第361話 ドラちゃんの秘密基地
クーヤちゃん自らが監修し清潔感を重視して改修してもらったトイレは、トイレ王国と名高い日本生まれのボクから見ても満足のいく完璧な出来でした!
完成が近いと聞き、トイレに行くのを我慢していた関係者全員が新しくなったトイレを体験したんだけど、当然ながら大絶賛でした!
便器くんの性能もなんですが、やっぱりトイレ特有の嫌な匂いが消え去ったのが何よりも素晴らしいと思ってます。とにかく快適なのですよ!
そうなると、ウチの家族以外の人達が自分ちのトイレを改修したくなるのも無理からぬ話で、レミお姉ちゃんに期待が集まりました。
「トイレを改修した私が一番あのトイレを再現したくて堪らない状態なのよ!明日から早速便器くんの製作に入るわ!」
「こうなったらもう、レミさんに期待するしかない!」
「完成したら、またナナちゃんに工事を手伝ってもらってもいいかしら?」
「うん、頑張るよ!でも協力するのは知り合いの家限定ね」
「私の家もお願いね!便器くんの代金も工事費も払うから!」
「そういやママさんから土地代が入ったから、そのお金をトイレの改修費用に充てるといいぞ」
「やった!それならトイレ代払っても全然余裕」
土地代の半分をママさんが購入したわけだから1000万ピリン戻ってきたのか。それを6等分だから、一人165万ピリンくらい浮いたね~。
しかしアイリスお姉ちゃんもタマねえも、すでに便器くんの虜になってますなぁ。学校から帰って来たら、モコねえも騒ぎ出すに違いない。
まだ会社すら無いのに、すでに便器屋さん計画がスタートしてるし!
お昼過ぎにレミお姉ちゃんのママさんがウチにやって来て、新しくなったトイレを試しました。
その快適空間を知ったママさんが、目から鱗をボロボロ零しながらウチのトイレを褒め称え、スタジオ・モコティーを便器屋さんにすることを固く誓った。
一応最終目標はアニメなんですけどね!ただそこまでの道のりが長く険しいので、便器屋さんで食い繋ぐのは理に適っているのです。
しかしスタジオ・モコティー、すんごい荒稼ぎしそうじゃない?
とりあえずトイレ工事も無事終わったので、トナカイでレミお姉ちゃん親子を家まで送りました。
ショタと離れるのが辛くて駄々を捏ねるかと予想してたのですが、何日も泊まり込んで満足したのか、一刻も早く便器くんを完成させる野望に燃えているのか、なんか普通に自分ちに帰ってくれました。まあその両方かな?
レミお姉ちゃんがトイレ工事をしている間に、タマねえと一緒に新品の樽を買いに行ってハム水を満タンに入れておいたので、それを脱衣所に設置し、ママさんに効能を説明したあと実際に試してもらいました。
美肌効果を体感したママさんが大喜びし、死ぬほどキスされて大変でしたが、効果が凄すぎて危険だから誰にも言わないように口止めすると、『戦争になってもおかしくないわね・・・』と物騒なことを呟き、誰にも言わないと誓ってくれた。
正直な感想を言いますと、意外と可愛らしい性格だったレミお姉ちゃんとの暮らしが思ったよりも楽しくて、むしろボクの方が寂しさを感じています。
こんな人がお嫁さんだったら一生幸せだろうな~と素直に思いました!
見送りしてくれたレミお姉ちゃん親子に手を振りながら、タマねえと一緒に我が家へ向かってテクテク歩く。
「歩いて家に帰るの?」
「うん」
「いいかも!」
何となくそんな気分だったのでタマねえと二人でのんびり歩いてたんだけど、一つ気になることがあって立ち止まった。
「ん?」
「こっちってリリカ島がある東の方角だよね?」
「えーと、たぶん東であってる。それがどうかした?」
「ご褒美で好きに遊ばせてるドラちゃんなんだけどさ、リリカ島のもうちょい先に進んだ辺りで三日くらい動かないんだよね~」
「えええええ!?怪我して動けないんじゃ?」
「ドラちゃんが怪我なんてするのかなあ?それに付近の見回りも兼ねてるから、ヤバイ敵が出現したりピンチになった時はボクに教えてくれるハズだしな~」
「ん~、本人に聞いてみたら?」
「それもそうだね。聞いてみよう!」
『もしもしドラちゃんですか?どうぞ~』
『ギュア?』
『ずっとその場所から動かないから、何かあったのかなと思って』
『ギュア!』
『すごく良い場所を見つけた?』
『ギュア!!』
『気に入ったから秘密基地にするだって!?でもそろそろ自由時間終わるよ?』
『ギュア!?』
時が経つのも忘れて夢中になってたのか・・・。
そんなこと言われたら、どんな場所なのかボクも気になりますぞ!
「クーヤ、理由はわかった?」
タマねえに話し掛けられたので、ドラちゃん通信を一旦ストップした。
「なんかねえ、面白い場所を見つけてそこで遊んでただけだったみたい」
「へーーーーー」
「でね、秘密基地にするって楽しそうにしてた」
「何それ?秘密基地とかすごく気になる!」
そういえばタマねえも秘密基地マニアでしたね。
「いい加減、次の旅行に備えて魔力を回復させなきゃだから回収しようと思ってたんだけど、その前にドラちゃんの秘密基地でも見せてもらう?」
「見たい!!」
「じゃあ・・・、今日はもう半端な時間だから、行くなら明日かな?」
「二人で行くの?」
「ドラちゃんにゴンドラつけなきゃだから、レオナねえ達も誘ってみる」
「なるほど、アレは一人じゃ大変!」
「一応ボクもいるんですけど!」
「クーヤは戦力外」
「そんなバナナ!?」
タマねえとふざけ合いながら家まで帰ってきた。
まだアイリスお姉ちゃんもナナお姉ちゃんもリビングにいたので、これ幸いと明日一緒に行けないか聞いてみる。
「ドラちゃんの秘密基地だって!?」
「何それ面白そう!」
「リリカ島みたいな綺麗な島かな!?」
「あの素敵な島のことですね!」
プリンお姉ちゃんだけリリカ島に行ったことがなかったので、ハイドリムドに旅行する前に一度連れて行ったのだ。すごく感動してましたよ!
「リリカ島を真っすぐ東に進んだ位置で三日くらい止まってるから、たぶん島にいるんだと思う。倍くらいの距離だからグリフォンで行けなくもないけど、安全のためにドラちゃんで行った方がいいよね?」
「東だとずっと海の上を飛ぶことになるからな~。万が一があるからドラちゃんで行った方がいいだろう」
「ボクは明日行きたいのですが、みんな用事とかあったりする?」
「もちろんねえぞ!」
「ない!」
「レミさんが便器くんを完成させるまでなら暇だよ~」
「もちろん私も暇です!」
「クーヤを守るのがタマの用事」
よし、旅のメンバー勢揃いだ。
「じゃあ明日行くってことで決定なのです!」
「「オーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
結局、いつものメンバー全員でドラちゃんの秘密基地に行くことになりました!
一体どんな島なのか、ワクワクが止まりません!
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一夜明け、待ち合わせ場所である西門でアイリスお姉ちゃんとナナお姉ちゃんと合流し、ドラちゃん乗り場である『ネジポイント』に向かって移動した。
秘密基地にいたドラちゃんを一旦消して再召喚。
秘密基地に遊びに行きたいってのは昨日伝えてあったので、ゴンドラを装着している間もドラちゃんはずっとご機嫌でした。
おそらくみんなに自慢したかったのでしょうね!
準備が整ったので、全員ゴンドラに乗り込んだ。
いつものセリフを合図にドラちゃんが大空へ舞い上がる。
どんだけ飛ばしてるのか知らないけど、ご機嫌なドラちゃんはいつも以上のスピードでリリカ島に向かって飛んでいく。
「いつもより速くね!?」
「ボク達に秘密基地を自慢したくて、ドラちゃんはご機嫌なのです」
「あははは!なんか可愛い!」
「どんな島なんだろね~」
「あ、リリカ島発見!」
今回の目的地はリリカ島じゃないので、ドラちゃんは華麗にスルーした。
「あ~、リリカ島を通り過ぎてしまいました」
「帰りに少し寄ってもらおうよ」
「そうだね!」
それからも同じくらいの速度で飛んでいたんだけど、なぜかドラちゃんは高度を少し上げた。理由はわからないけど気流が悪いのかな?
リリカ島までと同じくらいの距離を進んだと思うんだけど、下は海が広がってるだけでまだ島が見えてこない。
「全然島が見えないね~」
「結構遠いのか?」
「ん~、昨日いた場所はこの辺だと思うんだけど・・・」
「ぶはッ!ちょっと、前!前!」
「前?」
―――――島、ありました。空中に!!
「竜の巣だぁーーーーーーーーーー!」
「竜の巣?これが・・・」
「はあ?何だよそれ!?」
「いえ、人生で一度叫んでみたかった憧れのセリフなのです!」
「すごく綺麗!」
「この島・・・、空中に浮かんでますよね?」
「流石ドラちゃんの秘密基地!カッコイイ!」
カッコイイっていうか、ボク達はとんでもない発見をしたんじゃ・・・。