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第384話 映画を作ろう!

 ナナお姉ちゃんの魔法がパワーアップしたということでしばらくトイレ工事の様子を眺めていたのですが、出力の調整が上手くなってくると普通に仕事を見ているだけって感じになったので、レオナねえ達と一緒に家の中に戻って来た。



「モコねえに古代の映写機を見せようと思ってたのに、立派な便器屋さんになるためにティアナ姉ちゃんと一緒に向こうに残ってしまったのです」

「良い傾向じゃないのさ!きっと世界一の便器屋さんになるよ♪」

「しかし他人の家で何もやることがない状態ってのはキツイな・・・」

「残念ながらトイレ工事ではお役に立てません」

「帰る?」


 せめてモコねえに映写機を見せてから帰りたいんだよな~。でも便器屋さん期待のルーキーだから、トイレ工事が終わるまで帰って来ないかもしれない。


「あ、閃いたのです!暇潰しに映画でも作って、トイレ組が戻ったらそれを見せてあげようよ!」


「「えいが?」」


「あ~、えーとですね~、前にカメラで面白い動画を撮って遊んだじゃないですか。それをですね、ちゃんと物語みたいにして気合を入れて作るのです!」

「へーーーーー!なんか面白そうだね!」

「面白そうだけど、それはそれで時間が掛かりすぎねーか?」

「暇潰しなんだから適当でいいのです!セリフはほとんどアドリブでいきますが、みんな真剣に演技してください!」

「どのような物語にするのですか?」

「クーヤ、何か考えて」

「ボクが考えるの!?ん~、どうしよっかな・・・」


 こんなんただの暇潰しなんだし、ドラマでも適当にパクるか~。


「それじゃあ、優勝を目指す野球部の物語にします!」

「野球か!面白そうだな!」

「物語の大まかな流れを考えますので30分ほど時間をください!セリフはほとんど考えないので、みんな適当に合わせてくれればいいです」

「適当で大丈夫なのでしょうか?」

「メチャクチャになりそうだね~」

「だがそれがいい」



 というわけで、必死に30分でシナリオを考え、撮影時間に4時間もかけた超スペクタクル野球映画が完成した。






 ************************************************************






 トイレ工事組が戻って来た時には、すでにレミお姉ちゃんのママさんも帰宅してたんだけど、ボク達の映画撮影にすごく興味を持ったようで楽しそうに見てました。


 とりあえず映画の前に、古代の映写機の説明からスタートです。



「カメラの魔道具を手に入れたですとーーーーーーーーーー!?」

「えーと・・・、カメラって確か映像を記憶できる道具のことよね?」

「そうなんだよ!すごくない!?」

「これがその魔道具なのです!」


 古代の映写機はすでに壁に向けて設置してあるのですが、その側でモコねえとレミお姉ちゃんが興味深そうに見ている。


「綺麗な宝石が乗ってるわね~」

「この不思議な宝石って、すごい金額で売れそうじゃないですか!?」

「たぶんとんでもない値段がつくと思うが、残念ながら売れない事情があるんだ」

「もう正解を言っちゃうけど、これって記憶媒体なんだよ」

「これが記憶媒体なの!?」

「最初は透明だったのですが、映像を記憶すると、この赤い線と青い線がどんどん伸びていくのですよ」

「へーーーーーーーーーーーーーーー!!」

「あれ?随分と線が伸びてるね。・・・まさか大司教動画じゃ!?」

「違う違う!あんなの見せられるわけねーだろ!」

「それでですね、実はナナお姉ちゃん達がトイレ工事を頑張ってる間に、ボク達は映画を作ったのです!」


「「えいが??」」


 映画って言葉の説明をしていないので、映画と言っても意味が分からずオウム返しされてしまうのだ。


「というわけで、今からボク達が作った映画を公開します!!」

「ツッコミ所しかないが、妙におもしれーから最後まで見てくれ!」

「みんな頑張ったんだよ!」

「ほうほうほう」

「タイトルは、『弱小野球部の奇跡 ~泣き虫先生の100年戦争~』です。それでは、映画スタート!」



 ポチッとな。


 古代の映写機の再生ボタンを押した。



『今日の練習試合は何だ!!』



 壁に貼られた紙には、[ホニャ毛学園] 300 - 0 [もふもふ女学院]という、絶望を超えたスコアが書かれていた。



『わかってるのか!300-0だぞ!?こんな酷いスコアを見たのは初めてだ!!』


 ハゲヅラをかぶったクーヤちゃん先生が、顔を真っ赤にしながら憤慨している。

 ウム、素晴らしい演技だ!


『部員が4名しかいないので300点取られたのは仕方がない。問題なのは0点だったことだ!お前らはゼロか!ゼロな人間なのか!!』


 クーヤちゃん先生の目から涙がこぼれ落ちた。


『怒ってるのは0点だったからではない!お前ら最後諦めていただろ!せめて1点をもぎ取ろうという気持ちはないのか!お前ら悔しくないのか!?』


 レオナねえが一歩前に出た。


『悔しいです!』


 レオナねえに釣られたかのように、部員たちが一歩前に出た。


『私も悔しいです!』

『もう無理だと諦めてしまった自分に腹が立ちます!』

『えーと、タマも』


 うん。タマねえはアドリブが下手ですね。


『悔しいのは当然だ!お前たち、それでどうしたいんだ!?』


『勝ちたいです!』

『ホニャ毛に勝ちたいよ!』

『今日のリベンジがしたいです!』

『次は絶対に負けない!』


 あれだけの惨敗を喫したのに、まだこれほどの熱意があったとは・・・。

 先生の胸に感動がつきあげた。


『よーし、よく言った!先生が必ず勝たせてやる!』


『『先生!!』』



「え?クーヤちゃんって先生だったんだ!?」

「だからハゲてたですか!」


 ショタが先生役をやるには最初から無理があったので、ハゲるしかないのだ。



『そのために先生はお前たちを殴る!いいか?殴られた痛みなど10年で消える。だがな、今日の悔しさだけは絶対に忘れるな!』



「え?10年も消えないの?」

「どれだけ絶望的な一撃を叩き込むつもりですか!!」


 ギャラリー達が騒ぎ出した。

 10年はちょっと長すぎだったかも・・・。



 ぺち


 でっかいハリセンでレオナねえの頭を叩いた。



『先生、0.1秒で痛みが消えました!っていうか全然効きません!』

『ぐぬぬぬ・・・ちょっと待っておれ』


 先生がクマちゃんを召喚した。


『『なにッッ!?』』


 クマちゃんにハリセンを渡すと、レオナねえの前に移動して立ち上がった。


『お、おい、クマちゃんは反則だろ!』

『今日の悔しさを忘れるな!!』


 バシーーーーーーーーーーーーーーーン!!


『ゴふぁッッ!!』


 ハリセンとはいえ、容赦無い一撃を受けたレオナねえが豪快に吹き飛ばされた。



『痛ってええええええええええーーーーーーーーーー!!』



「うわっ!あの痛みは10年だーーーーー!!」

「本当に絶望的な一撃が来たですよ!?」



『がんばれよ!歯を食いしばれ!!』

『ちょっと待って!もう少し手加減を!』


 バシーーーーーーーーーーーーーーーン!!


『いったあああああああああああああああ!!』


 バシーーーーーーーーーーーーーーーン!!


『ごふッッ!』


 バシーーーーーーーーーーーーーーーン!!


『ぐはーーーーーーーーーー!』



 予想外のダメージを負った野球部員達はピクリとも動かなくなった。

 これから地獄の特訓が始まるというのに、根性の無いヤツらだ!


 仕方がないので、クマちゃんの背中に部員どもを乗せて部屋から出ていった。



 ポチッ


 映写機の停止ボタンを押した。



「「ん?」」


「もしかしてこれで終わり?」

「あーーーっはっはっはっはっはっはっは!みんなアホすぎる!!」

「部員達が滅ぼされただけで終わったですよ!?」

「レオナ達がどこに連れていかれたのか、すごく気になるんですけど!」


 おお?

 この視聴者らの反応は・・・大ヒットの予感!


「えーとですねえ、ここから始まる地獄の猛特訓は野外で撮影をしたのですが、面倒だったのでその辺の住宅街で撮影してしまったのですよ。思ったよりも出来が良かったので、ちゃんと原っぱで撮り直したいと思いまして」

「何だと?まだ最初の10分しか見てねーじゃん!」

「あの4時間は何だったの!?」

「でも言われてみると、街中で撮った映像だと野球をしている感じに見えないかもしれませんね~」

「意外と面白かったから、ちゃんとしたのを作りたいかもしれない」



 適当に遊んでただけなんだけど、みんなやる気が漲ってるような気がしますね。

 もしかすると出演者全員が映画俳優に目覚めたのかも!?

 

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