第385話 やっぱり映画の続きを見る
映画の完成度が気に入らなかったのもあり、一度は映写機の停止ボタンを押したわけですが、それでも見たいという視聴者の声が大きかったので、『これは完成作品じゃないですから!』と念を押してから続きを再生した。
ちなみにこの古代の映写機は、録画を停止させた時に繋ぎ目のようなモノができるようで、早送りボタンを押すとキュルキュルキュルっと倍速再生される感じじゃなくて、次の繋ぎ目まで飛ぶ仕組みなのだ。
なので使いやすいかどうかはさて置き、テンポはいいですね。
「本当に地獄の猛特訓すぎるですよ!」
「あーーーーーっはっはっはっはっはっはっはっは!」
今はホニャ毛学園に勝つための特訓をしている場面です。
さっきまで住宅街を走り回っていて、ようやくレミお姉ちゃんちの庭に戻って来たんだけど、クマちゃんを背中に乗せた状態でレオナねえが腕立て伏せをしてます。
さすがはAランク冒険者なのです!クマちゃんの体重がどれくらいあるのか測ったことは無いのですが、あの大きさなので相当重たいハズ。
『いいぞ、その調子だ!あと500回』
『いや500回はキツいだろ!!』
『その程度の覚悟でホニャ学を倒せると思ってるのか!アレを見るんだ』
先生が指差した方向に画面がスライドすると、タマねえが腕立て伏せをしている姿が映った。その背中には仰向けのカロリーゼロが乗っている。
『アレと一緒にしないでくれ!あんなこと出来るのってタマだけだからな!』
『正直タマちゃんのパワーを侮ってたかも・・・』
『ローグザライアを乗せて腕立て伏せが出来るだけでも十分凄いですよ!』
そう話すアイリスお姉ちゃんとプリンお姉ちゃんの背中にもハムちゃんが山盛りに乗っていて、重さはともかくビジュアルがクッソ面白かった。
ちなみにカメラマンは、仕事から帰って来てボク達の映画撮影を興味津々で見ていたママさんです。
「っていうかみんな凄くない!?」
「ハムちゃんがゆらゆらしてて可愛すぎる!」
「あーーーーーっはっはっはっはっはっはっはっは!」
視聴者のみなさんも大変盛り上がってるようですし、住宅街での撮影でもあまり気にならないのかもしれない。
熱血先生役だったのでかなり無茶振りをしたのですが、それが功を奏して面白い作品に仕上がってる気がしますね~!
・・・とまあ、ようやく地獄の特訓も終わり、いよいよホニャ毛学園とのリベンジマッチとなる地区予選決勝の場面まで進んだ。
残念ながらホニャ毛学園の選手達を用意している時間が無かったので、ママさんによるナレーションだけで試合は進み、9回裏の攻撃のシーンまで移行した。
1アウト満塁、バッターは『もふもふ女学院』のキャプテンで4番のレオナねえ。
バットの先を大空に向ける。そう、予告ホームランだ!
画面が切り替わり、クーヤちゃん先生が複雑なサインを出している姿が映った。
バッターボックスからサインを確認したレオナねえの目が大きく開く。
そして三塁ランナーのタマねえが一つ頷いた。
ホニャ毛学園エースのママさんが、第一球を・・・投げました!
しかし強打者と評判のレオナねえは、バットを横に倒した。
三塁ランナーのタマねえがホームベースに向かって走り出す。
『なにィ!?スクイズだと!?』
三塁側に向かって転がる白球。それを右手で掴んだママさんが、体勢を崩しながらキャッチャーのクマちゃんに向かってボールを投げる。
『ンゴーーーーーーーーーー!!』
ホームベースの前に仁王立ちしたクマちゃんが、ママさんから投げられたボールなんてガン無視で、三塁から走って来るタマねえに向かって左ストレートを放つ。
ここで映像がスロー再生になる。(実際はゆっくり動いてるだけなんですけどね)
迫り来る強烈なパンチを紙一重で躱したタマねえが空高く舞い上がり、クマちゃんの頭上を越えて宙返りしてからホームベースを踏んだ。
『『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』』
静まり返る、ナナお姉ちゃんちの庭球場。
『うおおおおおおおおお!勝ったぞーーーーーーーーーー!!』
『『ワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!』』
先生を中心に抱きしめ合う球児達。
そしてクーヤちゃん先生の胴上げが始まった。
[ホニャ毛学園] 400 - 1 [もふもふ女学院]
最後にスコアボードがアップになり、映画は終了した。
「いやいやいやいや!全然勝ってないじゃないですか!」
「前回は300点差だったのに、399点差に広がってるんですけど!」
「最後まで野球のルールがわからなかったけど、でも面白かったわね~♪」
「えーと、『えいが』だっけ?メチャクチャ面白いかもしれない!!」
当然ながら視聴者からツッコミが入ったけど、レミお姉ちゃんとナナお姉ちゃんは面白いと言ってくれてます!
パチパチパチパチパチパチパチパチ
「ブラボーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
一緒に映画を見ていたママさんが、立ち上がって大きな拍手をしている。
途中からカメラマンとして製作に加わってくれたんだけど、この映画をすごく気に入ってくれたみたいだ。
「クーヤちゃん達が楽しそうなことをしてたから意味も分からず参加したけど、本当に面白かったわ!」
「人手が足りなかったので、ママさんがお手伝いしてくれて助かったのですよ~」
「決めたわよ!スタジオ・モコティーは『えいが』を作る会社にします!」
「「な、なんだってーーーーーーーーーー!?」」
なんかママさんが映画を作るとか言い始めたんですけど?
「ウソ!?アニメを作る会社じゃないの?」
「便器屋さんは!?」
「もちろんアニメも作るし便器屋さんもやるわよ。でもアニメって完成するまですごく時間が掛かりそうじゃない?そうなると便器屋さんがメインになっちゃうから、世間には便器屋さんで認知されちゃうわよね~?」
それを聞いたティアナ姉ちゃんとモコねえが、ハッとした顔になった。
「えいが会社がいいです!」
「便器屋さんじゃ恥ずかしいので、えいが屋さんでお願いしますです!」
「でしょ?じゃあ決まりね!」
なるほど~。映画制作会社なら便器屋さんより遥かに格好良いよね♪
でも一つ問題があるんだよな~。
「えーと、ボクも映画制作会社は素晴らしいと思うのですが、一つ大きな問題があるのですよ」
「大きな問題が?それは何かしら?」
「記憶媒体となる透明な宝石が、あと少ししか無いのです」
「な、なんですってーーーーー!?それってどうにかならないの?」
「古代の映写機を見つけた島を探し回ればたぶん何個かは見つかると思うけど、どれくらいあるのかまったく想像つかない感じですね~」
「ぐぬぬぬ・・・、何とかならないものかしら・・・」
「宝石探しは元々するつもりだったから、発見次第そっちに回してもいいぜ?けどアタシらも使いたいし、大量に見つかるといいんだけどな~」
こればかりはボク達にもさっぱり見当がつかないから、空飛ぶ島を探索しまくって何個見つかるかだよね。
まあどっちにしても会社すら無い状態なんだから、探索が終わるまで気長に待っていてくださいって感じかな?
建築やらトイレ工事やらダンジョンアタックやら、やること多すぎイィィ!!




