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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

とある事務員さん達シリーズ。

とある事務員さん達の話その7。

作者: 琴鈴


几帳面で綺麗好き、そして案外世話好きなのも知っていた。

しかし、まさかここまでとは……




金曜日のアフターファイブ。もはや当然のように恋人の家に泊まりにきて、当たり前のように求めあって肌を重ねて。結果足腰立たなくなる前になんとか解放してもらって、シャワーを浴びて現在に至る。

風呂上がりで濡れた髪をタオルでかき乱しながら部屋へと戻れば、部屋の主はベッドの上に胡座をかいていた。

「山田。」

「?」

こいこいと手招きをされ、促されるままにベッドへ歩み寄れば、先輩はぽんぽんと胡座をかいた膝を軽く叩く。

これは、もしかしなくても。

「さっき、少し気になったんだよ。掃除してやるから横になれ。」

「っ、」

よく見れば、先輩の手には白い梵天のついたオーソドックスな耳かきが握られていた。

さっきというのは当然のことながら先ほどまでの情事の事を指すのだろう。

耳が性感帯になりうるなんて、つい最近まで知らなかった。自分自身ですら知らなかったそのポイントを執拗に責め立てられ啼かされたのはつい先ほどの事だ。ぬるりとした舌の感覚がよみがえって、ゾクリと身体が震える。

しかし先輩は気づかなかったようで、ぽんぽんと再度膝を叩いて横になるよう促してくる。

恥ずかしい、などと言っても頑固なこの人が納得するとは思えなかった。ここは大人しく従った方がいいのだろう。気づかれないようにふぅ、とため息をついてから、促されるままにベッドの上に身を乗り上げその膝に頭を預けた。

「すぐ終わるからじっとしてろ。」

膝枕なんて初めての事にこちらは妙に緊張してしまっているというのに、先輩の意識は既に耳の奥の暗闇にあるらしかった。

手にしていた耳かきがそっと耳の中に入れられ、ガサガサと音をたてる。耳の内壁をそっと撫ぜるように擦られれば、思わずピクリと身体が跳ねた。

「こら、じっとしてろ。危ねぇ。」

「いや、でも、」

そろりと優しく耳の中で蠢くそれに、どうしても身体が反応してしまう。

くすぐったくて身をよじれば、少しだけ顔を抑える手に力がこめられた。

「肇。」

耳元に低い声が響く。

吐息が、耳にかかった。

「っ、」

「大人しくしてろ。」

その声に、じん、と身体の奥が痺れる。

思わずぎゅっと瞳を閉じれば、吐息の感触がより鮮明に伝わってきて嫌でも先ほどまでの行為を思いおこさせた。

ぴちゃぴちゃとダイレクトに響く水音。ぬるりとした舌が耳の中を犯して、熱い吐息がかけられる。そうやって弱いところを責められて、最終的には理性を飛ばしてその逞しい身体の上で腰を振っていたのはつい一時間前の事だ。まだ身体に残っている情事の感覚が、リアルによみがえってきた。

「っ、」

先ほどまでとは違う理由で身をよじる。

けれど、耳かきに集中している先輩はその事に気づいていないようだった。ごそごそと優しく中を撫ぜるその感触に、時折かけられる吐息。なにより枕にしている膝から伝わる彼の体温と匂いが、鎮まっていたはずの感覚を呼び起こしていく。

「んっ…」

漏れる声が熱を帯びていることに、先輩は気づいただろうか。抑えようとしても既に止められなくて、指を噛んで必死に耐えた。

「ん、ぅ…」

ごそごそと耳元で音がする。背中をゾクリと駆け上がるものに身体が反り返りそうになるのを、なんとか身をよじって受け流す。けれど、それももう限界だった。

下肢に熱が集まるのを止められなくて、もぞもぞと勝手に脚が動く。

このままではまずい。欲望を吐き出したのは先ほどのことなのに、またすぐにこんな状態に陥るなんて。知られれば、はしたない奴だと軽蔑されるかもしれない。

とにかく何か理由をつけて、この場を離れなければ。

そう思って耳かきが引き抜かれたその瞬間をねらって身を起こそうと、膝枕の上で態勢をかえようとしたのだが、


「……恭一郎さん?」


先輩の膝を枕にしていたその頬に、確かに当たる硬いもの。

「ちょっと。」

じ、と睨むように上を見上げれば、ふいっと視線がそらされた。

耳かきをベッドの上に転がし、その指がぽりぽりと頬をかく。

「その、なんだ。お前の声が…」

視線を右へ左へと彷徨わせながら、なんとも歯切れの悪い言葉が返ってきた。

耳掃除してやると言われたからこちらは真に受けて耐えていたというのに。少しだけむっとしたので頬に当たって存在を主張し始めていたそれにふぅ、と息をかけてやった。

「っ、」

面白いくらいビクリと身を跳ねさせた恋人に思わずふきだす。

「足りませんでした?」

「…そういうお前こそ。」

先輩の手が着ていたスウェットの上から、つ、と太ももを撫で上げる。

「ぁ、」

思わず漏れてしまった声に、慌てて口を塞いだが時すでに遅し。

チラリと上を見上げれば、ニヤリと口の端に笑みを浮かべる先輩と目が合って。

ぷっ、とふきだしたのは、二人ほとんど同時だった。

「シャワー浴びたばかりですよ。」

「んだよ、今から一緒に浴びなおすか?」

髪を優しくなでられながら耳元で囁かれれば、トクリと心臓が高鳴って先ほどまでの熱さが戻ってくる。

「まともに浴びさせてくれる気なんてないくせに。」

「じゃあ、諦めて後から浴びなおせ。」

顔にかかった髪を払われ、ふわりと触れるだけの口づけが落とされる。

唇に、目尻に。そして、耳に。

「肇……、」


耳元で自分だけに聞こえる声で囁かれた甘い言葉に、恥ずかしさからぎゅっと瞳を閉じた。


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