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1、決心

ハロウィンに向けてのんびり書いていたのですが、いつの間にかハロウィン終わってた……何となくぼんやり書いていたので多分中身は無いと思います。しばし文章トレーニングにお付き合いください。


1、決心



『真白さん、僕と結婚してもらえますか?』


僕は夢を見た。夢のように真っ白なドレスを着た真白さんが笑顔で僕の隣にいる夢。


人が結婚を考えるきっかけって何なんだろう?友達が結婚したから?そろそろいい年だから?いい年?いい年っていつ?


僕は真白さんと付き合えた時から、永遠の愛を誓うなら絶対にこの人だと思った。


僕には付き合って3年になる彼女がいる。大学時代の先輩、2つ年上の高岡 真白さん。真白さんはその名の通り、肌が真っ白な雪のように白い。華奢な体とふわふわの髪はまるで人形のようだった。その繊細な見た目とは裏腹に、真白さんは超現実主義だ。その肌の白さと男性への塩対応に、塩の高岡と異名をつけられるほどだった。


そんな塩の真白さんが、僕の前ではほんの少し甘くなる。その甘さがクセになる不思議な人だ。


季節はGWが終わった5月の終わり頃、テレビでは某結婚情報雑誌のCMで溢れていた。6月はジューンブライド。梅雨の季節の到来と共に、挙式の季節でもある。就職して落ち着き始めたお一人様なら誰しも何か思う季節だ。


僕もそろそろ真白さんと結婚……なんて事を考えた。


実は過去に何度かプロポーズ紛いの発言をした事もある。でもそれは真白さんの都合には合わず、ことごとくスルーされ続けた。


もし僕がちゃんとプロポーズをして指輪を渡したら、真白さんは喜んでOKしてくれるんだろうか?


だけど僕は……真白さんに1つだけ言って無い事がある。


それは…………


僕が吸血鬼だって事。


別に吸血鬼である事に日常生活に不便は無い。人の血を吸わなきゃ生きていけない訳でも無く、日の光に当たると消えたりする訳でもない。寿命も普通の人間とほぼ変わらない。


それでも、この事は真白さんには今までずっと言えなかった。


もし、真白さんに拒絶されたら?気持ち悪がられたら?そんな事ばかり考えていた。でも僕は真白さんと結婚したい。真白さんにはちゃんと本当の僕を知って、改めて僕を選んで欲しい。


僕は意を決して、その事を真白さんに伝える事にした。


平日の夜、僕は『大事な話がある』と言って真白さんを自分の部屋に招いた。久しぶりに部屋を綺麗に片付け、真白さんの好きな紅茶を用意した。


インターホンが鳴ると、僕の大好きな真白さんがやって来た。真白さんの顔を見たら、久しぶりに会えた喜びより緊張の方が少し上回った。


「大事な話って何?明日も仕事あるんだけど?」

「いや、それはわかってるんだけど……あの……その……」


僕がどう切り出していいか迷っていると、真白さんは何だか落ち着かない様子で僕の部屋をあちこち調べ始めた。


「どうしたの?誰もいないよ?」

「え?あ、そうなの?」

「………………」


しばらく無言の気まずい空気が流れた。


「ちょっと……ここで待ってて。今紅茶入れるから」


キッチンに逃げようとすると、真白さんに捕まりソファーの方に引き戻された。


「あの、紅茶はいいから話……話って何?」


僕が真白さんの隣に座ると、真剣な眼差しを僕に向けた。真白さん今日も可愛いなぁ……その瞳に吸い込まれそうになる。


「もしかして…………」

「え?もしかして…………?」


もしかしてって……真白さんは僕が言う事に予想がつく?まさか!


僕はその雰囲気に息を飲んだ。


「………………」


僕がその振りに無言でいると、真白さんの顔がどんどん曇った。そして、絞り出すような声で真白さんは言った。


「…………別れ話?」

「えぇえ!?違うよ!全然そんな話じゃないよ!」


僕の一言に、真白さんは胸を撫で下ろしていた。


「なんだ……突然大事な話って……てっきりそうなのかと思った」

「いや、大事な話って他にもあるでしょ?どうして僕が別れる方を選択すると思ったの?」

「だって……何も……誰もいないし……」


他に誰かいるかいないかの基準なの?僕、浮気なんかした事ないよね?


「まぁ、誰かいたとしてもそっちを考えたかも……」

「真白さん!そんな事言わないでよ!この部屋に僕の他に誰かいた事なんてないよね?」


何だか真白さんのその反応に腹が立った。


「だって……じゃあ、話って何?」

「話って言うのは……その……」


緊張した。緊張に変な汗をかいた。両手を握りしめ、僕は思いきって真白さんに言った。


「僕……」

「僕……?」

「…………実は僕、吸血鬼なんだ!」


やっと言えた!!


真白さんは僕の渾身の告白に固まっていた。完全フリーズ状態だ。


「……………………」


長い長い沈黙の後、真白さんが言った言葉は一言だけだった。


「はぁ?」


すぐには理解できないのは当然だ。突然彼氏が吸血鬼なんです!なんていう話をすぐに信じろという方が難しい。だけどここは素直に「そうなんだ」という一言を期待していた。


しかし……


「それ、本当?真面目に言ってるの?」

「あの、いや、別に真白さんの血を……とかそうゆうんじゃないんだ」


雲行きの怪しさに感づいて、僕は慌てて吸血鬼は怖くないアピールをした。そのアピールを聞きながら、真白さんは面食らった様子で何度も瞬きを繰り返していた。


「僕はたまたま吸血鬼としての血は薄いから、生活に支障は無いんだ。だけど、たま~に、ごくたまにだよ?血吸いたいな~無性に吸いたいな~って時が来るんだ」

「………………」

「そうゆうときはトマトジュースを飲むんだけど、あ、塩分多めのやつ。無ければ飲むヨーグルトとかで……」


ふと気がつくと、真白さんの眉間に深いシワができていた。可愛い顔が台無しというくらい険しい顔をしていた。


ひ、引いている!完全に真白さんが引いている!これはマズイ!!


「あの、話って……それだけ?」

「それだけ?それだけだけど……」


真白さんは恐怖と言うより、何か落胆した様子だった。


「でも、すごく大事な事なんだ。本当の僕をちゃんと知って欲しくて……」


下を向いていた真白さんは、大きなため息をついて顔をあげた。そして、僕を諭すようにゆっくりと言った。


「葵君、そんな理由で私が葵君を振るとでも思った?そんなに別れたいなら、理由をちゃんと教えてよ……」


えぇ?!どうして?違う!!違うよ真白さん、それは全くの勘違いだよ!


「違うよ!僕、真白さんと別れたいなんて思ってないよ!」

「それって……吸血鬼とか言って話をはぐらかしてるんでしょ?」


そうじゃない!!そうじゃないんだ!


「そんな話より、面と向かってちゃんとハッキリ言ってくれた方がマシだよ!」

「え?だから……言ったよね?」

「……最低っ!!」


真白さんはその後、怒って部屋を出て行ってしまった。


「待ってよ!真白さん!」


殺気立った真白さんは手がつけられない。こうゆう時の真白さんは、絶対に追いかけちゃいけない。それはわかってはいたけど、思わずエレベーターの前まで追ってしまった。


「ついてきたらシメる!」

「えぇええええ~!それ怖いよ!」


そう暴言を言い放つと、真白さんはエレベーターの中へ駆け込んだ。


「真白さん!」


真白さんの後ろ姿にそう叫んだけど……エレベーターは無情にもその扉を閉じてしまった。


これは……マズイ!!


ダメだ!!完全に信じてもらえて無い!!気持ち悪がられるとか怖がられるとか、そうゆう話以前の問題だ。


起こった事の顛末に、何が失敗だったのか全く理解できなかった。


まさか本当の事を言ったのに、信じてもらえないとかある!?いや、そりゃあまぁ、こんな話信じられないとは思うけど……怒って帰るほど?


え……?僕は……どうすれば良かった?これからどうすればいい?



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