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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

10歩の人生

作者: 優しい人

最後まで読んで頂けると幸いです。

1歩目を踏み出す。幼少期の事を思い出す。


辺境の村に生まれ、村の中が自分にとっての世界だった。

畑の作物も、親が出してくれた料理も、猟師のおじさんがとってきた魔物も、何もかもが輝いて見えた。


忌み子を表す黒髪も、村の中では両親が村の英雄であったため、誰も嫌がらず、分け隔てなく接してくれていた。


何より、両親過ごした毎日は、決して忘れられぬ誇りだった。



2歩目を踏み出す。成人した頃を思い出す。


13歳になり、物事を吸収し、考えられるようになってきていた。

そして、はじめての経験がたくさんあった。


はじめて王都の街並みを見た時、いつか自分もここで暮らすことを夢見た。


はじめて、王都の料理を食べた時、村では見たことない食材の味に驚いたものだ。


はじめて、王都の宿屋に泊まった時は、家の寝慣れたベッドとは違う感触を楽しみつつ、疲れて寝てしまった。


はじめて、職業判別所にきたときは、無数に広がる将来の可能性を感じ、喜んだ。


そして、勇者となった。



3歩目を踏み出す。訓練の日々を思い出す。


村の人や両親と別れたばかりの頃は寂しい気持ちが溢れ、泣いてしまうことも多かった。


魔王討伐の仲間となる人物が、どのような人なのか、考え出したら止まらないこともあった。

王様や騎士団の方々が、太鼓判をおすほどの人達なのだから、信頼できるのだろうと考えていた。


はじめて握った剣は、狩猟で弓ばかり使っていて、初心者同然だったが、この鍛錬が後の平和に繋がると考え、挫けることはなかった。


休みがなく、故郷へ帰ることはかなわなかったが、平和になった後、両親と同じように英雄として、村に帰ろうと思った。



4歩目を踏み出す。魔王討伐メンバーがまだ会ったばかりの頃を思い出す。


大要塞の職業を持つ彼は、寡黙ながらも、優しげな瞳をしていた。


賢者であった彼は、職業を持ったばかりだと言うのに、既に宮廷魔術師程の能力を身につけていた。


聖女という教会から派遣された彼女は、王都に来て1日ほどしか経っていなかったが、民衆からは尊敬の眼差しが向けられていた。


4人で王様に謁見した時、長いであろう旅が始まるのだと、胸が踊った。


初戦闘では、ちぐはぐな連携ではあったものの魔物を倒した。それから改善に改善を重ね、完璧な連携へと近づいて行った。


野営では、互いのこなせることを最大限こなしたため、変にこだわって喧嘩することもなく眠りについた。


同年代の友人ができたのははじめてだった。



5歩目を踏み出す。魔王をとの戦いを思い出す。


魔王との戦いまで、たくさんの死線をくぐり抜けてきた。自分たちに油断などなかった。


魔王の魔法は、未知のものだった。大要塞の彼は、魔法の波を一身に受け止め、私たちを守り、息絶えた。


人の死を体験することは多々あったが、はじめての近しい友の死は、悼む時間すらなかった。なにより、魔王に対する怒りが溢れた。


魔王が体内の魔力を暴れさせる魔法を使った。賢者である彼は、体の内側から八つ裂きにされ、苦しみながら死んでいった。


どんな魔物を相手にしても、死なずに共に在った仲間達は、既に半分になってしまった。しかし、止まることは許されなかった。


魔王を剣で貫いた時、仲間達の死を無駄にしなかったことに安心するとともに、死んだ友人たちを想った。


魔王は、最後の力を振り絞り、光線のような攻撃を私に放った。死の予感がした。


6歩目を踏み出す。王都までの帰り道を思い出す。


死んだはずだったのだが、目が覚めた。目に映るのは、魔王の玉座の間。

体を起こし、横を見ると、聖女である彼女が事切れていた。


ふとポケットに違和感を感じ、手を入れると、手紙が入っていた。彼女からのようだ。

彼女は禁忌である自身を身代わりにする回復魔法を使い、私を助けてくれたようだった。

彼女は命を捨ててまで、友を守ろうとしてくれたのだ。

まさしく歴史に残るべき聖女だった。


帰り道、魔物のいない道を1人で歩いていた。

瞳から零れる涙は、誰にも見られることはなかった。


途中、故郷に近い場所に来たので、1度村まで向かった。しかし、そこには人ではなく屍の山が築かれていた。

山の中の人だったもの達は、どれも見覚えのある顔をしていた。そして、最愛の父母を見つけた時、世界を守れなかった自分を憎んだ。


そして、王都に帰還した。


7歩目を踏み出す。牢獄での日々を思い出す。


全ては国王の手のひらの上だったようだ。

全ては忌み子の象徴である黒髪の私が招いた事だと、国王は民衆に言い放った。


そして、忌み子を殺さずに育てた村は、だれ1人残らず、殺し尽くした。とも言った。


民衆は言葉を出すことはできなくなってしまった。国王は暗に、何か言おうものなら殺すと告げていた。民衆に力はない。

怒りと無力さを感じ、私は投獄された。


力を抑える魔道具で拘束された私に、牢屋を出る手段などなかった。

噛みちぎるのでさえ一苦労なパンと、あまりにも粗末なスープは、現実の味をも教えようとしていた。


世界的な組織である、冒険者ギルド、魔術師協会、聖王国は貴重な人材の喪失の怒りを王国に向け、私はその鬱憤を晴らすかのように、体を穢され、暴力を振られ、その度回復魔法をかけ、壊れないよう壊された。


聖女がかける魔法と違い、ただ冷たい魔力だった。


私は死刑になるとのことだった。あるかもわからぬ奈落の底に突き落とされるようだ。彼女から貰った命も、結局無駄になってしまうのだと、天上にいる彼女に謝った。


死刑の前日、国王は私の牢に現れた。

『私の野望に貢献してくれて、ありがとう。そして、歴史の闇にさようなら』

まだ若き王は、後の世で賢王と呼ばれるであろう。

魔王を呼び寄せ世を混沌へと導いた英雄殺しの勇者を葬ったのだから。


8歩目を踏み出そうとして、背を押される。目測10歩の死への道は、名も知らぬ兵士に縮められた。


理不尽だ。

なんたる横暴さだろうか。

世界を守るため、勇者として立ち上がったにも関わらず。

黒髪であるというだけで、忌避され、救った世界に殺される。


生死を共にした私と仲間達は、自身の可愛さに酔った愚王に踏みにじられる。

罪もない村人や両親は、飼い主に芸をさせられる犬のような兵士どもに殺された。


道化師(ピエロ)である私の仮面は外されない。

歴史という芸の中に隠されたタネや仕掛けは、観客(国民)には見破れない。

火吹き芸で燃やすはこの世の真実。

支配人(王家)が終わりを告げれば、それでは皆さんさようなら。

タネや仕掛けに気付いてしまうと、あなたはそこ(観客席)にはいられない。


奈落の底が見えてきる。


ああ、なんだ。


私だけじゃなかったようだ。


グシャッ!!


―――――――――


黒髪は昔、神聖なものとして扱われていた。

なぜなら、魔王を倒す勇者が、全て黒髪だったからである。

ある時、魔王復活に千年かかった事がある。

しかしその千年の間に、魔王の眷属である魔人達が黒髪である人間の周りに疫病を流行らせ、晴天を続かせ干ばつを起こすなど工作をしたため、黒髪の人間は忌み子という常識が根付いてしまった。

その状態を改善すべき王も、勇者が現れた時に都合の良いように扱えるよう、広めていった。

因みに他国では、黒髪が忌み子という考え方がない。そのため他国に逃げるという選択肢があるのだが、歴史上でも片手で数えられる程しか逃げられていない。


―――――――――


力を抑える魔道具は、罪人の脱獄が多いことを嘆いた1人の魔道具職人が作り上げたものである。

残念ながらその魔道具は、貴族や王族が人を都合のいいように動かすために使われている。

本来は歴史に残ってもおかしくないほど凄腕の魔道具職人であったが、悪用され始めてからは民衆に恨まれている。

善意の行いを汚される、たくさんの例の中の一つである。


―――――――――


冒険者ギルドは、基本的に魔法が使えない人間が登録している。魔法を使えるが登録している人もいるが、極小数である。

ランク付けは各分野によってされており、戦闘職は討伐や護衛、非戦闘職は採取でランクが付けられている。

また、人族以外の種族も登録するため、王国のみならず、各国にギルドが置かれている。尚、異種族大虐殺を行った聖王国にはギルドは存在しない。

大要塞はタンク職としては上位に位置している。


魔術師協会は、魔法関連の職がある人間が所属している。こちらは各魔法でランク付けがされている。

こちらも冒険者ギルド同様各国に存在する。

賢者は戦闘系から便利系まで多岐にわたる魔法が使えるため、協会では好待遇。


聖王国は、女神信仰の総本山として君臨している。

昔は種族問わず信仰していたが、人族主義を唱え他種族を虐殺したため、今では人族のみが信仰している。

聖女は柔軟な思考と信仰心が合わさってなることができる。

勇者の身代わりになった彼女は、黒髪のイメージを払拭することを考えていたが、計画に移す前に死んでしまった。


解説的なのを最後にくっつけました。

読みにくかったでしょうか?

申し訳ないです。


読んでくださりありがとうございました。

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