第383話 どんな家にしようかな?
家族みんなにお土産を渡し、あとはダンジョンに突入するだけって状態にはなったんだけど、グルミーダの肘まで手袋を改造してもらうためにクリスお姉ちゃんに預けちゃったので、何日か動けなくなってしまいました。
その翌日。
メンバー全員を招集し、肘まで手袋を回収。
シェミールまで届けに行ってもいいんだけど、すでにボクとレオナねえの手袋を預けてるから順番待ちになるだけで意味が無いってことで、クリスお姉ちゃんが帰宅してから渡すことにし、手袋の改造が終わるまでは自由時間ってことになった。
でもダンジョン突入が間近に迫っているので、装備の重さに慣れるために前衛の皆様は自由時間なのにフル装備です。思ったほど自由じゃないですね。
「お?」
レミお姉ちゃんの専属ハムちゃんから、『便器が完成したわよん!ナナちゃんを連れて来てもらっていいかしら~?』と飼い主みたいな口調で通信が入った。
鳴き声としてはチュウチュウ言ってるだけなので、ハムちゃん通信限定というか、召喚士にしかわからない現象なんですが、なぜか専属ハムちゃんって飼い主に似るんですよね~。真似してるだけかもしれないけど。
「レミお姉ちゃんから通信が来ました!便器が完成したから、ナナお姉ちゃんにトイレ工事を頼みたいそうです」
「「なんだってーーーーーーーーーーーーーーー!?」」
「すげーーーーー!もう完成したのか!」
「みんなの家のトイレが生まれ変わる日が来たんだ!」
「やった!」
「あの高性能便器をもう完成させたのですか!?」
「レミお姉ちゃんは天才なのです!」
「ダンジョンアタックはグルミーダの手袋が戻って来てからになるし、今なら大丈夫だよ~」
「それなら私も行こうかな?便器屋さんに就職するみたいですし?」
「ナナに仕事を教えてもらうといい!杖持ってくの忘れんなよ?」
「もち!」
今日は学校がお休みの日で、ティアナ姉ちゃんも家にいるのだ。
「じゃあレミお姉ちゃん家にモコねえも呼ぶ?古代の映写機を見せれば、アニメ制作への意欲が上がると思うのです」
「あ、呼んで呼んで!」
ハムちゃん経由でモコねえに、レミお姉ちゃんの家に来るよう伝えてもらった。
「アタシらも、超絶パワーアップしたナナの仕事っぷりを見に行くしかねえな」
「古代の映写機のお披露目もあるからね~」
「行きましょう!絶対楽しそうです」
「頭が重いけど頑張る」
そういえばみんなヴァルキリーみたいなヘルムを着けてるから、道中メチャクチャ目立ちそうですな。
―――――玄関から外に出ると、隣の敷地内に人が集まっているのが見えた。
「おい!不法侵入だ!」
「もしかして屋敷の解体をするところじゃない?」
「あ、きっとそれだよ!」
「ということは、どんな家を建てるか急いで考えなきゃいけませんね」
「忙しいけど重要!」
「ずっと忙しいから、家のことなんてスッカリ忘れてたのです!」
しかし家か~。
レオナねえは大奥を作るつもりでいるけど、本物がどんなものなのか知らないで言ってるだけだから、大江戸風のイメージは頭から排除して、普通にオシャレな家をイメージして考えてみるか。
っていうかアパートなんだよな・・・。
イカンイカン!日本の古臭いアパートの風景も頭から排除して、最新式の豪邸や別荘を思い浮かべよう。
傘を持って建物の隅っこにある錆びついた階段を上っていくあの切ない感じじゃなく、ホテルみたいなイメージだ。
玄関を広い吹き抜けにタイプにして、意味なく左右に階段があって、そこを上がって奥に進むと201号室、202号室って客室があるような感じがいいね~。
階段を上がらず真っ直ぐ進むとボク達の家だ!
あ、そうだ!照明はすべて間接照明にしよう。
赤っぽいオシャレなライトじゃなく、病院みたいな疲れない感じの白いヤツ。
おお、なんか頭の中に素晴らしい建物が見えて来ましたぞ!外観やボク達の住む1階から考えないで、玄関から作っていくとサクサク育ってくね~。
2階の客室を作っていたら、レミお姉ちゃんの家に到着してしまった。
続きはあとにしよう。
ピンポーン
「「なにィ!?」」
ブザーの音が『ピンポーン』になってるし!
そうか!『好き好きレミィお姉ちゃん!』のブザー音を聞いて改造したんだ。
ガチャッ
「うはっ!すごくいっぱい来たし!!」
「レミお姉ちゃん、ブザーの音がピンポーンになってるのです!」
「そうそう!アニメのブザーの音が可愛かったから改良したの♪」
「さすがレミお姉ちゃんなのです!」
「いっぱい作ったから、みんなにあげるわよん♪」
「「やったーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
話してるとモコねえもやって来たので、とりあえず家の中に入った。
「ところで半分くらいの人が今から戦闘するような格好だけど、これから魔物でも倒しに行くのかしら?」
「いあ、新装備に慣れるために着てるだけで、用事は何もない!」
「新しい杖でナナがパワーアップしたから、仕事っぷりを見に来たのだ~」
「へーーーーー!ナナちゃんが強くなったのね!」
「うん!前回より早くトイレ工事を終わらせることが出来るんじゃないかなあ?」
「それは頼もしいわね!じゃあ早速工事を始めてもいいかしら?」
「はい!」
外に出て、レミお姉ちゃんの家の裏側に移動した。
トイレまで水道管を引かなきゃならないので、どこをどう掘っていくか話し合ってるんだけど、便器屋さんの期待のルーキーであるティアナ姉ちゃんとモコねえも真剣に聞いています。
打ち合わせも終わり、ナナお姉ちゃんが『ルーンスタッフ』に魔力を流した。
何を言ってるのかよくわからない長い詠唱のあと、土が盛り上がった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「にょわああああああああああーーーーーーーーーー!」
「「どわあああああああああああーーーーーーーーーー!」」
ナナお姉ちゃんの魔法により地面の土がすごい勢いでかき出され、見ていた場所が悪かったボクとレオナねえとアイリスお姉ちゃんが土まみれになった。
「親方!空から土が大量に降ってきましたぞ!!」
「ぶへっ!オーーーイ、見学してたら土まみれになったんだけど!」
「ぺっ、ぺっ、うぇえええ、ナナにぶっかけられたし!!」
「ごめーーーーーーーーーーん!思ったより威力が・・・」
まったく悪気は無かっただろうけど、こんな罠があったとは!
「ちょ、ちょっと待って!その勢いだと水道管が心配なんだけど!!」
「うん。今のは自分でも危ないと思った!ちょっとそっちで練習します!」
「すごく難しそう・・・。私これ大丈夫なのかなあ?」
「トイレ工事ってのは、こんなに豪快でしたか!」
「前はもっと穏やかだったわよ!ナナちゃんパワーアップしすぎーーーーー!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
向こうでナナお姉ちゃんが練習してるんだけど、威力がありすぎて出力調整に四苦八苦している。
「ふ~~~、酷い目にあったのです!」
「すげーな。まあでも最大出力を上げるんじゃなく抑える方向で調整してるわけだから、自在に操れるようになれば工事が早く終わるんじゃね?」
「ダンジョンアタックの前に魔法の練習が出来て良かったかもだね。戦闘中に後ろから制御不能の魔法が飛んで来たら全滅してたかも・・・」
「ダンジョンよりトイレ工事の方が先で良かったです!」
「そっちにいなくてよかった」
やっぱり急激なパワーアップをした時は、事前にしっかりと練習しなきゃダメだと知ったボク達でした。




