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始まり

『好きな子ができる。』


この一言ほど盛り上がる言葉はない。学生時代の醍醐味と言えばやはり恋愛だろう。学校の帰り道や同性の友達達との恋バナで、何度この言葉を聞いたことだろうか。

ただ、人を好きになるということは悪いことではない。むしろ、誇るべきだ。


さて、ここでみんなに質問だ。みんなは、親友、あるいは自分と近しい子に恋愛相談をされた時、一番最初に何を思うだろうか。普通なら、


『(あ、こいつ好きな人いたのか。誰なんだ?)』


と思う。そしてそこから、


『んで、お前の好きな人は誰だ?』


と、本人に聞く。そして、


『えっと、○○ちゃんが好きなんだよね。』


と答えられる。ここまでがテンプレだろう。普通なら、自分に関係の無い人や、ちょっと仲のいい子、幼なじみなどが本人の想い人になるのだ。

そう、【普通】なら。



もし、自分に好きな人がいて、相談している本人の想い人が、自分の好きな人なら?一体どうなるのだろうか。修羅場間違いなしである。なんでこんな話をしたかと謎に思うだろう。何故なら、俺、畑元 侑(はたもと ゆう)は今現在進行形でこの修羅場を体験しているからである。


本音を言おう。助けて。恋愛の神様。




俺は現役高校一年生、畑元侑だ。よく(あつむ)って読まれるけど、(ゆう)だから、呼び間違えないようにしてくれ。今は高校の6時間目の最中。窓の外の景色を見ながら黄昏ている。中学を卒業したばかりで、まだまだ幼い面もあるが、そこら辺は目を瞑ってくれ。


中学卒業といえば、俺にとって苦い言葉。

多分、卒業式の後に男子全員が経験するであろう、『第二ボタン、誰に渡そうかな』という心の内の葛藤。しかし、カップルはそんな心配はいらない。なぜなら、誰に第二ボタンを渡すか聞かれる前に、渡す人が言わずもがな決まっているからだ。それはそうだ。

カップルの男の方は、付き合っている女の子以外に第二ボタンを渡すという行為は、浮気(社会的に死ぬ)という意味になる。そんな勇者な行動はしないだろう。


では、逆に誰とも付き合っていない男子はどうだろうか。

卒業式の前日、異性から連絡が来ないかそわそわしているのだ。

そう、『明日、第二ボタンくれない?』という連絡を。

実際、俺もそうだった。『(誰かから連絡来ないかな?)』と、ずっとソワソワしながら、友達と遊んでいた。だが、俺の期待は虚しく、連絡が来ることは無かった。俺ではなく、友達に連絡が来たのだ。よりによって、俺の好きな人から。ここから、俺の苦いエピソードが始まる。

その友達と遊んでいた俺は、友達の携帯の液晶画面を見て絶句した。それは文字通り絶句した。友達と俺の好きな人のトーク画面には、


『明日、第二ボタンくれない?』


という文字が浮かんでいるのを見て。

友達の報告を受けた俺の頭の中は、嫉妬というどす黒い感情が支配した。


『(なぜ、どうして。)』


俺はそんな感情に支配されながら、友達に作り笑いを向けるしかなかった。



翌日、卒業式当日。笑って卒業出来るはずが、俺は作り笑いを浮かべることしか出来ず、本当の意味で笑って卒業することが出来なかった。

卒業式の後の写真撮影会では、友達と俺の好きな人が笑い合いながらツーショットを撮り、その後に第二ボタンを渡していた。俺は、胸が苦しくなり、今すぐに家に帰りたくなった。

結局、誰にも第二ボタンを渡すことなく、俺は義務教育を修了した。



以上が、俺の苦いエピソードだ。少し重い話だったな。あいつら、付き合ってんのかね?もし付き合ってんなら、幸せになって欲しいもんだ。俺の頭の中で回想をしている内に、もう高校の帰り道だ。俺は自転車を力強く漕ぎ、土手沿いを追い風に乗りながら走った。

すると、川の傍に、1人の女子が佇んでいるのが見えた。何をしているのかと思い、じっと目を凝らして見てみると、それは中学時代にずっと片想いをしていた、猪谷 千紗(いのがや ちさ)がいた。


なぜ猪谷がここにいるのかは知らないが、明らかに様子がおかしい。フラフラとはしていないが、キョロキョロと周りを見渡しながら、若干挙動不審になっているのだ。不思議に思い、しばらく観察していると、茂みに隠れてモゾモゾとし始めた。

なにか掘っているのだろうか?数秒経つと、茂みの揺れが消える。同時に、猪谷の姿が消えた。

慌てて俺は自転車を降りて先程猪谷がいた場所に駆け寄る。先程猪谷がいた場所には、不自然な穴がぽっくりと空いていた。縦と横の幅は、人一人入れるか入れないかくらいだが、深さは暗くてよく見えない。


なんか、すごくここに入った方がいい気がする。根拠はないが、本能がそう言っている。直感に委ねることが多い俺は、迷わずその穴の中に飛び込んだ。

落ちてる最中、なんか上の方で聞き覚えのある声が聞こえたけど、きっと気のせいだろう。そう考えてるうちに、俺は色鮮やかな商店街に立っていた。




周りを見渡せば、明らかに人間とは思えないような大きさのオーク?や、長い耳が特徴的なエルフ?が歩いている。あれ?もしかして俺、異世界転生しちゃった?


こりゃあれだな。『好きな子についていったら異世界転生しちゃった件』って題でなんか作れるな。

俺はそんな冗談を思い浮かべながら、遠い目をしながら、『(これからどーなるんだろうなー)』と、そう思った。

以上です。次回もお楽しみに。

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