☆ 事件の予感
「はぁっ!」
キン キン
「まだまだ、踏み込みが足りん!」
「っ、はぁぁぁぁぁあ!」
ガッガッガッ
此処は大魔法学校の競技場。
今はまだ朝の6時だと言うのに健気に鍛錬をしている生徒が二人いた。
「ふぅ、ここまでだな。」
ウィルはハンドタオルで汗を拭い自分と私に洗浄魔法をかけた。
汗でベタベタしたまま授業なんてゴメンだからね。
「ありがとさん。だいぶ、上達したでしょう?」
「まだまだだな。校外学習だと、どうなるかわからないからな。」
後から聞いて知ったことだが、この校外学習はいわば、内申点のようなものらしい。学期末に行われる試験で惜しくも退学になってしまった人達の救済措置としてあるもので、此処で良い成績を残しておけば、退学にはならないらしい。
退学、退学、と簡単に言っているけど、実はこの学校、“留年”というのは存在しない。お気づきの方もいるだろうが、Cというのはchevalier(騎士)、
Mはmagie(魔法)、Gはguerir(治療)を表していて、何科にいるのを表している。なのでC-1というのは騎士道科の一組という意味。もう違和感に気づいただろうか。そう、この学校には学年というものは存在しない。だから留年というのもない。じゃあ、いつ卒業できるのか?それは、学園長からの伝書蝶が来て、そこで卒業試験を受けるかどうかを決めて、卒業試験で受かればようやく卒業できるという。ちなみに、此処でも失敗したら退学だから皆、慎重に決めるらしい。
「じゃ、戻るか。」
「はいはい。分かりましたよ。」
教室に戻ると、みんな分厚い本を読んでいた。何してるんだろ?
「あと一週間で校外学習だから、少しでも多くの情報や魔法書を読んでるんだろう。」
なるほどね、今回は目的地もわかっているからその土地の地図も探せばあるのか。
「今日の昼休みに私達も探す?」
「いや、学園長のことだ。アルメニア帝国の気候書などは隠してるだろう。それよりも鍛錬しといた方がいい。」
あっそ。
キーンコーン
10分前のチャイムがなりみんなが自分の席に座りだす。
「みんな、おはよう。今日は時間割変更で三、四時間目に3組との親善試合が行われる。親善試合といって気を抜かないように。
では、HRを終わる。各自解散。」
親善試合か、、、
これで他クラスの注意すべき人を把握しろという魂胆かな。
「おい、親善試合は本気でやれ。気を抜けば揚げ足を取られるからな。」
「揚げ足を取られるって何それ?」
この時はまだことの重大さに気が付かなかった。
まさか、あんな事になるとは誰も思わなかった。
第三章のタイトルは“小鳥を救え”です。
なんの童話か分かりますか?
ヒントは、グリム童話の一つですよ〜!




