第411話 ハムちゃん隊の弱点
ハム水の凄さを全員に知ってもらうことが出来たので、その後はくつろぎ空間で談笑したり武器の観賞をするくらいで、少し早めに街へ戻ることにした。
ドラちゃんに乗って未開の地まで移動したけど解散はせず、ゾロゾロと雑貨屋さんに行って大きな樽をいっぱい購入。
近くの公園にブルーシートを敷き、ハム水を満タンにしてから、ホニャ毛のハムちゃん達に一つずつ持たせた。
「明日からこれで顔を洗えばいいのね!」
「部屋が狭くなるけど、何が何でも洗面所に置いた方がいいよ。毎回ハムちゃんに出し入れしてもらうのが面倒になるから」
「そうだな~、しかし家族にすげー文句言われそうだぞ?」
「家族のみんなにも使わせてやりゃいい」
「いいのか?秘密なんだろ?」
「高いお金を払って美容液を手に入れたって言えばいいよ。『無理を言って特別に手に入れたヤツだから絶対に秘密だ』って。秘密を守ることを条件に家族に使わせてあげるの」
「もし秘密を漏らしたら二度と売ってもらえなくなるって言えば、たぶん誰にもしゃべらないでしょ?効果が目に見えてすごいんだから絶対手放せなくなるし」
「いいね!その作戦でいこう!」
「口が酸っぱくなるほど徹底して注意を呼び掛けて下さい!」
「もし情報が漏れたら本当に使用禁止にして」
「家族には徹底させるわ。貴族が絡んでると匂わせるのも一つの手かしらね」
「なるほど・・・」
貴族絡みとか言えば絶対しゃべらないと思うけど、変に脅しちゃうと危険物みたいに思われちゃいそうだから、どう誤魔化すか結構難しいですよね~。
「いきなりハムちゃんを連れて帰って大丈夫かなあ?」
「大丈夫も何も押し通すのみだろ!」
「こんなに可愛いんだから、みんなデレデレになるよ!」
「荷物持ちが出来て便利なのだから、嫌がる理由も無いわよね~?」
パンダちゃんを飼う時、ボクも駄々を捏ねた記憶がありますぞ!
「あ、一つ重要なことを伝え忘れてました!実はハムちゃんの頬袋の中って時間の流れがとてもゆっくりで、生肉を持たせたりしても2ヶ月くらい腐りません」
「「な、なんだってーーーーーーーーーーーーーーー!?」」
「そうそう!アツアツのお茶を収納してもらうと、2日後でもアツアツのままなんだよ!しかもハムちゃんが横になって寝ていてもなぜか零れないの」
「何よそれ!?まったく意味が分からないわね!」
「クーヤと同じく、謎生物だとしか言えん」
「そんなすごい秘密があるなんてビックリだし!だったらもう、何が何でも家族に認めさせるしかないよね!」
「帰ったら試すしかねえな!」
これを聞いてもペット禁止とか言い張る人がいたら、頭が固くて話が通じない、ボクが一番苦手なタイプですね。
動物アレルギーとかそういうケースもありますが、ハムちゃんはボクの召喚獣なのでとても清潔ですし、老化して毛が抜けることも無いのですよ。
まあ無理矢理毛を引っ張ったりすればそりゃあ抜けますけど、キレイな毛でアレルギー反応は出ないんじゃないかな?詳しいことはわかりませんが。
とにかく今日の用事はすべて終了したので、その場で解散となりました。
明日、ホニャ毛の話を聞くのが楽しみです!
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一夜明け、今日も元気に空飛ぶ島までやって来ました!
ホニャ毛は家に帰ってから色々と大変だったみたいで、ゴンドラの中でずっとその話をしていました。
ペットを飼っても大丈夫なのか心配していたミルクお姉ちゃんでしたが、まず、ハムちゃんの大きさに家族全員が衝撃を受けて固まったそうです。
当然ながら、『こんな大きいのウチじゃ無理よ!』というセオリー通りの流れに突入したみたいですが、モフらせることで反対勢力を一人ずつ撃沈し、すぐに『我が家のアイドル』となったみたいです。
まあ他の人達もほとんど同じような流れで家族全員を撃破したらしい。
決め手はやはりハムちゃんの性能でした。大きなタンスなんかを収納出来るだけじゃなく、部屋から部屋へと簡単に運んでみせ、収納した食べ物がずっと腐らないことを証明するため、アツアツのお茶作戦を実行。
2時間後のお茶で何人か舌を火傷し、『ハムちゃん凄すぎるわ!』と有能さが完全に認められたようです。
そして問題のハム水ですが、全員、作戦通りに話を進めたみたい。
まずは、美肌に興味津々な女性陣からの絶大な支持を受け、究極の美容液だと大騒ぎになったらしい。
もちろん秘密厳守を誓わせましたが、口が軽い要注意人物には、貴族が絡んでるから本当に危険なんだと釘を刺しておいたようです。
その貴族は誰なんだよって?
そりゃあなた、ハイドリムドの王妃様のことですよ!
まあ、ハムちゃんが出した水だという真実は伏せてあるし、たとえ情報が漏れても『すごい美容液』止まりなので、たぶん大丈夫じゃないかな?
というわけでハムちゃん騒動は一件落着~!ワーパチパチパチパチ!
・・・と思ったのですが、実はまだ終わっていませんでした!!
予定通り、ナナお姉ちゃんとアイリスお姉ちゃんとロコ姉ちゃんの三人は、大浴場を作るために神殿に向かい、それ以外のメンバーは死の森へと向かう。
今日は最初からマイナスイオンハムちゃんを起動し、みんな元気なまま前回ボコボコに破壊した死の森に到着。
「もうすでにキモい森がグチャグチャになってるんだが?」
「クーヤが懲らしめた」
「エエエエエ!?環境破壊しちゃダメだよ!」
「いや、こんなキモい森なんかぶっ壊した方がいいだろ!」
「なるほど・・・。ぶっ壊した方が森を突破するより手っ取り早いってわけか」
「あ、もしかしてハムちゃんでやったの!?」
「うん!でもハムちゃんが爆増したので、またここから始めようと思います!」
死の森に向かって、ハムちゃんをズラッと横並びにした。
「圧巻だな!」
「道は広いに越したことはない」
「あの魔法で一斉攻撃?絶対ヤバすぎるーーーーー!」
さて、いきますか!
「キモい森を、ぶっ壊ーーーーーす!」
『チュウーーーーーーーーーー!』
あの一風変わった政治家みたいなセリフを言うと、ペカチョウが『発射ーーー!』と攻撃命令を出した。
ボガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!
ギョシャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリッッ!!
ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!
ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!
ボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボ!
ゴッシャアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーー!
ズガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!
100体を超えるハムちゃん軍団から放たれた超絶魔法により、視界がいつも以上の天変地異に包まれた。
「はいストーーーーーップ!」
魔法が止むと、グッチャグチャの悲惨な森がつるっパゲになっていた。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「でも地面を抉らないように気を付けたから、切り株がいっぱい残ってますね」
「えーと、木はどこいったの?」
「風魔法で吹き飛ばされて、奥の方に行ったんじゃねえか?」
「塔を吹き飛ばしたら、ダンジョンアタックできなくなっちゃう!!」
「なるほど・・・。今は問題ありませんが、ミルラの塔の近くまで進んだら、吹き飛ばす方向を考えた方がいいかもしれませんね」
「あ、死霊!」
「なにッ!?」
向こうの方に死霊が1体ふわふわ浮いていた。
「ペカチョウ、あいつに電撃だーーーーー!」
『チュウ!』
バリバリバリバリッ!
「あれ?効いてない!?」
「クーヤちゃん、アンデッドに雷魔法はあまり効かないよ!火魔法じゃないと!」
「あ、そうだった!えーと、赤ハムちゃん!あいつ燃やして!」
『チュウ!』
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
「効いてないんですけどーーーーー!!」
「あれ?おかしいな~。火魔法は効くハズだよ?」
そう言ったミルクお姉ちゃんが火の玉をぶつけると、簡単に死霊が消滅した。
「なんで!?ミルクお姉ちゃんだけずるい!!」
「いや、ずるいって言われても・・・」
「どういう事だ?」
そういえばウチの赤ハムちゃんって火炎放射器みたいな魔法を使ってるし、もしかすると地球出身のボクの影響を受けて物理攻撃風に変化しちゃってません!?
なんてこった!これじゃアンデッド倒せないじゃん!!