第423話 ミルラの塔1階中心部での激戦
「ポムポム憑依!ミウミウ憑依!シルシル憑依!タルタル憑依!」
突然の大ピンチにも動じず、ロコ姉ちゃんがみんなに精霊憑依させた。
囲まれてしまったので、縦列だった陣形からアイリスお姉ちゃんと悪そうなお兄さんが外側に広がり、レオナねえとプリンお姉ちゃんも横に広がって思い切り暴れられる位置につき、魔法使い二人は呪文を唱え始め、タマねえが後ろのアンデッドにメイスで殴りかかった。
ボクとハムちゃん達は動くと邪魔になるので、精霊憑依に集中しているロコ姉ちゃんと一緒に、みんなの中心で小さくなってます。
「クーヤに近寄るな!」
ドガッ!
「クソッ!右奥と左奥からも敵が出て来やがった!」
「プリンアラート!前にいる敵の方が多いがアタシらは後衛を守らなきゃならねえ。魔法使いと連携しながら冷静に戦うぞ!」
「はい!」
ゴギン! グシャッ!
とうとう先頭にいるリズお姉ちゃんとシーラお姉ちゃんも戦闘を開始した。
「ハムちゃん達、結構ピンチだからここから動かないようにね!」
『『チュウ!』』
ボクも召喚獣を呼び出した方がいいのか悩むとこだけど、戦闘の邪魔になるかもしれないし、どうせダメージを与えられないので、動くに動けなくてもどかしい。
うん、やっぱり変な行動はとらないでジッとしていよう。
子供がウロチョロすると大人に迷惑が掛かるもんなのです。
「オラアッッ!!」
ドシャッッ!
「通さないわよ!」
ザシュッ!
まだほとんど戦ってる姿を見たことが無かったんだけど、やっぱりホニャ毛もレオナねえ達と同じくらい強い!
パッと後ろを見た瞬間、ナナお姉ちゃんとミルクお姉ちゃんのファイヤーボールが飛んでいき、魔獣タイプとゾンビが炎上した。
『ウヴォアアアア”ア”アァァァアア”ァ』
『ゴアアアアアアッッッッッ!』
グシャッ!
タマねえのメイスが骨のアンデッドを砕いた。
即座に隣の骨に攻撃を加える。
「うおっ!」
ゴリッ
声のした方を見ると、悪そうなお兄さんが地面に膝をついていた。
「くっ!」
シュバッ ザンッ
「変な物踏んじまった。地面に気を付けろ!埃の下に色々落ちてやがる!」
「がハッ!てめえナメんな!」
「チッ、ゾンビの後ろに隠れてたか!」
うわ、危ない!悪そうなお兄さんが何かを踏んで足を挫いたのかも!
よく見たらアイリスお姉ちゃんも腕から血を流している。
「王妃様、みんなに治癒魔法をかけまくって!魔力は気にしなくていいから!」
『了解ですわ!』
王妃様が天に祈り、仲間達が優しい光に包まれる。
「助かる!」
「ゾンビの死体は消えないから注意しろ!」
「ああっ!あの骸骨、鎧着てる!」
「私が殺るわ!」
「痛ッ!なんか踏んだ」
「埃を飛ばすから視界に注意して!」
ナナお姉ちゃんが埃を吹き飛ばすと、剣やら防具の一部やら、何だかもういっぱい地面に落ちてるのが見えた。
「うわ、剣とかいっぱい落ちてる!みんな踏まないよう気を付けて!」
これも罠みたいなもんじゃん!
「こんな時にお宝いらねーーーーー!」
「くそがッ!まずは埃の除去だったか」
ゴシャッッ!
「後ろクリア!クーヤ、後ろの扉を鉄板で塞いで!」
「逃げ道塞いじゃって大丈夫なの?」
「大丈夫!結構敵の数減ってる!」
「あい!」
タマねえと一緒に後ろの扉の方まで走って行き、鉄板を召喚した。
「また上から落ちて来るかもしれないから、さっきの場所に戻って!」
「あい!」
そういえば上から敵が落ちて来たから、ここは安全ゾーンじゃないのか。
とててててててて
ハムちゃん達の間に挟まって一安心。
周りを見ると、流血したアイリスお姉ちゃんも、障害物を踏んで足を挫いた何人かも、王妃様の治癒魔法で回復したようで、みんな問題なく大暴れしていた。
後ろが片付き、魔法使い二人も前方の敵に攻撃出来るようになったので、殲滅速度が上がってどんどんこっちが優勢になっていく。
1体、また1体と敵をどんどん葬っていくが、シーラお姉ちゃんが鎧の骸骨と激戦を繰り広げていた。
「ハアッ、ハアッ、貴方、1階層に出現していいような敵じゃないでしょ!」
ガギン!
「光ってねえけど、そいつルーン武器を持ってるぞ!」
「盾も鎧もルーン装備ですよ」
「もしかしてフロアボスなのか?」
「このダンジョンって、そういうのまでいるの?」
「いや、知らんけど!」
敵がルーン装備って反則でしょ!光ってはいないようだけど。
とにかくルーン装備の骨以外の敵はすべて倒したみたい。
シーラお姉ちゃんがアイツを倒せば終わりかな?
「ここだ!」
ガギン!
シーラお姉ちゃんの振り上げた剣が、骸骨のヘルムを飛ばした。
ザシュッ! パキン!
そして剝き出しになった頭部を薙ぎ払い、骸骨が仰向けに倒れた。
「ふーーーーーっ!」
「「倒したーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
念の為数分待ってみたけど、骸骨が蘇ることなく寝たままだったので、ようやく敵を殲滅したことを確信した。
「もう十分だろ!アタシ達の勝利だ!!」
「よっしゃああああああああああーーーーーーーーーー!!」
「いや~、キツかったわね。ルーン装備の骸骨って何なのよ!予備の剣が欠けちゃったじゃない!」
「こういう頑強な敵までいるのなら、道中で拾った欠けたルーン武器で戦った方がいいのかもしれないね」
「予備武器でも壊したくはないですもんね」
「でもヘルムを飛ばす作戦は見事だったよ!」
「それな!マジで良い作戦だと思った」
「顔と首の肉が無いからヘルムがゆるゆるってわけか」
「さすがに敵が着ている鎧は脱がせられないからね~」
「生意気にもフルアーマーだしな・・・」
『良い戦闘シーンが撮れましたわよーーーーー!』
声の方を見ると、王妃様は完全に戦場カメラマンモードになっていて、良い角度でシーラお姉ちゃんの戦闘を撮っていたことが判明した。
「にゃははははは!王妃様がね、今の戦闘をバッチリ録画してたみたい!」
「マジか!」
「嘘!?今の私の雄姿が映画になったの!?」
「映画にするなら、戦闘だけじゃなく、ちゃんとした物語にしたいですね~」
「モコねえが好きなアニメみたいに、格好良い音楽も流したい!」
「そういうのも重要だね♪」
こんな凄まじい戦闘シーンが見られる映画とか、絶対ミリオンヒットでしょう!
ただ撮影現場が、冗談抜きの命懸けなんですよね・・・。
「あれ?なんでコイツ消えねーんだ?」
みんなの視線が鎧骸骨に向いた。
「そういやゾンビと一緒のパターンだな」
「あ、お城の骸骨も消えてなかったよね?」
「他は消えてる・・・よな?」
「いつものゾンビだけ残ってる」
ホント意味わかんない現象ですね。
「つーか地面!埃のせいで見えなくて、足挫いちまったじゃねえか」
「それな!!マジで最悪だった」
「あれ?でも足が全然痛くないかも」
「王妃様が癒してくれたのです!」
戦場カメラマンに集中していた王妃様に視線が集まった。
「「王妃様ありがとう!!」」
「みんながね、王妃様ありがとうって言ってるよ!」
『まあ!お役に立てて良かったですわ~♪』
お姉ちゃん達も凄かったけど、王妃様も殊勲賞ですよね♪
もうダンジョンメンバーの一員といって良いでしょう!
さて、戦闘後の宝石拾いか~。
ココってめっちゃ広いから地獄ですぞ・・・。




