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第38話 屋敷に荷物を取りに行く

 

 ガチャ


「ただいまーーー!」


 お?ティアナ姉ちゃんが帰って来た。


「おかえりなさ~い!」

「ティアナ姉ちゃんおかえりー!」

「おかえりなさーい!!」


 よーし、やっと屋敷まで荷物を取りに行けるぞ!


「・・・え?この大きいのは何!?」

「げーむ!!」


 いやリリカちゃんや、ゲームってのは正確に言うとちょっと違うぞ。


 これはテレビで遊ぶゲームだからテレビゲームであってだね、・・・いや、このテレビってゲームしか出来ないのだから、テレビとしての尊厳などはもはや失われていると言えよう。うん、全てひっくるめてゲームで問題ねえな。


「んとねー、ボクが召喚(サモン)したの!」

「あ~、そういえばクーヤくんって、変なサモナーだったね・・・」


 リリカちゃんはゲームの才能があったらしく、すでにタコをやっつけることが出来るようになっていた。


 2人用プレイを選択してスタートボタンも押せるようになったので、今は1プレイヤー側のコントローラーを握っている。


 リリカちゃんの操作する赤いマリモがピョンピョン跳ねるのに興味津々だったティアナお姉ちゃんだったが、この後の用事のことを思い出したようでこっちを見た。


「クーヤくん、今日はあのお屋敷まで荷物を取りに行くんだよね?」

「うん!ライガーさんが見つかったらだけど・・・」


 ライガーさんは馬車の仕事をしているので、今行ってもいない可能性があるのだ。


 もしいたとしても、俺が提示するアイテムで運搬を引き受けてくれるかどうかもわからん。彼はあの屋敷が危険な場所だってことを知ってるし、そもそもまだ交渉前の段階なんだよね。


「とにかくそこまで行ってみようか。あ、リリカも一緒に行く?」

「リリカいまいそがしいの!!」


 どうやらリリカちゃんはゲームに夢中のようだ。

 危ない場所には連れて行きたくなかったので。これは好都合かもしれん!


「ねえクーヤくん、あれってそんなに面白いの?」

「うん!帰って来たらティアナ姉ちゃんも一緒にあそぼ!」

「それは楽しみね!じゃあ行こうか~」



 ティアナ姉ちゃんと手を繋いで、ライガーさんの所へと向かった。




 ◇




 ライガーさんいたーーーーーーーーーー!!


 仕事から戻って来てすぐだったらしく、ライガーさんは馬車内の掃除をしている所だった。



「ライガーさん!」


「ん?この声はクーヤか!?」


 掃除をしていたライガーさんが馬車から降りて来た。


「今日はどうした?・・・えーと、こちらはクーヤのお姉さんか?」

「初めまして!クーヤくんのお姉ちゃんです!」


 『お姉さん』と呼ばれたティアナ姉ちゃんが嬉しそうにしている。


「えーとね!今日は荷物を運ぶのをお願いしに来たの!」

「人じゃなくて荷物なのか?」

「うん!でもね、ボク馬車のお金持ってないから、お金の代わりに筋肉を鍛える道具じゃダメかな?」

「ちょっと待って!クーヤくんはお金なんて払わなくていいの!馬車代はお姉ちゃんが出すから」

「ふむ。クーヤからの頼みとあっちゃ断れねえな!お姉さん、馬車代は必要ねえ。ただ筋肉を鍛える道具ってのは気になるぞ!」


 やっぱりこっちに食いついたーーーーー!!


「えーと・・・、その道具も、運んでもらう荷物と一緒に置いてあるの!」

「ほほう。ってことは見てのお楽しみってヤツか!よし引き受けよう。掃除の途中だったが、二人とも馬車に乗りな!あ、どこまで行きゃいいんだ?」

「ずっと南のお屋敷!」

「南の?ずっと南の屋敷・・・、はあ!?あの馬鹿貴族の屋敷か??」

「そう、それ!!」

「・・・本気か?なんだか突然生死を賭けた依頼になったんだが・・・」


 いや、危険ゾーンまで入って来てもらうつもりはないぞ。

 俺一人で寝室まで行き来する感じでいいだろう。


 ・・・あ、しまった!あの道具だけは一人じゃ持てないか・・・。


「屋敷に入るのはボク一人でいいんだけど、一個だけ持てないヤツあるかも・・・」

「いや、引き受けたからには俺も行くぞ!」

「お姉ちゃんも行くよ!」

「ええええええええええええ!?」



 まいったなこりゃ・・・。


 二人を危険に曝すわけにゃいかんのに、逆に二人からしたら、子供一人を危険に曝すわけにゃいかんのか。


 こうなったらしょうがない。

 魔力の接近を常に見張りながら、万が一危険が迫ったら鉄板の早出しで対処だな。




 馬車は思った以上に快適な乗り心地だ。


 サスペンションが効いてる感じじゃないんで、道が良いってことなのだろうけど、お尻が痛くならないように座席が柔らかく作られているのだ。


 おっと、もうすぐ到着だ。


 さすがに屋敷前の道は荒れ放題だったので揺れまくる。

 でも馬車はなんとか門の近くまで進むことが出来た。



「ここならギリギリ大丈夫!玄関まで行ったら危ないけど」

「しかしクーヤが屋敷の関係者だとは思わなかったぜ」

「ん-ん、勝手に住んでただけだよ!」

「はあっ!?なぜこんな危険極まりない屋敷に・・・」

「色々あったの!」


 事情を知ってるティアナ姉ちゃんだけど、話には入って来なかった。

 俺から聞いた内容しか知らないわけだから、まあそりゃそうか。


「えーとね、そこの崩れた所から入れるよ!」


 本当は一人で行きたいんだけど、それは許してもらえないから、一緒に瓦礫を乗り越えて行く。



 ギギーーーッ


 玄関のドアを開けて、狙撃屋敷に侵入した。



「えーとね、左のドアを開けたら大きな部屋があるんだけど、めっちゃ危ないからそこは開けないでね」

「ドアを開けたら危険地帯とか、よくこんな所に住んでたな・・・」

「でも大きなお屋敷ね。いつ頃建てたんだろ?」

「あー、10年くらい前じゃなかったか?馬鹿な貴族がいるって噂になったのは」


 なぜか誰も年齢を教えてくれなかったけど、ティアナお姉ちゃんってたぶん見た目的に高校1年生か2年生くらいだと思うんだ。10年前じゃ子供だから、噂なんて耳にしなかったのかもな。


「あ、その右の部屋だよ!運びたい荷物は全部その中!」

「一ヶ所にまとめて置いてあるなら楽でいいな!」

「意外と埃っぽくないんだね」


 ああ、掃除機で廊下のゴミも全部吸い取ったからな!無駄になったけど。


「あ、来た!!」



 ダンッダンッ!



 その音を聞いて、二人が左上の方を見た。



「この音って・・・」

「なに?今の音は!」


「えーと・・・、ガジェムがあっち側の壁に当たったっぽい」



 ―――それを聞いた二人の顔が蒼白になった。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 久しぶりのお屋敷、嫌な予感が早速しますね。
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