第430話 揉み手店長への挑戦状
援軍のホニャ毛三人が宝石屋さんに駆けつけてくれましたが、エロビデオ屋さんの大掃除が終わるほど時間が経っていたので、結局それから1時間ほど掃除をしただけでタイムリミットとなり、大浴場でサッパリしてから帰宅しました。
そして一夜明けたのですが、まっすぐ空飛ぶ島に向かわずに、エロビデオ屋さんと宝石屋さんを快適にするために、まずは窓ガラスと照明の魔道具を購入。
続けて家具屋さんに突撃すると、ボク達の姿を見た店員全員が一斉に『いらっしゃいませ!!』と超お得意様を迎える90度のお辞儀をし、奥にいた1人が店の奥に走って行って、満面の笑みの揉み手店長を連れて来た。
最近異常な頻度で家具を購入しているので少し不安だったのですが、なんと揉み手店長は前回訪れた時以上の高級家具を仕入れていたようで、これには宝石屋さんを美しくしようとしていたシーラお姉ちゃんもニッコリ。この家具屋さんの評価をワンランク上げ、ソファーやテーブルを吟味し始めた。
揉み手店長の揉み揉み速度が2倍になるほどの激闘の果てに、宝石屋さんとエロビデオ屋さんで優雅にくつろげるに違いない、満足のいく家具を大量に購入した。
さらにナナお姉ちゃんとミルクお姉ちゃんも、魔法屋さんを今以上の快適空間にしようと思っていたらしく、家具を追加購入し、高級家具がどんどん消えて店内がスカスカになった頃には、揉み手店長の揉み揉み速度は3倍に達していた。
なぜお客様達がこうも頻繁に家具を大量に購入するのか?
ずっと疑問に思っているに違いない。
しかし揉み手店長も店員達も疑問を口にすることはない。
―――――プロだからだ。
お客様のプライバシーには一切触れない店の対応に感心し、一つ大きな情報を流してあげることにした。
今回の買い物とはまったく関係無いが、西区で、時代の最先端をいく2階建てのアパートと3階建ての会社を建設中であると。
揉み手店長の目が光る。
だが情報を得ると同時に、店員達が緊張感で震えだした。
ガッカリさせるなよ?という家具屋さんへの圧力でもあるのだから。
そしてボク達一行は家具屋さんを出て、空飛ぶ島へと向かった。
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―――――久々の視点変更は、まさかの揉み手店長―――――
「て、店長!どうしましょう!?」
「2階建てのアパートに3階建ての会社って・・・」
「会社が求める家具なんて全然わかんないよ!」
「そもそも何の会社なんだろ?」
くっ、浮かれ気分が一瞬で吹き飛んだぞ・・・。
時代の最先端をいくアパートに会社だと!?
一体どんな建物なんだ・・・。
いつも爆買いしていくお客様からの情報だから、本当にとんでもない建物を造っているのだろう。
・・・ハッ!?その建物はいつ完成するのだ!?
くそっ、失敗した!気が動転していてそこまで頭が回らなかった。
しかし今から追いかけて聞きに行くのもな・・・。
いや待て!確か、西区で建設中と言っていたではないか!
聞けないのなら自分らで調べればいい。
だが急がねばならん。従業員を全員西区に飛ばし、建設中の建物を探させよう。
仕方あるまい。どうせ店内はスカスカだし、今日はもう店仕舞いだ!
「・・・これはニポポ家具店への挑戦状だ」
「「!?」」
「そのアパートと会社が完成するまでに、お客様が満足する素晴らしい家具を揃えておかねばならん!倉庫がパンパンになる程にだ!」
ゴクリ
従業員達が息を飲んだ。
「今日は店仕舞いとする。今から西区へ行き、建設中の建物を探すぞ!」
「「は、はい!!」」
あの人達は冒険者に違いないが、全員がとんでもない値打ち物と思われる装備品を身に着けているし、絶対只者ではない。
そして家具を値切るような小賢しい駆け引きすらしない、最高のお客様なのだ。
この挑戦を真正面から受け止め、絶対の信頼を勝ち取ってみせる!
我がニポポ家具店を遥かな高みへ!
一世一代の大勝負だ!いざ参る!!
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―――――大掃除中のクーヤちゃん視点―――――
宝石屋さんの大掃除も後半戦に突入し、やる気のないお手伝い勢は相変わらず埃チェックをしてるけど、ホニャ毛は店の奥にあるカウンターまでピカピカに拭きまくっていた。
「わああああ~~~~~!こんな美しい宝石初めて見た・・・」
シーラお姉ちゃんが感嘆の溜息を漏らしたので、全員がそっちを見た。
どうやらカウンターの奥にある、大本命の棚を調べてたみたい。
気になったので、シーラお姉ちゃんの方まで歩いて行った。
「わっ!本当にすごい宝石だね!透明な宝石かと思ったら、真ん中らへんが紫とピンク色になっててすごく可愛い!」
「え?なにそれ!見せて見せて!」
「紫とピンク!?」
「「わあああああああああ~~~~~~~~~~!!」」
宝石とか全然知らないけど、たぶんこんなの地球に無いです。
総支配人が知らないくらいだから、今じゃ手に入らないヤツなのかも!
「やっぱこの棚にある宝石って、とんでもない値打ち物ばっかなんじゃねえか?どの宝石屋に持っていっても、誰も値打ちが分からなくて買い叩かれるかもしれん」
「あまりにも凄すぎて売れないってパターンもありそうだよね」
「売りに出すのは、価値が分かってる宝石にした方がいいかも?」
「100万ピリンくらいの宝石が売りやすそうですが、大きさでも価格が変わるから難しいですね~」
「向こうにあった謎のインゴットも、正体が分からんと売れねえよな」
「売れない宝石は観賞用でいいわよね!?」
「なんで嬉しそうなのさ!?売らないとお金持ちになれないよ!」
「まあそうなんだけどね~」
いざとなったらハイドリムドの王妃様に売ればいいって気もしますけど、希少宝石すぎると手放さないだろうから、国の経済が傾く可能性が・・・。
向こうのお金がミミリア王国に流れ過ぎるのも良くないですよね。
こっちでも大金持ちと知り合いになるべきなのだろうか。
でも貴族と関わるのもな~。
まあそんな感じで寄り道しながらも大掃除は継続され、とうとう宝石屋さんがピカピカになりました!
「大掃除終了だーーーーーーーーーー!」
ワー パチパチパチパチパチパチ!
「でも店の奥にある部屋にも凄いお宝が眠っているでしょうから、とりあえず店内がキレイになったってだけよ?」
「エエエエエエエエエエーーーーーーーーーー!」
「まあ宝探しが真の目的なのだから、しょうがないか~」
「やっぱりエロビデオ屋よりも大変だね」
「ん~、まだあの二人は帰って来ないし、向こうは向こうで大変なんじゃ?」
「宝石よりもエロビデオを優先するって、ある意味すごいですね・・・」
アホなのです。
お宝とエロビデオを天秤にかけたら、エロビデオが勝利したのでしょう。
「さてと、明日も掃除するなんて嫌だから、奥の部屋もやってしまいましょうか」
「だな。明日はゆっくり休みてえ」
「休みって今日までじゃ?」
「ずっと大掃除でまったく休んでないから!明日こそ休むよ!」
「空飛ぶ島にいると休みの日も地獄」
「ね~~~~~!」
でも本当に休まないとダンジョンアタックで怪我しそうだから、満場一致で明日は休みってことになるでしょう。
ボクは何をして過ごそう?
そうだ!レミお姉ちゃん家にビデオテープ宝石を持っていかないとね~。
あと古代の映写機も渡して、すごい映写機に改造してもらおう!