第397話 死の森まで5名様ご案内
明日はミルラの塔の近くまで行くぞ!オーーー!ってやったみんなでしたが、まだ外は明るくて別に今すぐ家に帰らなくてもいい時間だったので、そのままくつろぎ空間のソファーに座ってワイワイおしゃべりしています。
「ロコ姉ちゃんさ、ロッド二本で良かったの?」
両手にロッドを持って光らせて遊んでいたロコ姉ちゃんがこっちを見た。
「どっちか一本だけ選ぶなんて無理だもん!同時優勝だよ!」
「わかるかも!黄色いルーン文字も水色のルーン文字も捨て難いよね~。だったら両方ともゲットして、『今日はこっちにしよう!』ってやるわけですね?」
「うん!両手に持ってる時もあるかも!」
「気持ちは分かるけど、杖を二本持ったって魔法の威力が上がったりなんてしないよね?」
「意味ないよ。まあでも本人が楽しんでるだけなんだから、いいんじゃない?」
たしかにロッド二本作戦もありかも。
でもボクの場合重さで選んだから、結局星のロッドだけ使ってそう。
「そういやリズもシーラも、ウチらと同じヘルムにしたんだな」
「ああ、いくつか試着してみたけど、このヘルムが一番軽くて頑強な作りだった。たぶん最新型なんじゃねえかな?いや、大昔の防具なんだけどさ・・・」
「おそらくそれで正解ね。フィット感がダントツで良いのよね~!それに洗練された美しさというのかしら?これを知った後で普通のヘルムなんか選べないわ」
「ですよね!私も色々装着してみましたが、これが一番良いと思いました。それに一つ一つ材質も色も違いますので、鎧に合わせて選べるようになっていたのでは?」
「あ~、そういうことだったのか!」
「なるほど!この白い鎧に合うヘルムがあるのか不安だっんだけど、すぐに見つかったのは用意されていたからだったのね!」
へーーーーー!だからこのヘルムばっか大量に置いてあったのか。
カッコイイし軽いし頑強だし、隣の防具屋さんのヒット商品だね~!
「しかし、ゆっくり休める空間を作っておくなんてやるじゃねえか!このソファーもテーブルも新品だよな?」
「もちろん新品だ。あの家具屋、超ボロ儲けして満面の笑みだったぞ!」
「あっ!もしかしてゆっくり武器を観賞するために?」
「正解です!武器屋なら一日中見ていられますし」
「「わかる!」」
いや、ボクには理解不能です。この前は2時間くらいで限界でした。
脳筋勢はちょっと頭おかしいです。
「あ、そういやホニャ毛に少し悪いことしたな。オシャレ装備に金を使わせちまっただろ?まさか、こんなことになるとは思わなくてさ~」
「ん?ああ、そんな小せぇこと気にすんな!見ろよこの姿。逆にボロ儲けだ!」
「全然気にしてないわ。今は嬉しさしか無いもの!」
「でもお金はあるに越したことはありません。そうだ!ホニャ毛に一本ずつ普通の武器を渡してもいいのでは?それを売れば結構なお金になりますよ」
なるほど!ボク達もそれで荒稼ぎしたわけだし、ホニャ毛や悪そうなお兄さんにも一本ずつ渡しとくべきだよね。
「そうするか!よし、ホニャ毛とガイア。この店にはルーン武器以外の普通の武器も大量にあるだろ?一人一本ずつ持ってっていいから、売るなり何なり好きなように使っていいぞ!最低でも1000万以上の価値がある武器達だ!」
「「な、なんだってーーーーーーーーーー!?」」
「あ、それと普通のナイフも一本ずつやる。これは解体用として所持してくれ」
「そんな大盤振る舞いしていいのか?」
「実はアタシらも解体用のナイフを所持してるし、通常武器も何本か売っちまってるんだ。お友達価格の1000万でな。でも2000万でも余裕で売れる感じだったぜ?」
「さっき普通の剣も手に取ってみたけど、確かに街で売ってる剣よりも遥かに凄い剣だったわね。でも武器一本で2000万か~、本当に宝の山ね!」
「古代の武器か。普通の武器と言えど国宝クラスだな・・・」
「やったーーーーー!杖でもいい?」
「いいよ~!杖でも槍でも弓でも、ルーン武器以外なら好きなの持ってって!」
ワーーーーーーーーーー!
ホニャ毛が大騒ぎしながらナイフの棚のところに走っていった。
悪そうなお兄さんはあの輪の中に入るのが嫌だったのか、剣を見にいった。
これだけ大量にあるのに一本だけってケチ臭く感じるかもだけど、『古代の武器は世界にもうこれしかない』って考えると貴重品なのですよ。
とりあえず今は放出を抑えて、お姉ちゃん達の観賞用武器ってことでいいんじゃないでしょうか?
もうすでにみんなルーンの指輪をゲットしているので、とりあえずこれで分配は完了ですね。残すはダンジョンアタックだ!
ドラゴンを降りてから、悪そうなお兄さんのグルミーダ手袋を回収し、今日は解散ってことになった。
ちなみにホニャ毛は元々着ていた鎧や武器をお持ち帰りしなければならないので、ちょっと大変そうでした。
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ゴシャッッッ!!
リズお姉ちゃんの強烈な一撃をくらい、巨大な魔物が動かなくなった。
その向こうからシーラお姉ちゃんが、倒した魔物を引き摺って歩いて来る。
「ルーン武器ヤバ過ぎだろ!こんなデケエ魔物が一撃だぞ!?」
「私も驚いたわ!今までの苦労は一体何だったのかしら?」
「二人とも凄すぎだよ!」
「魔法で援護するまでもなかったね~」
「俺の出番が無かったぞ!次の獲物は譲ってくれ」
「わかってるって!」
安全になったので、ホニャ毛が倒した魔物をハムちゃんに回収してもらった。
シーラお姉ちゃんも、わざわざこっちまで運んで来なくてもよかったのに。
まあハムちゃんのいない生活だったわけだし、言わなきゃわかんないですよね。
「そろそろマイナスイオンハムちゃん出す?」
「いや、このまま行けるとこまで行こう。ミルラの塔の本当のヤバさを知ってもらう必要がある。耐え切れなくなったら呼び出してくれ」
「あい!」
道中で悪そうなお兄さんとミルクお姉ちゃんも魔物を撃破し、みんなドヤ顔の快進撃を続けていましたが、とある地点で空気が変わった。
「どうも変な感じだな・・・」
「音が消えた?」
「んーーーーー、なんだろ?」
「嫌な感じ」
「気を付けろ。何かおかしい」
しばらく進むと、明らかにホニャ毛の様子がおかしくなってきた。
「オ、オイ!何なんだよコレ!?」
「あ、足が、震えて・・・」
「わか、わかんない、けど、怖い!」
「これって、の、呪い、なの!?」
「くッ・・・」
そしてとうとう一歩も進めなくなった。
前回と少しズレていたみたいで、ハムちゃんが破壊した所はもっと左側っぽい。
「む、無理、だ。もう、す、進めねえ」
「絶対、呪、いよ、こ、これ!」
「に、逃げ、ていい?」
「ハアッ、ハ、ハッ」
悪そうなお兄さんが振り返った。
「お、お前、ら、知ってた、な?」
もちろん知ってましたとも!
「お、おうよ!」
「クーヤ、ちゃ、お願い!」
とててててててっと一番前まで走っていき、くるっと振り向いた。
ボクにはあまり呪いが効かないので、星のロッドを掲げてクルクル回ってみる。
ルーン文字を光らせて謎のポーズを決めたりしてると、みんなに睨まれた。
「みなさんお待ちかねの~、マイナスイオンハムちゃん召喚!」
そして出現した白ハムちゃんに、『空気をキレイにしてください!』と頼んだ。
そのまま3分ほど待つと、ようやくみんなの顔に生気が戻ってきた。
カップラーメンみたいなお姉ちゃん達なのです。
復活したホニャ毛と悪そうなお兄さんが、ボクを指差して叫んだ。
「「なんでクーヤだけ元気なんだよ!?」」
そんなの知らないです!