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現状確認

 しんとした森の中、何度か深呼吸をして満足した私は家の中に引っ込むことにした。

 働く女25歳、趣味はサブカルの未世は転生して今やスローライフを嗜むエルフとなったのだ。

 少し黙考して向かったのはダイニングだった。何はともあれ、まずあの本と紙切れを確認しなければならないだろう。


「ほほう、感じ悪いオッサンだったけど中々アフターサービスが効いてるじゃないの」


 紙はあの強面親父による手紙(?)、本は図鑑や教本などらしいとタイトルから分かった。ちなみに本は異世界の言葉で書かれているらしかったが、不思議と未世でも文章の意味が理解できる。

 紙にはこう記してあった。


『死人番号2375920さま

 ご希望のプランを以下のように実現させましたのでご査収ください。

 ・5LDKの家屋、未開の土地(家屋の周囲100m圏内)への防御結界*付与、これによる安全な私有地化

 *周辺の地脈エネルギーを源とし半永久的に稼働する、Lv100前後までの敵を防ぐ結界

 ・『頑強』スキルの付与

 ・エルフ種族への転生(添付資料を参照)

 ・生産魔法チートの付与(詳しくはステータス、添付資料を参照)

 ・異世界転生基本能力パック*の付与

 *自動翻訳、鑑定、アイテムバッグ、メニュー機能、ショップ機能をまとめたパック(起動する際は『メニュー、オープン』と唱えてください)

 ・『リラクゼーション』スキルの付与

 ・ハーレム因子*の付与

 *魅力的な異性を引き寄せる体質になる

 ・飲食物1年分*の贈呈

 *1年間の状態保存魔法付与、1年を過ぎると魔法は消滅するのでご注意ください


 また、添付資料として以下を贈呈します。

 ・『魔法大全』

 ・『植物図鑑』

 ・『生物図鑑』

 ・『鉱物図鑑』

 ・『旅する冒険者ラグノシュによる世界記』

 ・『大商人クヌー著・魔道具のススメ』

 ・『シャトワール聖国監修 神話伝』


 それでは異世界の生活をお楽しみください』


 …うーん、なるほど分からん。

 取り敢えず『メニュー』とやらを開いてみるべきだろうか?

 何を出来るか、何を持っているかっていうのは大事だからね。情報は力なり。

 私は中二病じゃない、私は中二病じゃない、よし!


「ステータス、オープッ………メニュー、オープン!」


 ついワクワクしすぎてしまったことを、ここに懺悔いたします…。

 少しばかりの頰の赤らみと共に現れたのは、ホログラムのように宙に浮くウィンドウ。ネットゲームのメニュー画面みたいだ。

 ステータス、アイテムバッグ、アチーブメント、ミッション、ショップ、ヘルプ等々のアイコンがあった。

 気になるものはいっぱいあるが、まずはステータスからだ。指をプルプルさせながらポチッとな。


 〈ミヨ〉Lv.1

 種族:エルフ 職業:隠者

 体力:127 魔力:5069

 SP:500

 スキル一覧

 生産魔法/頑強/リラクゼーション


「えっ、みじかっ」


 思わずそんな声が漏れた。ステータスっていうくらいだから、STRとかDEXとかそういうのが書いてあるのかと。

 レベルは1。まぁ生まれたてだからね。でも職業が隠者て!もっと良い感じの表現なかったんか!隠居老人みたいじゃないか。

 そして、エルフらしく魔法が得意らしい。魔力が体力の約50倍もある。


「ん?SP…?SPってなんだろ」


 スキルポイント?スタミナポイント?まさかステータスポイントか!?

 …とも思ったが、体力と魔力がHPとかMPじゃないのに何でこれだけ?引っかかるなぁ。

 おもむろにSPの文字を押すと、小ウィンドウが出てきた。

『SP:ショップポイント メニュー内ショップで使用する』

 ……ショップのSですか!新しいですね!?


「うぅん…こうなるとショップを覗いてみたくなるなぁ……でもやっぱスキルから!」


 さっそく生産魔法をタップしてみる。


『生産魔法:生産活動に役立つ魔法。創世神シュテラノートとその眷属神により与えられた権能。アクティブスキル。

 〔生活〕〔収集〕〔加工〕〔生産〕〔装飾〕〔複合〕〔その他〕…………………………』


「うわうわうわ、ちょっと待って!?」


 メニューウィンドウよりもでっかい画面が出てきたかと思ったら、文字がいっぱい書いてあって目が回ってしまった。

 一応種類ごとに表示を分けているらしいけど、それでも魔法の技一覧?みたいなのがメチャクチャあるらしくてとても全部は読みきれない!!

 でも、これだけいっぱい魔法の技があるならきっと何でも出来るってことなんだろう!うん!よし、私は無敵だっ!!

 説明書はあんまり読まないタイプですハイ。


「次は…頑強か。ポチッと」


 こちらに関しては簡素な説明だけだったのでホッとする。

『頑強:健康的な肉体と精神を保つスキル。一般的な病から身を守り過度なショックを和らげることができる。パッシブスキル』

 …ちょっとやそっとじゃ弱らない身体になりましたよって感じかな?

 怪我とかしたらどうなるんだろ。どんな攻撃を受けてもキズひとつ付きません!だったらチートなんだけど。

 でも戦闘系チートは断ったからなぁ。多分違うんだろう。まぁ健康で居られれば良しよ。

 バトル無双など不要、私は気ままに生きたいのだ。


「最後はリラクゼーションか。これだけよく分からないんだけど…ペット関係のスキルかな?」


 ペットについて手紙に書いてなかったし。

 でもリラクゼーションって…どうしろと?少女漫画みたいな、小動物が寄ってくる空間を作り出すとかかな。

 益体もない妄想を掻き立てながら文字をタップしてみる。


『リラクゼーション:対象を安心させるスキル。対象に好かれるよう工夫や努力をするとスキル成功率が上がる。アクティブスキル』


 ……つまりアレか?ナ○シカ方式でコワクナイヨーってアピールして、仲良くなれって事なのか?

 うぅむ…それで本当に可愛いモフモフペットが手に入るのかしら。

 でも仲良くなるための努力は大切だよね。こればっかりはチートで解決できても何か違う感じがするし、自分で頑張ってみよう。


「はぁー……これでステータスについては概ね分かったかな。まだステータスしか見てないのか…異世界転生、面倒くさいな意外と」


 喉も渇いてきたし小腹も空いた。おやつ調達がてら食料貯蔵庫でも見てこようかな?

 さっき外から戻った時に気付いたのだが、キッチンの裏手…階段下のスペースに通路があった。そこが貯蔵庫へ繋がってるんだろう。

 通路の先は下り階段になっていた。地下!


「うぉおおおーー!?なんじゃこりゃ!」


 私は1年分の食料というのを甘くみていたのかもしれない。

 壁際にギッシリ積まれた野菜!肉!魚!果物!米袋と粉類!!瓶入りの何か!!

 こりゃ凄い。人って1年でこんなに食べるんだ。ていうか食料って、食材か。お菓子は…お菓子はないの?甘味ドコ??


「お菓子ないじゃん…!!!」


 探し回ったが、甘いものは果物と砂糖とジャムくらいしかなかった。マジか…。

 何だか嫌な予感がしてきた。

 取り敢えず食器を準備しよう、と思ってキッチンの食器棚を漁ってみたら皿が3枚と器が6個、コップが2個。カトラリー類は2セット。

 棚の中はガラガラだった。


「……………」


 無言で皿とコップを持って地下へ戻る。炭酸水があったのでそれとジャムをコップに入れてフルーツソーダにした。

 梨があったのでそれを剥くことにして、再びキッチンへ。調理器具を探していたら包丁が1本しかないことに気づく。まな板も一枚。

 こんなに広いキッチンなのに…広さは高級マンション並みなのにっ…!!


「ハッ!?待て、ちょっと待てよ!?」


 私は駆け出した。目指す場所はバスルーム。

 バスタブの横にはタオル掛けと小さな戸棚があった。キッチンと貯蔵庫以外で棚がついてたのは、確かここだけ…。

 バン!と勢いよく戸を開け放つ。


「中身…バスタオル1枚!フェイスタオル2枚!?マジですか、本気ですか神様!!」


 私はこれでも一人暮らし歴7年だ。タオルが3枚で生活できるかくらい想像がつく。否だ!

 というか。


「服がッ!!服がどこにも無いじゃないか〜〜〜!!!」


 ベロンと今着ている服……白いワンピースを捲りあげる。パンツは履いている。ブラジャーはナイトブラのような緩めのタイプ…。

 靴はベッドの傍に置いてあったので履いている。レザースリッポンのような代物だ。

 ……服、これだけ。これだけ……。

 ふと戸棚の上を見ると石鹸が一個置かれていた。シャンプーない。コンディショナーも化粧水も乳液も無い………ッッ!!


「う、うわあああぁぁぁああーー!!」


 叫びながら二階へと駆け上がる。寝室にはドーマーに続くハシゴがあったはずだ。

 ハシゴをのぼり、ドーマーの窓を慎重に開ける。…屋根に登れそうだったので恐る恐る外に身を乗り出した。

 緑の洋瓦を踏みしめて三角屋根の天辺に辿り着く。周辺を、見渡す。

 森ばっかりが広がっていた。いや、家の玄関方向は若干密度が薄い気がする。遠くは丘のような地形になっている…多分。

 そこから左の方角にも薄っすらベージュ色の…荒野?が見えた。その方角のどちらかなら街や村があるかもしれない。

 ………でも見える範囲には文明のブの字もない。

 お金がある訳でもないのに生活用品を買おうとしていたことに今更気付いて、乾いた笑いが口をついた。


自給自足スローライフって…厳しいのね…」


 ろくな家具も見当たらなかった時からジワジワ察していた事実に、気づいた瞬間だった。


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