第431話 宝石屋さんのオーナー
宝石屋さんの大掃除は終わったんだけど、こういう店だから奥の部屋にもお宝が眠っている可能性が高い。
というわけで、カウンターの左奥にあった扉を開けてゾロゾロと入っていく。
「スタッフルームかしら?やっぱりココも埃がすごいわね」
「この部屋の埃は放っておいてもいいんじゃないか?スタッフルームに宝石は置かんだろ」
「普通に考えたらそうなんだけど、疫病で命が助からない状況になったから、錯乱して宝石を床にぶち撒けたりしたかもしれないよ?」
「なるほど・・・。一応埃は回収した方がいいかもしれないわね」
「あ、映写機だ!!」
「お?」
ロコ姉ちゃんが、左の机の上に置いてあった埃をかぶった映写機をゲットした。
「色付き宝石がセットされてるよ!」
「エロビデオ?」
「いや、それはないでしょ。あっ!商品説明の映像かも?」
「なんですって!?それならチェックする必要があるわ!」
「後にしませんか?まずは掃除を終わらせた方が良いと思います」
「だな。拭き掃除は必要ねーけど、埃チェックだけはやらんとな」
「怪しい場所は全部調べるわよ!」
「「オーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
こうして結局スタッフルームの埃も掃除機で吸い込み、棚や机の上、引き出しの中など、怪しい場所はすべて調べた。
続けて奥の扉を開くと通路に出て、二つの小部屋を調べてから一番奥の扉を開けると、そこは店というより生活感のある住居だった。
「もしかして、宝石屋のオーナーが此処で暮らしてたとか?」
「かもしれないわね。お宝の匂いがするわ!」
なるほど・・・。
もしそうだとすると、一番高価な宝石はこの部屋にあるのかも!
スタッフルームも二つの小部屋もハズレだったので、気合を入れ直してオーナーの部屋を探索した。
「隊長!・・・骸骨を発見しました」
「「骸骨!?」」
それを聞いて、タマねえの目が大きく開いた。
「まさか大司教!?」
「そんなわけないです。店のオーナーじゃないかな?」
シーラお姉ちゃんがツカツカと歩いてきて、骸骨の周りを調べ始めた。
いや、そんな場所まで調べるんスか!?
「やっぱりあった!!」
そう叫んだシーラお姉ちゃんが、黒い宝石のついたペンダントを掲げた。
「それ、呪われてるじゃないですか!!」
「黒い宝石ってだけよ!まあ確かに少し気持ち悪いけど!」
でもよく見ると、黒い宝石を囲む装飾部分が非常に豪華な作りで、究極レベルの値打ち物なのかもしれません。呪われてるってだけで。
「もし私が宝石屋のオーナーで、もうすぐ死ぬって状況になった時、一番大切な宝石を枕元に置いて眠りにつくだろな~って思ったの。正解だったみたい!」
「あ、それは分かるかもしれません!きっと私も剣を抱いて死ぬと思います」
「もしかして、大司教もエロビデオ抱いて死んでたの?」
「そんなのどーでもいいです!」
その可能性もちょっとあるけど!
「あ、もう一つ発見したわ!こっちは白い宝石のペンダントね」
「白なら呪われてないかも」
「黒だって呪われてないわよ!たぶん」
何にしても宝石屋さんのオーナーのお宝だから、たぶん売れないレベルの宝石なんでしょうね。観賞用としてシーラお姉ちゃんに愛でられることになりそう。
「壁に金庫が隠されてた!クーヤ、開けて!」
「「な、なんだってーーーーーーーーーー!?」」
壁の中に金庫って、それ絶対脱税してるヤツですやん!
タマねえ、よくそんなとこ調べたな・・・。
「すごくデカいし!!でもこのまま削ると壁が崩れちゃうから、ちょっと前に出せない?」
「両手広げても届かない。リズねえ左側引っ張って」
「任せろ!」
メンバー内でも1位2位を争う怪力コンビの協力により、デカくて重そうな金庫の前面が壁より前に引っ張り出された。
「よくこんなの引っ張り出せたね!じゃああとは凄腕シーフに任せるのです!」
鉄板を何度も召喚して金庫を少しずつ削っていき、とうとう重厚な扉を開けることに成功した。
「「フオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
デカい金庫の中は、金貨や金のインゴットが山積みになっていて、眩いばかりに光り輝いていた。
「金だ・・・。これ全部金だ・・・」
「凄すぎだよ!こんな場所にこれほどの金が眠っていたなんて・・・」
「これって金貨よね?昔は金貨や銀貨で取引してたっていうのは本当だったのね。今は紙幣しか使われてないけど」
「教科書で見た!」
「金貨はともかく、金のインゴットは普通に高値で売れますよ!」
「当時使われてた金貨だって、すごく価値があるんじゃない?」
「大金持ち確定」
タマねえの一言に、全員顔のニヤケが隠せなくなった。
「と、とにかく全部回収するわよ!あとそこの骸骨は隠すのが好きみたいだから、目に見えない場所まで徹底的に調べるのよ!」
「「オーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
とまあ、隠し金庫の発見でテンションが爆上がりし、怪しいペンダントをゲットしたことなど忘れるくらい、お宝が大量に発見されました!
天井裏にも宝石が隠してあったし、とんでもない金の亡者なのです。
宝石屋さんのオーナー、あンた最低のクズだけど、本当にありがとう!
貯め込んであった金銀財宝はボク達が相続したから、安心して成仏してね!
◇
さすがに今日は疲れたので、窓ガラスを嵌め込むのは明日やることにしましたが、朝買ってきたテーブルとソファーをキレイに並べて、宝石屋さんにも素晴らしいくつろぎ空間が誕生しました!
ようやく落ち着いたので、紅茶やコーヒーを飲みながらまったりタイムです。
「引くくらい財宝を発見した件」
「今にして思えば、他の店もちゃんと調べたら金貨や銀貨が眠ってそうだよね?」
「絶対あるだろうけど、もうその程度のお宝じゃ探す気にもならない!」
「気が向いたらって感じかしら?」
「あまりにもお宝をゲットしすぎて、みんな金銭感覚が狂ってしまったのです」
「敗北を知りたい」
ガチャッ
「おお、すげーピカピカになってんじゃん。お疲れ!向こうも終わったぜ」
「いや~疲れたな。エロビデオ屋の大掃除だけでも地獄だったのに、お前らよく4軒も5軒も掃除でき・・・、って何だそりゃ!!」
テーブルに高く積み上げられた金のインゴットを見て、悪そうなお兄さんが口をあんぐりと開けて衝撃を受けている。
ってか、ようやくエロコンビが戻って来たのです。
「嘘だろ!?それって金のインゴットじゃねえのか!?」
「宝石集めしてたんじゃなかったのかよ!」
タタタタタッ
二人が慌てて駆け寄って来て、山積みにされたインゴットに興奮している。
「オイオイオイオイ!これってどう見ても本物だろ!すっげーーーーー!」
「お前らなんて贅沢な・・・。金のインゴットを山積みにして、それを見ながらコーヒータイムだとお!?」
「お帰り~」
「驚いたでしょ!レオナもこっちにいれば楽しかったのにね~」
「くそう!でもしょうがなかったんだよ。エロビデオ管理人として、向こうを完璧に仕上げなければならなかった!」
「うお!ピカピカの金貨まであんのかよ!何があったのか聞かせてくれ!」
「その前に座りなさいな。コーヒー?紅茶?」
「コーヒーで!」
「俺もコーヒーだ。ブラックでいい」
レオナねえと悪そうなお兄さんもようやく大掃除から解放され、コーヒーを飲みながら一休みです。
店の大掃除が終わってからの出来事を、面白おかしく話し始めたのでした。




