第106話 とうとうこの日が来た
ぺち子姉ちゃんと一緒に帰宅したショタは、帰るのが遅れたのもあってリリカちゃんとタマねえに文句を言われたが、なんとか宥めてクエクエの続きをやっていた。
「リリカのこうげき!りゅうまおーに9ポイントのダメージをあたえた!」
「りゅうまおーをたおした!」
「おおおおおおおおーーーーーーーーーーーー!!」
「やったーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「勝ったの!?これで終わり?」
よっしゃーーーーーーーー!!やっとラスボスを撃破だーーーーーーーーー!!
ホントこのゲームは良く出来ていて、最後の戦いではHPもMPも枯れ果て、こっちも死ぬ寸前になってようやく倒せるようなシステムになっているのだ。
知ってはいたんだけど、それでもギリギリまで追いつめられるとヒヤヒヤするよ!
「あなたがひかりのつえをかざすと、まばゆいばかりのひかりがあふれだす。このせかいに、へいわがもどったのだ!」
「うわああああああああ~~~~~~!」
「やったーーーーーーーーーーーーー!!」
城に帰還する前に城下町に寄って、民衆の喜びの声を聞きに行く。
「*ゆうしゃロロばんざい!ゆうしゃリリカばんざーーーい!」
「*あなたさまのおかげでへいわがもどりました!」
「*ゆうしゃロロばんざい!ゆうしゃリリカばんざーーーい!」
「*あなたさまのおかげでへいわがもどりました!」
3人目・4人目のNPCに話し掛けると同じセリフを言われたので、もういいやと思って勇者リリカは城に向かった。
「*さあ、おうさまのもとへ!」
衛兵にそう言われたので急いで玉座の間へ向かおうとするが、なんと王様は1階まで迎えに来てくれていた。
「*おおゆうしゃリリカよ!すべてはいいつたえのとおりであった!このくにをおさめるにふさわいいのはそなたじゃ!」
しかし勇者リリカは王様になることを辞退し、新たな大地へ向かうと告げる。
「*まってください!」
お姫様が追いかけて来た。
「*そのたびにわたしをおともさせてください!つれていってくださいますか?」
コマンドが出たので、リリカちゃんは当然『はい』を選択した。
すると勇者リリカがお姫様を抱きかかえる。
これが正真正銘のお姫様抱っこです!
『ゆうしゃリリカのあらたなるたびがはじまる』
そしてファンファーレが鳴り響き、エンディングが流れ始めた。
♪テン テンテレッテ テンテレッテ テレーーーン
やっべえ・・・、もう何度も見たエンディングなのに泣きそうだ・・・。
リリカちゃんを見ると、コントローラーを握りしめる手が小刻みに震えており、ガン泣きしていた。
長き戦いの果てに掴んだハッピーエンドだ。気持ちは痛いほどわかる!
そして普段はクールなタマねえまでもが目をうるうるさせていた。
やっぱクエクエはすげーぜ!
長い翻訳生活が報われて、本当に感無量ですよ!
「終わったーーーーーーーーー!みんなお疲れさまーーーーーーーー!!」
「すっっっっっっっっっごくおもしろかったーーーーーーーーーーーー!!」
「クエクエがこんなに深いゲームだとは思わなかった。もう人生そのものと言ってもいい」
「さいきょーね!!でもとうとうおわっちゃった・・・」
それを聞いたタマねえがゲームの箱をガサゴソ漁り、一本のカセットを取り出す。
「次はクエクエⅡ」
「おおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
そうでした。勇者リリカの冒険はまだ終わってなかったのです。
クーヤちゃんの翻訳仕事もな!!
◇
夕食前、みんなより早く帰宅したレオナねえが子供達の側に駆け寄って来た。
「クーヤ、ラーメンを頼む!」
「え?もうすぐ夕食の時間だよ?」
「それはそれ、これはこれだ!」
まあ、どうせどんぶりを消したらお腹も空くのだから問題は無いんだけどさ。
テーブルの上にラーメンを召喚した。
「うっひょーーーーーーーーー!やっぱりラーメンは最強だよな!」
ズズズズズズ
そう。レオナねえはすでに、啜りながら食うことが出来るようになっていた。
ラーメンを食うのに上品さなどいらんのです!
「うんめーーーーーーーーーーー!コイツもウチで作れるようになればな~!」
「んーーー、すごく難しいと思うよ?」
「まあそうだろな~。例え見た目が近いモノを作れたとしても、この複雑な味を再現するのが大変そうだ。つーかもうこれって完成された味だろ?」
「うん。違う味には出来るかもだけど、これより美味しく作るってのは無理かも」
日本の職人さんって、何を作るんでも究極を追い求めるからな~。
ダメな部分を全て消去しないと満足しないんだよね。
味の好みは人それぞれだから、最強ラーメンも人によって違うんだけどさ。
そして夕食もお風呂も終わり、アイテム召喚の時間だー!ってなったんだけど。
「ハズレです」
鼻メガネを付けて、みんなの方を振り返った。
「「ぶわーーーっはっはっはっはっはっはっはっは!!」」
よし、ウケたからいいでしょう!こいつの役目はこれで終了です。
ただ、ショタの今の動きがツボに入ったらしく、一人ずつ、みんなから顔が見えないように一歩前に出て鼻メガネを装着し、2~3歩前に歩いてからクルっと振り返って、それを見た全員が大爆笑する流れが出来上がった。
しかし所詮は一発ギャグでしかないので、鼻メガネで少し遊んだ後はクラシック音楽を聴きながらパフェを食べたりチョコを食べたりと、優雅な一時を過ごした。
それにしても・・・。
ズズズズズズ
レオナねえ。ラーメンにハマり過ぎーーーーーーーー!!