第381話 家族のみんなにとんでもないお土産を渡す
ようやく納得のいく装備を揃えたお姉ちゃんズでしたが、グルミーダの革の手袋を諦めたわけではなく、ボクが提案した『手の平の部分だけ普通の革にする作戦』は試してみるみたいです。
手袋の改造はたぶんクリスお姉ちゃんにお願いすることになると思うので、それが終わってからダンジョンアタックって流れになりそうですね~。
みんなに家族のお土産を持って帰るよう勧めると、親に勘当されているプリンお姉ちゃんだけじゃなく、身内がおじいちゃんおばあちゃんなタマねえも『う~ん』といった感じで、アイリスお姉ちゃんだけお土産をゲットしてました。
そしていつもの様にゴンドラに乗り込んだわけですが、星のロッドとルーン文字でパワーアップしたドラちゃんが絶好調!
G(重力加速度)がキツくてシャレにならんので、結局いつもよりちょっと速いかなくらいの速度で帰って来た。
◇
何度も同じ説明をするのも面倒なので、家族全員揃うまでいつも通りでいようってことになり、夕食とお風呂の後のくつろぎタイムに作戦がスタート!
ルーン装備に身を固めたレオナねえが、脱衣所から登場する。
「あっ!レオナの装備がいつもと違う!!」
クリスお姉ちゃんの言葉に、全員がレオナねえに視線を向けた。
「何それ!凄く格好良い!!」
「あらあら~!素敵な装備品ね~♪」
「ほわああああ~~~~~!」
「ぬわーーーっはっはっはっはっはっはっは!カッコイイだろ!?でも装備が新しくなったのはアタシだけじゃないぜ!」
レオナねえに続いて、ボクも脱衣所から登場!
隣に並んで星のロッドを掲げ、二人一緒にルーン文字を光らせた。
「「光ったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
「いやホント何なのよ?その凄い装備は!」
「そんなの絶対この街の武器屋にも防具屋にも魔法屋にも売ってないよ!」
「お母さんもそんな凄い装備は見たことないわね~!」
「ほわああああ~~~~~!」
でしょうね!
というか、もし売ってたとしても高くて手が出るようなもんじゃないだろうし。
「最近アタシら忙しなく動いてただろ?実はこの装備を手に入れるために、とある島を探索し続けてたんだよ。んでようやくメンバー全員の装備品が揃ったとこだ!」
「っていうか毎日地獄の大掃除をしてたのです!」
「大掃除?」
「だから掃除機が突然消えたり、朝になったら見つかったりしていたのね~」
「・・・・・・・・・・・・」
リリカちゃんが『星のロッド』をジッと見つめている。
左右にゆらゆらとロッドを振ってみると、リリカちゃんの視線も左右に動いた。
すたたたたたたたた!
来たッ!
「リリカちゃん、ストーーーーーップ!!」
「ほえ?」
「実はリリカちゃんにお土産があるのです!」
「おみやげ!?」
「クーヤ、もう出しちまうのか?」
「星のロッドが大ピンチなのです!やむを得ない事態なのです!」
「もう少し説明したかったが、こうなったらしょうがねえか」
お土産ハムちゃんを召喚し、『天使のロッド』を出してもらった。
「何?あの可愛い杖!!」
「わああああ!杖の先に羽が付いてるよ!!」
「一応聞いておきます!リリカちゃんはこの『星のロッド』と、こっちの『天使のロッド』、どっちが欲しいですか?」
聞くまでもなくリリカちゃんの目は『天使のロッド』に釘付けで、躊躇なく天使の羽が付いたピンクのロッドをビシッ!と指差した。
「じゃあリリカちゃんに、すごくかわいい『天使のロッド』をあげるのです!」
リリカちゃんにロッドを手渡した。
みるみるうちに彼女は笑顔になり、一瞬にして『星のロッド』のことなど頭から吹き飛んだ様子。作戦は大成功だ!!
「リリカちゃん、良かったわね~♪」
「うん!あっ、クーヤありがとう!!」
「壊さないよう大事に使ってね!」
よし!これで他のみんなにも落ち着いてお土産を渡せますね。
「じゃあ次はティアナ姉ちゃんへのお土産なのです!」
「え?私にもあるの!?」
ナナお姉ちゃんが選んでくれた赤い宝石の付いたゴージャスなロッドを、ティアナ姉ちゃんに手渡した。
「・・・・・・え?」
杖を手にしたティアナ姉ちゃんが驚いて、目を大きく開いた。
「この力の波動・・・、ちょ、ちょっとクーヤちゃん!この杖ヤバすぎない!?」
「うん。その辺のお店で買える杖とはちょっと格が違いますね~」
「ちょっとどころじゃないよ!!たぶん1000万ピリン以上するヤツだよ!!」
「へーーーーー、それが分かるとは流石ウィッチだな」
レオナねえにスタッフを渡した。
「これは母さんへのお土産だ!」
「まあ!こんな素敵な杖を!?ありがとうレオナ!」
紺色の宝石が付いた、落ち着いた雰囲気ながらも深みのあるスタッフを手に取ったお母さんが、ティアナ姉ちゃん同様、杖の凄まじさに衝撃を受けた。
「ティアナちゃん。こんなのどれほどの大金を積んでも買えないわよ?おそらく教皇様が所持している杖よりも格上なんじゃないかしら?」
「嘘!そんなに!?」
「アタシもそう思うぞ。だから他人にはあまり自慢しない方がいい。貸してって言われても断れ!」
「うぇええええ!何か言い訳を考えとかなきゃ・・・」
最後にクリスお姉ちゃんの前まで歩いていって、紫の宝石が付いたネックレスと、透明で小さな宝石が散りばめられた指輪を渡した。
「クリスお姉ちゃんは杖をもらっても意味がないと思ったので、綺麗なアクセサリーにしました!ボクが選んだんだよ!」
クリスお姉ちゃんが、ネックレスと指輪を見つめたまま固まっている。
そして次の瞬間、思いっきり抱きしめられた。
「クーヤくんありがとう!すごく嬉しいわ!!」
「むぐぐぐぐ!もごごご、もごごゴゴゴゴ!」
おっぱいに埋もれて、息ができないのです!!
「むごごごごご!ぷはあああああーーーーーッッ!」
過去一の締め付けで、本気で死ぬかと思いましたぞ!
「クーヤくん!ネックレスを着けてもらっていい?」
「あい!」
魔法屋で安全確認しまくったので、それほど苦労せずにネックレスを着けることができた。
ちなみに、指輪はすでにクリスお姉ちゃんの右手薬指に着いてますね。
右手薬指ってどういう意味があるの!?なんか怖くて聞けないし!
「魔法屋さんで見つけたアクセサリーですので、何か良い効果があるかもです」
「本当に綺麗な宝石ね~♪明日会社の人達に自慢しよっと!」
喜んでくれて良かった~!まあアクセサリーなら自慢しても問題ないと思う。
「ところで探索してた島って、リリカ島の近くなの?」
ティアナ姉ちゃんもようやく落ち着いたみたいで、島に興味をもったようだ。
「正解だ!リリカ島の向こう側に浮かんでいる『空飛ぶ島』だ!」
―――――室内が静まり返った。
「「空飛ぶ島ですって!?」」
さて、ここから長い説明が始まりそうですな・・・。