第375話 大司教様ご乱心
「大掃除完了だコノヤローーーーーーーーーー!!」
「「やっと全部終わったああああああああああ~~~~~!」」
もう何度目かになる大掃除完了の雄叫びですが、これは魔法屋の大掃除まで終わらせたことによる『最後までやり切った』という心からの叫びなのです!
ちなみに魔法屋は防具屋の隣じゃなく、武器屋の正面にありました。
道路を挟んでいるので、少し歩きますけどね。
隣に無かった時のショックは大きかったけど、絶対近くにあるハズだという読みが当たっていて本当に良かった~。
さすがに3連続大掃除は地獄過ぎたので、全員床に大の字になって動けません。
ボクも杖とか壁とか拭きまくったけど、この中で一番疲れてなかったから震える指先で扇風機のスイッチを押す。あ~涼しい。
そういえば昨日の話に戻りますが、結局プリンお姉ちゃんの検証が最後まで終わらなかったので、後日持ち越しとなりました。
ネジポイントに到着するまでは検証してたんだけど、ピカピカさせたまま街に入ったらさすがにちょっと目立ち過ぎるので、門兵や街の人に絡まれる前に防具を光らせるのをやめました。みんな疲れてるし、早く家に帰りたかったのだ。
しかし、ルーン装備がハイブリッド車みたいな性能だったことには驚きました。
頑強さの面だけ見るとグルミーダの革の方がたぶん上なんだけど、そもそも装備に使用されている鉱石からしてレベルが高いし、それをルーン装備にすることで性能を強化しているわけだから、魔力を気にせず戦えるってだけでもルーン装備の方が総合力は上でしょう!
そもそもグルミーダの革は防具にしかならないもんね~。
後衛の職業の人には軽くて素晴らしい防具なのですが。
「大掃除したはいいけど、置いてある商品が意味不明な物ばかりだったな~。使い方がわからないと危険だよな?」
「杖なんかは装備しても大丈夫だろうけど、魔道具を触るのはちょっと怖いね~」
「たぶん説明書きがあったハズなんだけど、机の引き出しにでも入ってないと紙が朽ち果てちゃってるからなあ・・・。どっちみち文字が読めないけどさ!」
「杖が手に入るだけでも十分ですよ!」
「ティアナ姉ちゃんに杖を一本持って帰るのです!」
「店内に飾られてたローブは全滅?」
「襤褸切れを手に取ってみたけど、ありゃ全滅だ。ルーン文字が書かれていても布の劣化は止められなかったようだ。せっかくの目玉商品が~~~~~!」
「私もローブに期待してたんだけど、やっぱ布は生き残れなかったみたい」
1000年前・・・かどうかはわからないけど、布はそこまで長生きできないよね。
間違いなくすごいローブとか売ってたハズなんだけど、ほんと残念だな~。
「じゃあそろそろ予備の杖を探してくる!」
「せっかくだし、私達も適当に見て回ろうか」
「変な魔道具には触るなよ?」
「わかってるって!」
「皆さん気を付けて観賞して下さい!」
というわけで、ボクも暇潰しに店内を見て回ることにした。
「うーむ・・・」
魔法屋の目玉商品というと、杖、ローブ、魔道具、アクセサリーって感じなんだけど、ローブは朽ち果ててボロボロのゴミと化していたのでゴミ箱にポイしたから、杖くらいしか見るところが無い!
魔道具は触るなって言われてるし、アクセサリーもさっきみたいにビームが出るかもしれないからちょっと怖いのです。
説明書きなんてとっくに朽ち果てているから用途不明だしさ~。
ああ、それと魔導書も本棚に並べられているんだけど、ナナお姉ちゃんが調べたところ、紙の劣化や虫食いなんかでほぼアウトみたいです。
こうなったらもう、机の引き出しにでも入ってる元気な魔導書に期待するしかないでしょうね。いいのが見つかるといいけど。
ティアナ姉ちゃんのお土産に持って帰る杖を探さなきゃなんだけど、カウンター内にレオナねえがいたので、何となくそっちに行ってみた。
「あれ?またこの魔道具だ!」
「ウム。どうやら神殿にあったヤツは一般的な魔道具だったらしい。壊れてたけど武器屋にも同じのがあったしな」
「じゃあ触っても遠くに飛ばされたりはしないんじゃない?武器屋のおっさんが使えるような魔道具なんだし」
「まあ、そういうことになるな」
一般的な魔道具だって判明したから、レオナねえはあまり興味が無くなったらしく、引き出しを開け始めた。
・・・フム。
安全な魔道具っていうのならば、ちょっと調べてみよう!
えーと?たしか魔道具を動かすには魔石が必要なんだよね。
たぶんこの魔道具にセットされている魔石はエネルギー切れしてるだろうから、この前魔物を倒して手に入れたばかりの新鮮な魔石と入れ替えよう!
カチャッ
これでよし!
ん~、この魔道具には透明な宝石がセットされてないな。
いや、どうせなら赤と青の綺麗な宝石の方をセットしてみよう!
宝石ハムちゃんを召喚し、大司教様の部屋の金庫から手に入れたキレイな宝石を一つ出してもらった。
神殿にあった魔道具に透明な宝石が嵌め込まれていた場所は覚えていたので、その場所に色付き宝石をセットした。
・・・さて、どうやったら動くんだろう?
大きさの違うボタンが6個並んでいるんだけど、一番大きいボタンを押してみた。
ジジッ
『い、いけません、大司教様!』
『よいではないか、よいではないか!』
―――――どこからか、少女の悲鳴とおっさんの笑い声が聞こえてきた。
「「なんだ!?」」
驚いたボクとレオナねえの二人は、辺りをキョロキョロ見回す。
そして魔道具の正面に、服を剝ぎ取られていく少女の姿を発見した。
「おいテメエ!一体どこから入って来た!?」
『いやあああああああああああああああ!』
『うっひょーーーーー!思った通り、良い体をしておるのう!』
少女は完全に服を脱がされ、その美しい裸体が惜し気もなく晒されている。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「これ、エロビデオじゃん!!」
「エロビデオ?」
「あ、えーと、エロ動画って言った方がいいのかな?」
「エロ動画だと!?もしかして、カメラと同じヤツなのか?」
タタタタタタッ!
「ちょっと!今の声は何!?」
「女の人の悲鳴が聞こえたんだけど!」
「それと悪そうな男の声も!!」
「どこにいる!?」
変な声を聞いて駆け寄って来たみんなが、白い壁に映っている映像に気付いた。
「あの子・・・誰?」
「っていうか、これってカメラの映像じゃない?」
「え!?ちょっと待って下さい!女性の裸なんて映していいのですか!?」
「・・・・・・・・・」
ガタガタッ ザザッ
画面が揺れ、小太りのおっさんの全裸がドアップで映し出された。
『やめて下さい!大司教さまああああああああああ!』
『ぐひょひょひょひょひょひょひょーーーーーーー!』
強制的に汚いおっさんの全裸を見させられたお姉ちゃん達はブチキレた。
「「大司教オオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
なるほど・・・。
あの金庫に入ってた宝石って、このおっさんの『お宝映像』だったのか。
オイ、ふざけんな!どうすんだよこの空気!!