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第207話 門兵に大爆笑される

 馬車の持ち主はやはり商人で、首都・ルナレギンでそこそこ大きな店を経営しているらしい。治療に付き添っていた2人は予想通り、奥さんと娘さんだった。


 盗賊に殺されてしまった冒険者の遺体を荷台に乗せ、馬車はようやく首都に向かって走り出す。


 2時間もしないうちに到着するらしいので、ボク達はトナカイに乗り換えてついて行くことになった。



 ちなみに盗賊と戦闘になった時は、きっちりトドメを刺しておくのがこの世界の常識のようだ。


 理由はもちろん、生かしておくメリットが一つも無いから。


 教えてくれたのは悪そうなお兄さんなんだけど、詳しく聞いているうちに、現代日本人のような甘い考えは、この世界じゃ一切通用しないってのがよくわかった。


 人を殺しても許されるのならば悪者は何度でも人を殺すし、剣と魔法の世界の凶悪犯を牢獄に閉じ込めておくのだって大変だ。


 魔法なんかを使って脱獄を企てるに決まってるし、もし行動に移せば、その際に善良な市民に被害が出る可能性も高い。やはり凶悪犯は殺さねばならないのだ。


 でもって、盗賊の死体をそのままにしておいても、最寄りの街で報告すれば、兵士が検分しに行って、後ほど懸賞金が貰えるシステムになっているらしい。


 大物の賞金首がいれば金額も大きくなるんだけど、ボク達は明日帰る予定なので、まず受け取れるかどうかが不明なんだよね。


 帰るのを一日伸ばすって手もあるが、プリンお姉ちゃんのことを考えると一日でも早く帰るべきだろう。右手が一生動かなくなる可能性があるんだから、お金よりも帰る方を優先しなきゃ。



 前に誘拐された時にボクと『殺さずの約束』をしていたタマねえは、それが凶悪な盗賊相手でも絶対に殺しはしなかった。でも結局悪そうなお兄さんが止めを刺して回っていたのを見て、少し考えさせられることとなった。


 もうタマねえは小学校を卒業して冒険者になったわけだし、その時点で世間では大人扱いされるようになる年齢だ。


 あの約束は『良い大人になる』というのが焦点だったわけだから、もう破棄した方がいいのかもしれない。じゃないと、その甘さのせいで命を落とす可能性だってあるのだから。



 ・・・うん。重要なことなので、近いうちにタマねえと話し合おう。



 悪そうなお兄さんに手間を掛けさせてしまったのを見て、そう思ったのでした。




「プリンお姉ちゃん、街が見えたってさ!」

「え!?あ、いや、もう少しこのままでも・・・。むしろルナレギンを素通りして次の街を目指しません?」

「何わけの分からないことを言ってますか!お姉ちゃんは怪我してるんだから、宿でちゃんと休まなきゃ!」



 怪我をしているプリンお姉ちゃんを一人でトナカイに乗せるのも心配だったので、街までボクと相乗りして来たんだけど、後頭部に当たるハズのおっぱいの感触が胸当てに防がれてしまっているので、正直すごく期待外れでした!


 門まで到着した所で、一人ずつ門兵に冒険者カードを渡して確認してもらう。

 これを見せることで通行料がタダになるのだ!



「ぶはッ!クククククク、うわーっはっはっはっはっは!」


「人の冒険者カードを見て噴き出すなんて、失礼な門兵ですね!!」

「いや、こんなん笑うだろ!!『クーヤちゃん』ってオイ!」

「両親が愛情を込めて付けてくれた名前を笑うなんて、本当に失礼な人ですね!」

「名前で笑ったのではない!冒険者カードの名前が『ちゃん付け』だったから笑ったんだよ!!」

「・・・ハッ!?」


 ナナお姉ちゃんの策謀によって、冒険者カードの名前が『クーヤちゃん』になっていたのを思い出した。・・・なるほど、そりゃ笑うわ。


 ナナお姉ちゃんが目を逸らした。


「どう見ても本物の冒険者カードだよなあ・・・。こんな小さな子供が冒険者とは本当に驚きだ。まあ詮索はするまい」


 門兵がカードを返してくれたんだけど、なぜかプリンお姉ちゃんに後ろからヒョイと奪われた。


「本当に『クーヤちゃん』になってますね!とても可愛らしいです!!」

「冒険者カードは可愛くなくていいです」

「あれ?天使様ってCランク冒険者だったのですか!?」


 ん?


「ここに来る前にイルプシアの冒険者ギルドで登録したばかりだから、一番下のCランクなの」

「えーと、一番下はFランクですけど・・・」

「なんですとーーーーーーーーーー!?」


 マジかよ!なんでCランクになってるんだ??


「ナナお姉ちゃんの冒険者カード見せて!」

「エーーーーー!?名前を『ナナちゃん』にされちゃう!!」

「いや、しないから!」


 ナナお姉ちゃんの冒険者カードを見せてもらうと、ボクと同じくCランク冒険者になっていた。


「ナナお姉ちゃんもCランクになってるよ?確かAランクって言ってなかった?」

「ミミリア王国のギルドカードはAランクだよ。そういえばこっちで作ったカードはCランクになってるね~。クーヤちゃんとお揃いだ!」

「タマもCランクだから、クーヤとお揃い!」

「いや、お揃いなのがおかしいのです!ナナお姉ちゃんは元々Aランクだからまだわかるけど、ボクとタマねえは冒険者に成り立てホヤホヤなのですよ?」


「おそらく『ローグザライア』を討伐したからだろ。Fランクがあんなのを討伐したってのも変な話だからな。ギルマスとしてはランクを上げたかったが、規則があるからいきなりAランクやBランクにするわけにもいかない。なので自分の権限だけで上げられる限界のCランクにしてくれたんじゃねえか?」


 悪そうなお兄さんの考察を聞いて納得いった。

 ボク達一行を一つのチームとし、その功績をみんなで分け合った形か。

 何も告げずにCランクとは、ギルマスも粋な計らいをしますね!


「嘘っ!?あの『ローグザライア』を討伐したのですか!?」

「・・・あ~、まあな。一緒にミミリア王国に行くのならば、その道中にでもクーヤに詳しく聞いてみるといい」


 ドラちゃんを見せた後でなら、どうやって倒したのかも簡単に説明できるか。

 実力で倒した感ゼロなので、ボクはFランクでも全然構わないんですけどね~。


 ・・・ん?商人がこっちへ歩いて来た。


「皆様方にお礼をしたいので、私の店まで来て頂きたいのですが、その前に冒険者の遺体をギルドに運ばねばなりません」


 あーそっか!すぐ宿を取りに行く気でいたけど、商人からしたら大変な目に合った直後なわけだから、色々とやることがあるんだ。


「そうだな・・・、彼女を一刻も早く宿で休ませたいから、ガイア・タマ・クーヤはプリンアラートを連れて真っ直ぐ宿に向かってくれ。アタシら三人はギルドまでついて行って、盗賊関連のゴタゴタを処理してくる」

「了解した。観光は明日ってことでいいな?」

「だな。今日はもう疲れた」



 商人の男に評判の良い宿屋を教えてもらい、レオナねえ達は後から合流することに決まりました!


 今日は色んなことがあって本当に全員疲れていたけど、怪我なく盗賊を退治することが出来たし、商人一家とプリンお姉ちゃんを助けることも出来たので、ボク達は晴れ晴れとした気分で宿に向かってトナカイで移動を開始した。

 

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