第17話 どえらい兵器を手に入れた
謎はすべて解けた。この屋敷を襲撃してた犯人はカブトムシだったのだ。
・・・しかしこのカブトムシの死骸はどうしよう?
寝室に虫の死骸があるのはさすがに放置できん。
鉄板に突き刺さってるカブトムシを抜いてみる。
「うは、ガッツリ刺さってて抜けねえし!」
包丁でほじくり出すしかないんかなあ・・・。
せっかくの綺麗な包丁で虫なんか突っつきたくないですけど。
いくらカブトムシといえど、虫の死骸なんていつまでも触っていたくない。
まいったな・・・。
そういやこのカブトムシも召喚獣に出来るんかな?
あーでも死骸じゃ無理か。
ゲームとかだと瀕死にしてから仲間にするのが基本だよな。あ、それはテイムの方か?何にしても召喚士が召喚獣を手に入れる時の方法なんて記憶に無いぞ。
しかし仲間を出したり消したり出来るってのもおかしな話じゃない?
むしろ一度死んだからそういうことが出来るって理由の方が少し納得いく。
よし、お前たちは今日から俺の召喚獣だ!存分に働いてくれたまえ!
「・・・・・・・・・」
ってか、どうやって召喚獣にするんだ?
そもそも死骸を召喚獣に出来るのかもわからんし、誰かに教えてもらおうにも、俺にはまだそんなに会話スキルが無い。
なんか色々試してみて、ダメだったら諦めて鉄板からほじくり出すか。
「仲間になれ!我に従え!収納!ストック!おおおっ!?」
鉄板に突き刺さったカブトムシの1匹が、光を放ちながら消えた。
なんか成功したっぽくね!?
よし、5匹とも召喚獣にしよう!!
「ストック!ストック!ストック!ストック!」
『ストック』って言葉が正解だったのかは知らんけど、床に落ちたカブトムシも含めて5匹とも全てが光の粒子となって消えた。
まあとりあえず寝室から虫の死骸を排除することは出来たな!
でも召喚獣なんてどうやって・・・、ああ!ステータス画面を見てみよう。
名前:クーヤ
職業:召喚士
【召喚獣リスト】
・ガジェム(5)
おおっ!出た出た。でも何だよ『ガジェム』って!!
(5)になってるからこれがカブトムシなんだと思うけど、この先ずらーっと知らん名前が並んだりしたら忘れそうじゃない?
脳内モニターなんだし、名前の変更とか出来ないのだろうか?
名前:クーヤ
職業:召喚士
【召喚獣リスト】
・カブトムシ(5)[ガジェム]
「出来たし!!」
よっしゃーーー!これでとうとう俺も召喚士の仲間入りだな。
召喚魔法は使ってたけど、絶対アレって普通の召喚とは違うと思うし。
でもその辺に落ちてる死骸を召喚獣に出来るのって、なんか違う感あるよなぁ。
どちらかというと死霊使いとかそっち系じゃないの?これ。
人の死体とかを召喚獣に出来るとしたら、召喚士って忌み嫌われる職業な気がするけどな・・・。いや、人とかは無理なのかもしれんから憶測で考えない方がいいか。
んで、ストックした召喚獣はどうやって出すんだ?
「カブトくん出て来い!」
シュン!
「おお!」
50センチくらい先に、カブトムシが凛々しい姿で出現した。
・・・ただまったく動きませんね。
命令しないと待機状態とか?
「手の平に乗ってみて」
するとカブトムシがこっちにチャカチャカ歩いて来て、手の平に乗っかった。
うおおおおおおおお!なんかコイツすげー可愛いぞ!
そうだ、全部出してみよう!!
「カブトくん、みんな出て来い!」
シュン!
同じように、4匹のカブトムシが50センチ先に並んで出現した。
そして命令待ち状態なのかピクリとも動かない。
ただ4匹を同時召喚した時、ちょっとだけ魔力を消費したような感覚があった。
呼び出す召喚獣の数とかによって、魔力の消費量が変化するのかもしれない。
「よし、みんな近くまで歩いて来て!」
4匹のカブトムシがチャカチャカ歩いて来て、俺のすぐ手前で停止した。
すげーーーーー!なんて可愛いヤツらだ!ええの獲ったで!!
・・・いや、よく考えたらコイツらは毎日テロ活動を繰り返してるんだった。普段の行いはまったくもって可愛くねえ。
そうか!壁をガンガン撃ち抜くほどの凶悪極まりない虫なんだよな。
そんなヤバイ奴らを召喚獣に出来たのって凄くね?
こいつぁ大変なことになりましたよ!?
ちょっと裏の森に行って、カブトくんの威力を試してこよう!
◇
あひるポンチョにカブトムシを5匹くっつけて、屋敷の裏の森にやって来た。
「小川に何かあるとマズイから、あっち側にするか・・・」
狙うのはあの木だ。
もし撃破したとしても、木が倒れて小川に入らないほどの距離があるから安心だ。
「よし・・・、カブトくん1号!あの木に突撃だーーー!!」
ブブブブ ドゴッ!!
「うおおおおおおおお!すげーーーーーーーーーーーーーー!」
助走距離なんてほとんど無かったのに、急加速して木を貫通しおった!!
あんなの虫じゃねえわ!兵器だわ!
1号が帰って来て、あひるポンチョにしがみついた。
「よしよし!よくやったぞ1号」
角を撫でて労った後、次の目標を探す。
よし!次はあの大木だ。
「行け2号!あの大木を倒して来い!!」
ブブブブ ドゴン!
むむむむ、ギリギリ貫通って感じか!?
やはり助走無しではフルパワーに達しないのか。
2号が帰って来て、あひるポンチョにしがみついた。
頑張ったので2号の角も撫でて労う。
じゃあ今度は助走をつけてやってみっか。
「3号!100メートルほど後ろに飛んで、助走をつけてからあの大木に突撃だ!」
ブブブブ
3号がギューンと後ろに飛んで行き旋回するのが見えた。
ダンッ!
「なにィ!?」
速すぎて3号を見失った瞬間、大木の方から大きな音が聞こえた。
大木を見ると、2号の時よりも綺麗な穴が開いている。
なるほど・・・、助走を付けると威力も速度も桁違いってわけだ。
すなわちカブト達の攻撃は、ロングレンジでこそ本領を発揮するってわけね。
まあショートレンジでも木を貫通する威力はあるから、野生動物に襲われても倒せるんじゃなかろうか?
1号2号3号をショートレンジでぶつけて、その間に4号5号を後ろに飛ばしてロングレンジで使うなんてことも出来るに違いない。
3号が帰って来て、あひるポンチョにしがみついたので、角を撫でてやった。
次は5体編成でショットガンを試そうかと考えたんだけど、わざわざ大木をへし折るのもどうかと思ったので実験はここまで!
いや~、しかし一発目でこんなに強い召喚獣を手に入れることが出来るなんて思わなかったな。
攻撃力なんて皆無だったのに、いきなりスナイパーショタになってしまったよ。