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第3話 不安しか無いのですが・・・

 ガラの悪そうな50歳くらいのおっさんの悲惨な末路を目撃したギャラリー達が、恐怖心に囚われて騒めき出した。



『必ず特典を当ててやっからな。最低でも人間だ!後ろで俺の雄姿を目に焼き付けろ!絶対に俺は勝ーーーーーつ!!』


 これが最後に残したおっさんの名言である。ただの調子に乗ったセリフだけど。



 ・・・ふざけんな!


『俺の雄姿を目に焼き付けろ!』って、初っ端に最悪なモン見せんじゃねえよ!!

 おかげ様で、全員が絶望の未来しか想像できなくなったわ!!



「静まれ!!」


 ファンキー神様の鶴の一声に、全員が口を閉じた。


「穴に落下した山田健次は死んだわけではない!転生先に旅立っただけだ。そもそもお前らはすでに死んでるだろ?」


 ・・・たしかに。


 もう死んでるのに更に死ぬってのもおかしな話だな。ただこの男は魂グチャグチャにするとか言ってたから、まるで信用ならんけど。


「残念ながら奴は浜辺でカサカサする人生、いや、虫生になったが、記憶が消去されるのだから何ら問題は無い。何度も転生してりゃ、またいつか人間に生まれ変わることもあるだろう」


 それもそうか・・・。本能のまま生きて死ぬだけなのだから、フナムシに生まれ変わったとしても辛くも何ともないんだ。


「さて、まだ999人もいるのだからとっとと次行くぞ!竹中奈津子、前に出ろ」


「ひっ!!・・・わ、私なんですか!?」



 おそらく60代と思われる女性が、震えながら前へ出て行った。




 ◇




 そして阿鼻叫喚の転生ルーレットが繰り返される。

 ・・・と思いきや、実はそうでもなかった。


 なぜなら世界ルーレットで地球以外だった場合、カタカナで表記されているだけだから、その世界が当たりなのかハズレなのかさっぱりわからないのだ。


 俺はファンキー神様の態度で、ある程度察することが出来るようになったけどな!


 多分だけど、彼がつまらなさそうにしていたら当たりだ。逆に満面の笑みを浮かべていたらヤバイ世界なんだろうなあ・・・。


 国ルーレットも地域ルーレットも、そこがどんな所なのか誰も知らないのだから、後ろで見ていて面白いモノではなかった。

 それは生物ルーレットも同様で、ドラゴンとかそういう単語がまったく出て来ないから、『ペモリ』とか書かれていても反応に困る感じ。



 ―――それが100人ほど続いた後、一人の男がとうとう奇跡を起こす。




 ◇




 ピピピピピピピピピピピッピッピッピッピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ



 【 マッソーヘイム 】



「お、おおおお!?つ、強そうな名前だ!!も、もしかして当たり??」



 ベタついた長髪でジーパンにシージャン姿、そして腰にウエストポーチを付けた、いかにもオタクといった感じの30代くらいの男が、ファンキー神様に話し掛けた。


 バフッ!


「プフッ、ゴホン!ああ、なかなか良い世界を当てたな!さあ次は国ルーレットだ、どんどん行け!」



 絶対嘘だ。


 すぐ取り繕ってたけど、世界の名前を見た時、後ろ向いて噴き出してただろ!!



 ファンキー神様の異変に気付かなかった長髪オタ君が、続けて国と地域を決め、いよいよ最大の難関である生物ルーレットをスタートさせた。



 ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッピッピッピッピッピピピピピピピピピピ!



「ふーっ、ふーっ、ふーっ、ふーーーっ!ほわたああああ!!」



 パーーーーーン!



 ピピピピピピピピピピピッピッピッピッピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ


 ピッ、ピッ、ピッ、ピンッ!




 【 金髪碧眼のイケメン(15)】




「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」


「き、き、き、き、きっつぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!」



 長髪オタ君やりやがったーーーーーーーーーー!!

 ファンキー神様を見ると、口に手を当てながら後ろを向いていた。


 ムムム?



「フフッ、特典を当てるとは素晴らしい強運の持ち主だ!おめでとう!!」


 初めてファンキー神様が祝福したのもあって、長髪オタくんもニッコニコだ。


「き、金髪碧眼・・・、でゅふふふふふふふふ!」


 いや、ニッコニコというより、気持ち悪いニヤケ顔だった。



「さて、剣と魔法の世界で特典を的中させた者には、続けて職業ルーレットをやってもらうぞ!」


「け、剣と魔法!?マッソーヘイムって、剣と魔法の世界だったのかーーー!!」



 マジかよ!?長髪オタ君すげえええええええ!!

 剣と魔法の世界で金髪碧眼のイケメンとか、超絶大当たりじゃねえか!!


 ファンキー神様が指をパチンと鳴らすと、新たなルーレットが出現した。


 えーと・・・、たしか職業ルーレットとか言ってたよな?



 ルーレットを見ると、職業の種類はそれほど多いわけじゃないようで、全部普通に読むことが出来た。


 ・魔法剣士

 ・戦士

 ・僧侶

 ・竜騎士

 ・勇者

 ・魔物使い


 他にも色々あるけど、ほとんどがゲームでよくあるラインナップだ。

 しかしスゲーな・・・、ここまで来たらもう全部当たりみたいなもんだろ。


 長髪オタ君もすでに恍惚の表情だ。



「そろそろルーレットを再開するぞ。順番待ちしてる奴らがまだまだ大量にいるのだからな」


「あっ、そうか。よ、よーーーーし!」



 ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッピッピッピッピッピピピピピピピピピピ!



「いでよ!勇者ああああああああーーーーーーーー!!」



 パーーーーーン!



 ピピピピピピピピピピピッピッピッピッピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ




 【 勇者 】




「フォオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォオオオオ!!」


「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」」



 長髪オタ君マジですげえ!!金髪碧眼のイケメン勇者だとお!?

 それってもうダブル役満だろ!いやトリプル役満か!?


 バフッ!


 ん?


 ファンキー神様を見ると、後ろを向いたまま口に手を当ててプルプル震えていた。


 アレ絶対笑ってるよな?いや、でも勇者のどこに笑う要素があるんだ??



 ―――その時、何となく後ろを見た。



 うお!?なんだこのデカいパネルは・・・、こんなの最初無かったよな?

 見ると、カタカナがすらーっと並んでいた。


 あっ、この『アララミキナ』ってのどこかで見たぞ?

 どこだ?・・・・・・ああ!ルーレットで誰かが当てた世界だった気がする。



 [アララミキナ] ◇水の世界。生物は海中にしかいない。



 おおっ!世界の説明文が書いてあるじゃないか!!

 もしかしてこれってさ、ファンキー神様のカンペじゃね!?


 後ろを向いて笑いを堪えているファンキー神様を見て思い出した。

 たしか最初に噴き出してたのって、世界ルーレットの時だったよな?


 よし、探してみよう。




 [マッソーヘイム] ◇ホモしかいない世界。繁殖は可能。




 バフッ!



 フッ、ぷくくクッ


 落ち着け。堪えろ。喜んでいるホモ勇者、違う、オタ君に悟られてはならぬ。



 そうか、そうだったのか・・・。


 ファンキー神様じゃなくたって、こんなん笑うわ!!

 

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