第390話 ダンジョン目指して突撃!
間接照明の実験は無事成功に終わり、ボク達の豪邸アパートだけじゃなく、映画制作会社にも設置されることになりました!
タモさんが出した見積書を見ると8000万ピリンを超えるアホみたいな金額だったんだけど、資金が2億を超えたボク達が狼狽えるハズもなく、『思ったより安かったな。ハッハッハ!』とその場でGOサインを出した。
お風呂は1階も2階も大浴場だし、2階の全部屋にキッチンとトイレの水道管を設置してもらう必要があったし、建物の強度も内装も躊躇なく最高級のモノを選択したので、そこまで金額が膨れ上がってしまったらしい。
少し前なら唸ってたかもしれないけど、今は全然効かないのです!
家具も建設会社の方で揃えてくれるって話だったんだけど、設置する時に大変そうなベッドだけ注文した。カーテン・テーブル・ソファーなんかは完成した家を見てからの方がいいと思ったので、後から買いに行かなきゃですね~。
そしてようやくみんなの家のトイレ工事が終了し、ナナお姉ちゃんがお仕事から解放されました!
モコねえの家族なんかは半信半疑で、変なトイレになるのを嫌がってたみたいなんだけど、工事が終わっていざ使用してみると、あまりの快適さに『疑ってすみませんでした!』と並んで土下座したらしいです。メッチャ笑える!
もちろん他のお姉ちゃんの家族達も最新型のトイレに感動し、工事が終わった当日は便器くんの取り合いになってたそうだ。
絶対自慢すると思うので、3階建ての便器屋さんがオープンした瞬間に注文が殺到するんじゃないかな?ナナお姉ちゃんはそんなに貸せないから、ティアナ姉ちゃんがフル回転することになるでしょう。
ただどう考えても人手が足りないから、すぐにでも社員を雇うことになるハズ。
でも便器屋さんに就職したい魔法使いなんているのかなあ?
あとグルミーダの肘まで手袋なんですが、長い間愛用していたせいかみんな魔力操作が上手くなってたみたいで、普段は手の平から魔力を流して武器のルーン文字だけを光らせ、攻撃を受ける時は手袋全体を光らせて完全防御するという瞬時の切り替えを、少し練習しただけで出来るようにまりました!
防具も常時光らせているわけだから、冷静に考えたらみんなすごく器用なことやってるよね~。
一番器用なのはプリンお姉ちゃんかもしれない。フル装備の時は全身に魔力を流し、ドレスアーマーの時は武器と防具だけを光らせ肘まで手袋は光らせないという、頭がおかしくなりそうなことを平然とやってのける。
感覚派のなせる業なのかな?
こういうのは考え過ぎると逆にダメなのかもしれない。
ボクも服と手袋を光らせずに、星のロッドとハゲだけ光らせるとか出来ますし!
ナナお姉ちゃんもずっとトイレ工事をしてたのに、全然問題無いみたいですね。
というわけで、トイレ工事も建築依頼もしっかり終わらせ、新装備の訓練もバッチリってことで、ダンジョンアタックの日が来ました!
それっぽい塔は古代遺跡から見えていたので、探すまでもないです。
クーヤちゃん一行は『ミルラの塔』に向かって真っすぐ突き進む。
『ゴアアアアアッッッ!』
「おらあ!」
ズシャッッ!
「ハアアッッ!」
ザンッ! ドシュッ!
レオナねえのクレイモアが3メートル近くある狂暴な魔物を斬り裂き、プリンお姉ちゃんのバスタードソードがキメラのような気持ち悪い魔物を貫いた。
「うわ、二人とも凄いね!」
「アイリスお姉ちゃんも、その魔物を簡単に倒したじゃないですか!」
「ナナやタマちゃんの戦闘は何度か見てたんだけどさ、実際に古代の武器で戦ってみると感動しちゃうね!攻撃力が天地の差だよ」
「今までの苦労は何だったの?って思うよね~♪」
「ルーン武器最強!」
倒した魔物をハムちゃんで回収した二人が戻って来た。
「この武器ヤバすぎだろ!」
「タマちゃんの気持ちがわかりました!これは爽快ですね~」
「敗北を知りたい」
いやタマねえ、敗北を知ったら死にますぞ!
「でもダンジョンではこうはいかないから、みんな注意しろよ?」
「そんなに危険なのですか!?」
「えーとねえ、もちろんダンジョンの魔物が強いってのもあるんだけど、単純にタフなんだよ」
「全然倒れてくれないから、地上の魔物と同じような感覚でいると自分が弱くなったような気がして落ち込むよね~」
「地上の魔物と同じのがいたりするの?」
「知ってる魔物も出るぞ。それでダンジョンに出現する魔物の方がタフになっていることに気が付いたんだ」
「へーーーーーーーーーー!」
実はレオナねえとアイリスお姉ちゃんとナナお姉ちゃんの三人は、ダンジョン経験者なのだ。王都に遊びに行った時に面白そうだってことで、近くにあるダンジョンに潜ってみたんだってさ。遊びで入っただけだからすぐに出てきたらしいけど。
「おっと、ゆっくり話してる場合じゃなかった。先に進もうぜ!」
「はいはーい」
―――――岩場を越え、原っぱを歩いている時だった。
背筋がゾワッとした。
「・・・ん?」
「レオナも感じた!?」
「何だろうこの感じ・・・」
「空気が変わりましたね。何なのでしょう?」
「よくわからないけど気持ち悪い」
「嫌な空気なのです」
辺りは静まり返ってるし、すごい気持ち悪さを感じながらも前に進む。
「お、おい、こんなのおかしいだろ!あの森を越えれば塔なのに」
「ミルラの塔のせ、せいなの?」
「こ、怖くて足が・・・」
「ハアッ、ハアッ、これ、進んでも大丈夫なのですか?」
「気持ち悪い」
「すごく空気が悪いのです」
意味不明の恐怖に震えながら何とか森の前までやって来たんだけど、とうとうみんな一歩も進めなくなった。
立っているだけで足が震えてくるような場所だからか、さっきから魔物の姿すら見えません。ホント何なのここ?
「も、も、もう無理だ!」
「無理!こ、これ、これ以上、進め、ない」
「にに、逃げた方が、よ、よくない!?」
「も、森の中に、何か、いるのかもし、しれ」
「気持ち悪い」
「あー、もう空気が悪すぎなのです!!マイナスイオンハムちゃん召喚!」
効果は謎のままだけど、清々しい空気にしてくれる白ハムちゃんを呼び出した。
「この辺すごく空気が悪いので、キレイにしてください!」
『チュウ!』
「い、いやこれ、空気とかの問題じゃ、ね、ねえだろ!」
「の、呪いとか、そっち系・・・」
白ハムちゃんからマイナスイオンが放出され、苦しかった呼吸が楽になった。
「ふーーー、さすがはマイナスイオンハムちゃんなのです!結構楽になりました」
『チュウ!』
マイナスイオン効果で新鮮な空気になったので、真っ青だったお姉ちゃん達の顔色も良くなってきた。
「マイナスイオン?そのよく分からん名前の白ハムちゃんすげえな!」
「あんまり怖くなくなったかも!?」
「これって空気じゃなくて、この辺一帯を浄化してくれたんじゃない?」
「私もアレは呪いとかそういう現象だと思います。浄化魔法って凄いですね!」
「気持ち良くなった!みんな震えてたのに一人だけ怒ってたのがさすクー」
そういえば怖くて息苦しかったけど、震えて動けないほどじゃなかったかも。
神様が作った特別製のボディーだから、ちょっと仕様が違うのかな?
とにかくみんな復活したようでよかった~。
やっぱり困ったときの白ハムちゃんだね!




