第413話 神殿大浴場
驚かせようと思って神殿の前に戻ってからドラちゃんを呼び出すと、周囲を見て秘密基地の側だってことには気付いたみたいだけど、不思議そうな顔で『帰るの?』と聞いてきたので、『まだ帰らないよ。一旦中に入ろう!』と一緒に神殿に入る。
『ギュア!?』
すると神殿の中が変わっていることに驚き、自分の台座がピカピカになっているのを見て、目がキラキラと輝きだした。
「すごいでしょ!ドラちゃんの秘密基地にね、ボク達が身体を洗ったりする場所を作ったんだよ!今からみんなで身体を洗うからちょっと騒がしくなるけど、ドラちゃんはいつもの場所で休んでていいからね~」
『ギュア!』
せっかくだからと思って呼んでみただけなんだけど、ドラちゃんも別に深く考えることなくピカピカの台座に座って、とても気分が良さそうです。
「じゃあお風呂を沸かしてくるね!ミルクは男湯の方をお願い」
「任せて!」
ドラちゃんを呼び出す前からすでに水玉ハムちゃんが浴槽にハム水を注入してくれていたので、お風呂の準備はスムーズに進んだ。
続けて、洗い場の長い箱に満たしたハム水も魔法使いコンビが火の魔法で沸かして、お風呂の準備が整いました!
「準備オッケー!」
「よっしゃ!入浴タイムだ!!」
タタタタタッ
「まだ脱ぐの早いよ!ガイアさんが敷居の奥に入ってからだよ!」
「お前ら焦りすぎだ!ちょっと待ってろ」
悪そうなお兄さんの姿が敷居の奥に消えたので、ドラゴンロード左の箱が並んでいる場所で全員が服を脱ぎ始めた。
服を脱ぐという不思議な行為をドラちゃんが興味深そうに見ているけど、誰も気にしていないみたいです。まあドラゴンは服なんて脱ぎませんからね~。何をしているのか気になるのも無理ないです。
「行くぞ!突撃だーーーーーーーーーー!」
「おいリズ!浴槽に入る前にかけ湯くらいしろ!さっき暴れて汗かいただろ」
「あ?そんな細かいこと気にすんなよ」
「ダメだよ!みんなで使うんだから、お湯を汚さないように気を使うのは最低限のマナーです!」
「わかったわかった!体にお湯をかけてから入りゃいいんだな?」
「お風呂のルールとか気にしたこと無いタイプとみた」
「本当は先に体を洗ってから湯船に浸かった方がいいんだけど、そこまでうるさいと窮屈だから、かけ湯だけすればあとは自由でいいよね?」
「泥だらけじゃなければ、それでいいと思うわよ」
「じゃあルールはかけ湯だけな!行くぞーーーーー!」
ワーーーーーーーーーーーーーーー!
お姉ちゃんズが突撃して行ったので、タマねえと一緒にゆっくり洗い場に向かってかけ湯をし、丸洗い師の余裕を見せながら大きな浴槽に入った。
「おお!階段みたいになっているのです!」
「クーヤちゃんのために、そこだけ段差をつけたんだよ♪」
「ナナお姉ちゃんありがとーーーーー!」
入る時はいいんだけど、ボクの場合浴槽から出る時が大変なんだよね~。
そこまで考えてくれていたとは、流石はナナお姉ちゃんなのです!
ただ、気を良くした彼女に抱っこされてしまいました。
お風呂での抱っこは色々と問題があるのですが、もう慣れました。
「気持ちいいねー!」
「神殿でお風呂とか、最高すぎるだろ!」
「こんな贅沢、此処でしか許されないからね~」
「しかもただのお風呂じゃなくて、お肌がツヤツヤになる魔法の湯♪」
「女神の湯な!」
「貴女が勝手に名付けたのでしょうけど、素晴らしい名称だと思うわ」
「私は女神の湯に救われましたので、もう依存症になっているかもしれません」
「怪我してないけど分かる!普通のお風呂だと全然満足できないの!」
「1週間に1回は女神の湯に入りたいよね~♪」
「しかも飲めば健康になる」
「「それは無理!」」
神殿大浴場のオープン日なので、すごい盛り上がりですね!
悪そうなお兄さんも男湯で優雅にしてるんだろな~。
湯船から出て、みんなで洗い場に移動しました。
シャワーなんてモノは存在しないので、みんな洗い場の中央にあるお湯がたっぷり入った長い箱を囲むように座ってるんだけど、この箱をなんと呼べばいいのか聞いてみたところ、『知らん!』と一蹴されました。
とにかく風呂桶でこのお湯を掬って頭や体を洗うそうです。
泡とか入れちゃわないように注意しなきゃ!
タマねえと体の洗いっこをしていると、シーラお姉ちゃんにジーっと見られていることに気付きました。
「クーヤちゃん、次、私も洗って♪」
「・・・え?もしかして丸洗いを希望ですか?」
ざわっ
「お、おいシーラ、正気か?こんな大勢いる前で醜態を晒すのはヤバイだろ!」
「いや、考え直した方がいいって!」
「勇気あるなあ・・・」
「公開お漏らしは地獄だぞ?」
それを聞いて、シーラお姉ちゃんが慌てた。
「違う違う!普通に洗って欲しいと思っただけよ!丸洗いじゃなくて!」
「あ~、ただのスキンシップか!驚かせやがって」
「露出に目覚めたのかと・・・」
「やめて、違うから!勘違いしないでよね!」
なんかツンデレみたいなセリフになってますよ?
「しょうがないですな~。タマねえが終わってからね」
「やったーーーーー!クーヤちゃん愛してる~♪」
「じゃあわたしもタマちゃんに洗ってもらお!」
「みんなで洗いっこだーーーーー!」
というわけで、みんなでワシャワシャと洗いっこしました。
こういうのも楽しいですね~♪
そしてピカピカになった後、再び湯船の中に戻って来ました。
ドラちゃんが水を飲むためにドラゴンロードを歩いて行き、滝の水をガブガブしているのを見てほっこり。
「そうだ!少し暑くなってきたし、あの滝に打たれてみるぜ!」
「なるほど、面白いかもな!」
ドラちゃんが台座に戻ったので、入れ替わりにリズお姉ちゃんが滝に入った。
こちらを向いて、頭から滝に打たれている。
「うわっはっはっはっはっは!修行みたいでおもしれーーーーー!」
夏なので、冷たい水が気持ち良さそうですな!
ボクも修行してくるかな?
『ぶはッッ!おいコラ、こっちから丸見えだぞ!!』
「・・・あ」
そうか!あの位置だと男湯から丸見えじゃないですか!
っていうか、悪そうなお兄さんのことスッカリ忘れてた。
「リズ大変だ!覗き魔が出たぞ!」
『覗いてねえよ!そっちから現れたんじゃねえか!!』
「っていうか、呆然としてないで隠しなさいよ!サービスが過ぎるわよ!」
「早く隠せ!ガイアが興奮してとんでもない事になってるじゃねえか!」
『いや、マッチョ過ぎて違うんだよな~・・・』
「何だとこの野郎!オレの筋肉に不満だというのか!!」
リズお姉ちゃんがボディービルダーのようなポーズを決め始めた。
『お前はお前で少しは恥ずかしがれや!後ろ向いてるからとっとと帰れ!』
リズお姉ちゃんが滝に打たれに行ったせいでメチャクチャじゃないですか!
ラッキースケベを体験した悪そうなお兄さんの方が逆にキレてますけどね。
ん~、でも他のお姉ちゃんと違って裸を見られたダメージをほとんど受けてないみたいだし、リズお姉ちゃんでよかったのかもしれない。
まあ、放っておこう。




