が無くなったので、とりあえず掃除を終わらせた。
パキッ
「あ、また剥がれた!」
「うおっ、マジだ!」
今度は悪そうなお兄さんも目撃したのもあり、みんな近寄ってきた。
「もしかしてこれって呪いなのか?」
「あっ!浄化ハムちゃんがすぐ近くにいるから剥がれたんだ!」
「マイナスイオンハムちゃんです!」
「長いんだよ!」
薄皮一枚しか剥がれ落ちないので時間は掛かりそうだったけど、ようやく希望が見えたので、みんなで談笑しながら、呪いが剥がれていくのを見守った。
あまりにもゆっくりなので、いつ終わるのかと不安を感じていたんだけど、1時間ほど経った時、ようやく最後の一枚が剥がれ落ちた。
パキン!
―――――そして全員、驚きに目を見開いた。
「嘘だろ・・・」
「こ、こんなことって」
―――――ここにいる全員が知ってるモノが入っていたから。
「「ベレッタお姉ちゃんだ!!」」
黒い塊の中に入っていたのは、ビデオレターで見た、死んだハズのベレッタお姉ちゃんだったから。