第415話 怖すぎ!!
ミルラの塔の入り口にある両開きの扉を開けて中に突入すると、そこは扉が三つある小部屋だった。
ダンジョン化してるといっても人が作った塔なので、玄関みたいな場所があっても不思議ではないんだけど、今までアンデッドとしか遭遇していないので、ドアを開けるのが怖いって言ったレオナねえの気持ちもすごくわかります!
でもリズお姉ちゃんが埃をかぶった宝石を拾い上げたことにより、状況は一変しました。ずっと求めていたアレがたくさん手に入るかもしれないからです!
「そのビデオテープってのは何なんだよ?宝石じゃねえのか?」
「えーと、たぶん宝石で正解なんだけど、ただの宝石じゃないんだよ!」
「音と風景を記憶できる不思議な宝石なの!」
「何だと!?」
「ああ!この前魔法屋で見たヤツか!!」
「それだ!あの魔道具にセットして色々出来るっつーわけよ!」
「へーーーーーーーーーー!!」
そうだった!ココにいるメンバー全員、ベレッタお姉ちゃんのビデオレターを見てるんだよね。説明する手間が省けました。
「ただ透明の宝石が残り少なくてさ、街中を探しまくるしかないって考えてたんだけど、この塔で大量ゲット出来るんじゃないかって喜んでたわけ!」
「音と風景を記憶できる魔道具って凄すぎない?」
「街で革命が起きるぞ!帰ったらアタシらが作った映画を見せてやるよ」
「えいが?」
「不朽の名作。感動で涙が止まらなくなる」
「よく分からないけど面白そうね!」
面白いのは間違いないけど、言うほど感動するかなあ?
タマねえ、ハードル上げすぎーーーーー!
「さてと、そろそろ先に進むか~」
「どの扉を開けてみますか?」
正面は両開きの扉で、右と左は片開きの扉ですね。
ゴールに近いのは正面の両開き扉かな?
「塔を上って行くのを優先するなら正面の扉を開けるのが近道な気がするけど、その宝石を沢山集めたいなら1階層を隅々まで調べた方がいいわね」
「先に進んでも開けてない扉の奥が絶対気になるから、全部開けよう!」
「確かにな・・・。んじゃ左から開けてみるか!」
左の扉の前に移動した。
「開けるぞ!」
ギギギ ドガッ!
普通に開きそうだったので、レオナねえがドアを蹴り開けた。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
あれ?アンデッドはお留守なのかな?
すごく意気込んで来たのに、思ったより何もないというか・・・。
『オヴェアアア”ァァアア”ァアアア”ア』
「にょわあああああーーーーーーーーーー!!」
ゴシャッッッ!
レオナねえが、突然目の前に現れたゾンビをぶった斬った。
しかし一撃で倒すことは出来ず、何度も攻撃を繰り返す。
「クソッ!ざけんなこの野郎!!」
ゴシャ ザンッ グシャッ!
何度目かの攻撃で、ようやくゾンビが地面に倒れて動かなくなった。
「ハアッ、ハアッ、初っ端にゾンビとか勘弁してくれよ・・・」
「最悪ですね・・・」
腐った肉片が散らばり、酷い匂いで鼻が曲がりそうです!!
『ェオア”ア”ア”ア”アアアァァァァァ』
「にょわああああ!また出たーーーーーーーーーー!!」
ブシャアアアッッ!
再びレオナねえがゾンビと戦い始めましたが、扉の前での戦闘なので、レオナねえ以外手出しできません!
ベチャ
しかもその辺に肉片とか飛んで来るので、怖いし気持ち悪いしで泣きそう。
究極のお化け屋敷じゃないですかーーーーー!
ギギギギッ
「「何だ!?」」
『ヴェオアア”ア”ア”アァァァァァァ』
『ボフェアオオオォォアア”ア”アアァアア”』
「後ろ!!」
「何ですって!?」
「ふざけんな!勝手にドア開けんじゃねえ!!」
タタタタタタッ
リズお姉ちゃん、シーラお姉ちゃん、タマねえの三人が迎撃に行った。
「ポムポム憑依!」
ガシュッ! ゴシャッッッ!
いや、ちょっと!ゾンビの方からドア開けて入って来るとか反則でしょ!
もうやだーーーーーーーーーー!
ゾンビを倒すこと30体。
ようやくアンデッドの襲撃が止んだ。
「終わり?」
「おそらくとしか言えん」
「何でゾンビばっかりこんなに出て来るのさ!?」
「この塔最悪だよ・・・」
「臭すぎて吐きそう」
「この腐乱死体どうするよ?」
「一旦外に出ようよ。入り口の辺りから魔法で全部燃やす」
「うん。そうしよう」
魔法使い二人と、護衛のリズお姉ちゃんとシーラお姉ちゃんを残して、とりあえず外に出た。鉄板を地面に突き刺して、ドアは開けっ放しにしてあります。
「外の空気うめーーーーーーーーーー!」
「入り口近くで良かったのかもしれん。焼き払ったゾンビの残骸を外に捨てる事ができる」
「ですね。来る度にあの現場を通るのは心の底から嫌です」
「いきなりゾンビ30体ってバカじゃないの!?」
「せめて色んな種類が出てくればいいのに全部ゾンビ!!」
「っていうか怖すぎなのですよ!!」
「どうやって残骸を外に運び出すの?」
「タルタルにお願いして、ズザザザーって外に押し出すから大丈夫」
「なるほど!」
そうか!ボクも召喚獣でお手伝いくらい出来るじゃんね!アンデッド相手じゃ何も出来ないとか思い込んでたけど、思考を放棄しちゃダメなのです。
数だけは多いくせに弱くて役に立たないゴブリン軍団の出番だぞ!
でもロコお姉ちゃんのアイデアなんだし、今回はお任せしよう。
「服にくっさい腐肉とか汚い血とか付いたし、洗濯して風呂入りてえ・・・」
「私も完全に同意ですが、どうせまた汚れそうじゃないですか?」
「いや、敵がゾンビの集団ばかりってことはあるまい。長い年月を経て入り口に溜まってたんじゃねえかな」
「かもしれないね~。まだお昼前だけど、お風呂入りに行く?」
「絶対今すぐお風呂!」
「ボクもお風呂に賛成なのです!」
ゾンビを燃やし終わったナナお姉ちゃん達が塔から出て来たので、お風呂の話をした所、満場一致で大浴場に行くことが決定しました。
ロコお姉ちゃんの精霊であるタルタルにゾンビの残骸をすべてミルラの塔の外に押し出してもらい、死の森に捨てて一安心。
さらに水魔法で現場をキレイにしてから風魔法で換気し、ゾンビとの激戦は無かったことにした。記憶には残ってますけどね!
―――――そしてやって来ました神殿大浴場。
でも女神の湯を穢すわけにはいかないので、神殿の外に魔法で大きな浴槽を作り、ハム水を満たして沸かしてから、汚れが酷い勢が服や鎧を着たまま飛び込む。
そしてブラシでゴシゴシ洗うと、もう返り血やらなんやらでお湯が邪悪な色に変化し、ゾンビの湯になりました。
「もうゾンビの顔すら見たくねえ!」
「泣きそうです」
「思ってた以上に現実は厳しい」
「服を洗濯しても廃棄処分だなこりゃ・・・。正直ゾンビを甘く見ていた」
「いくら何でも、あの量はねえだろ!」
「腐肉を避けようにも、どうしようもなかったわね・・・」
前衛の人達はゾンビ濡れ不可避で非常に可哀相です。でも30体もの大群を撃破したわけですし、次回から少しはマシになると思いたいですね~。
最初からアンデッド戦と承知の上で戦闘しているので、汚したのはオシャレ装備じゃなく普通の服なのですが、それでも廃棄せざるを得ないのでみんなショックを受けているのです。
いや、それよりもむしろルーン装備が穢れたことに怒ってるのかも。
しかしまあ、ダンジョンアタック初日からコレって酷くない?
スプラッター過ぎて、もう行きたくないのですが!!




