第365話 凄腕シーフ
神殿のお偉いさんが住んでいたと思われる部屋で、結構な値打ち物と思われるメイスを発見したボク達は、まだこんなもんじゃないハズだと探索を続行。
いかにもお宝が眠っていそうな金庫のドアを無理矢理開けると、そこには綺麗な宝石がいくつも入っていました!
一番手前にあった大きな宝石を手に取ってみる。
ショタの小さな手よりも大きくて重かったので、両手で持ち上げた。
「ズッシリと重いのです!外側は透明だけど、中で赤色と青色がグルグルしてて不思議カッコイイ!!」
「うおおおおお!マジでデケエ宝石だな!」
「うわ~~~、すごく綺麗!」
「その箱の中にまだいっぱい入ってるよ!」
「全員分ありそうですね!」
「やった!」
一人ずつ金庫の中に手を入れ、全員が大きな宝石を手に取った。
それでもまだ金庫の中に二つ余ってます!
「こんなん絶対大金で売れるだろ!この宝石だけで大勝利だぞ!」
「どれも赤と青が渦巻いて似たような感じだけど、同じ模様ではないね~。宝石の形も全部違うよ」
「色が宝石全体に広がってるのと少し控え目なのがあるみたい。どっちの方が高く売れるかはわかんないけど・・・」
「宝石の中央にだけ模様があるのも可愛いですし、色が全体に広がってるのも綺麗です。好みの問題じゃないでしょうか?」
「形と模様が格好良いのが勝ち?」
「買うなら自分がキレイだと思った方を選ぶよね?やっぱ人それぞれじゃない?」
みんな『ほわあああ~』とか言いながらしばらく宝石を眺めていたけど、とりあえず全部ハムちゃんに預けておくことにした。
一時的に青いハムちゃんの名前を『宝石ハムちゃん』に変更する。こうしておけば『宝石ハムちゃん召喚!』って叫ぶだけで、この子が出てくるのだ。
メイスに続くお宝ゲットにホクホクしながら、全員持ち場に戻っていった。
ボクはすでにミッションコンプリートしたので、フラフラと探索しているお姉ちゃん達の様子を見て回る。
黄色いのが寄って来たので、机の上を調べていたレオナねえが一言呟いた。
「これって絶対魔道具だと思うんだが、初めて見るタイプなんだよな~。やっぱりクーヤもわかんねーよな?」
「魔道具の知識なんてゼロです!っていうか透明の宝石が乗っかってるじゃん!これってさっきの宝石と一緒のヤツなのかな?」
「大きさは一緒だけど、赤と青の模様が入ってねえんだよな~」
「魔道具にセットしてある感じだよね。ボタンを押したら色が付くとか!?」
「あ~、それが正解かもだ!でも古い魔道具だから適当に触るのは危険かもしれねえ。クーヤみたいにどこかへ飛ばされる可能性があるし、今はやめておこう」
「知らない魔道具をいじるのは危険なのです!」
その話ってボクの作り話なんだけど、今更そんなこと言えないしな~。
でも本当にどこかへ飛ばされる魔道具があるかもしれないし、レオナねえの言う通り変にいじらない方がいいね。
謎の魔道具は『お宝ハムちゃん』に入れといた。
「ふ~、みんなどうよ?何か良い物見つかったか?こっちは謎の魔道具一つだ」
みんな大体調べ終わったのか、レオナねえの声に反応した。
「棚に本がいっぱい並んでたけど、ほとんどダメになってた」
「こっちの棚の本も全滅ですね」
「私は5冊ゲットしたよ!その内1冊はいつもの聖書だけど」
「タンスは微妙。ボロい服と、皿とかコップとかそんなのばっかり。皿いる?」
「それって新品?」
「知らない。使ってないかもしれないけど汚い」
「大昔の皿がキレイなわけねえか。貴重な皿かもしれんけど、売ろうとしても出所を言えねえから、足もと見られそうだな」
「たしかに・・・」
「他にも建物はいっぱいあるんだし、骨董品は後回しでいいんじゃない?」
「じゃあ今はいらない」
もっと保存状態のいい食器が見つかるかもだしね!
「よし、次の部屋に行こうぜ!」
「あの豪華な両開きの扉の部屋で最後ですね」
「教皇様の部屋だよきっと!」
「ってことは、この部屋は大司教様の部屋か?」
「かな?豪華な扉が大司祭様で、この部屋が司祭様なのかもしれないけど」
すごく大きな神殿だから、一番トップが大司祭様ってことはないと思う。
おそらく教皇様の部屋で正解です。これはお宝の予感!
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
「ダメそうか?」
「ぐぬぬぬ!硬いというより鍵が掛かっているような気が・・・」
「うぇええええ!!鍵を探さなきゃならないの!?」
「教皇様ーーーーー!鍵は一体どこにあるんですかーーーーー!?」
「メイスで殴ってみる?」
ふむ。どうやら凄腕シーフとして名高いボクの出番のようですね。
「お嬢さん方、お待ちなさい」
一人だけ落ち着いた口調で話す黄色いショタに視線が集まった。
「実はワタクシ、どんな扉でも開くことができる万能鍵を持っているのですよ」
「「な、なんだってーーーーーーーーーーーーーーー!?」」
『こいつ何かやるつもりだ!』と、お姉ちゃん達がドアから下がってくれた。
見ればわかると余計な会話はせず、両開きの扉のど真ん中に鉄板を呼び出した。
その結果、デッドボルト(かんぬき部分)が切断され、呆気なく扉が開く。
「「鉄板じゃねえか!!」」
この世の中、鉄板一枚あれば大体なんとでもなるのです!
「鉄板こそ最強にして万能工具」
「小手先の技に頼らず豪快にぶっ壊すとは目から鱗だぜ!」
「そこにシビれる!あこがれる!」
「鉄板強すぎーーーーーーーーーー!」
「小さな鍵を想像してたら、驚くほど大きかったよ!」
「流石天使様ですね!どんな扉でも開けられるなんて凄いです!」
鍵はぶっ壊したけど、鉄の扉なんかクーヤちゃんに開けるのは不可能だし、先頭は危険なので、レオナねえとプリンお姉ちゃんの特攻コンビが部屋に飛び込んだ。
「よし大丈夫だ!部屋の中に生き物はいない」
骸骨はいそうですけどね~とか思いながら、タマねえと一緒に部屋に入った。
「杖だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
珍しくナナお姉ちゃんが叫び声をあげたので視線を追うと、長い杖が壁に飾られているのが見えた。




