魔王城へ向かうことにした
━━━━いつも夢見てきた。
世界を救う勇者になることを。
「…今こそ現実になりそうだ」
レアの寝顔にそう言って黒い上着を羽織る。
喝采なんていらない。ようやく気付いたよ。俺は君がいるから頑張れるってことに。
「そこで待ってろ」
遥か先にそびえ立つ古き城を睨みつける。
これで最後だ…。最後にしてやる。その卑劣な悲鳴さえあげさせない。
「ギィィィィ!!!!!」
森の中飛びかかってくるゴブリンを風属性魔法で引き裂く。
「侵入者か?!」
挑みかかってくる魔人を氷漬けにして進む。
俺の歩みを止められる奴がいるとすればあいつだけだろう。
「ひ、ひぃぃぃぃぃ!!!!なんだこい…」
逃げ惑う魔人達。
こいつらを始末したところで何も変わらない。
「…何者だ」
その時だった。
俺の前に逃げも恐れもしない不動の男が降り立った。
「エリアスだ。お前らのボスの親友だよ。黙って通せ」
「それは無理だな」
剣を抜く男。
「黙ってろ」
しかしその前に凍らせる。
「…ば…ばかな…何だ…この魔力…」
「消えろよ」
首辺りまで凍った奴の横を通り過ぎる。
全身凍るのは時間の問題だろう。
「…この俺を一撃…だ、と?」
「誰だか知らねぇけど黙ってろ」
「もっと楽な任務だと言っていた…何故騙したのだ…魔王様…」
「…」
全て凍った魔人を拳を握り潰して砕く。
パラパラと散らばる氷の破片を見てから更に奥へと魔王城へ繋がる道を歩く。
「貴様!何者だ!」
「お前達のボスの親友だ」
魔王城の門の前に来た時に今日何回目かの質問。
今日何度目になるか分からない答えを返す。
「来客は聞いていない!帰れ」
黙って入れて貰えるとは思っていない。
「散れ」
風属性魔法で吹き飛ばす。
殺すまでもない。
「ぐぁっ!」
それで吹き飛ぶ門兵。
「…」
木でできた扉を火属性の魔法で燃やし中に入る。
「何者だ!」
「エリアス…名乗ってもわからんだろう」
中に控えていた5人ほどいた魔人の警備を凍てつかせる。
「…何だ…この魔法…!」
先ずは足だけを凍らせる。
「魔王の居場所を吐け」
近くにいた1人に近付き奴の居場所を聞き出す。
「余所者に言えるわけないだろ…!」
「答えろ…死にたくはないだろう…?」
俺の声に呼応して全員の氷の高さが上がる。今度は腰まで凍った。
そうやって尋問していると周囲から武器や魔法が飛んでくる。しかし、風魔法の障壁ではじき返す。
「ば、馬鹿な…魔法を弾き返した…?何ていう魔力なんだ…」
それを無視して男を問い詰める。
「答えろ」
「…答えられるかよ」
震える声。
「次は…分かるな?」
首まで凍らせた。後は顔だけだ。
「利口なことを祈る。これが完全に氷った後砕かれては壮絶な痛みだろう?」
「…上だ…」
「…」
手を振って氷を解除するとその場に座り込む魔人たち。無視して前へと進む。
真っ直ぐに階段を登ると手前にあった扉に手をかける。
その先に広がっていたのは別棟に繋がる通路だった。
「くそう!」
そしてそこで戦う人間と魔人達の姿があった。
「こいつらつえぇ!」
人間と魔族の戦いはこちらが不利に見えた。
20人ほどの人間に何人いるか分からない魔族ではこんなものか。
それを無視して前へ進む。
「おい、あんた今はいかないほうがいいぜ」
少し下がったところの端で休憩していた男がそう声をかけてきた。
「…」
「おい、あんた!聞いてんのか!」
「邪魔が多いな」
風属性魔法で魔族だけ通路の上からたたき落とす。
そうして空いた通路を悠然と歩く。
「…今の量を1発…で?100人はいたぞ…」
「何者だ…あいつ…」
「あんな魔法…見たことない…」
色々声が聞こえるが無視して進む。
「何事だ!」
別棟…というよりあちらが王城のメインなのだろう。そこの門が開かれて中から増援が現れた。
しかし、それらは1発で燃やされて消える。消したのは俺ではない。
「邪魔者がいるようだな」
「…」
そいつの横を通ろうとした時戦いの火蓋は落とされる。
「俺は魔王様の一番槍。ここを通す訳にはいかん」
「そうかよ」
飛びさがると灼炎の柄に手をかける。
「兄ちゃん!そいつは危険だ!1度撤退した方がいい!」
「そ、そうだ!そいつは俺達を壊滅寸前まで追いやった魔王軍四天王の1人!」
後ろから声をかけられるが知ったことではない。
灼炎を抜き突きつける。
「…!」
気配を察知したのかその一撃を避けた男。
「避けるなよ。めんどくせぇ…」
切っ先から飛ぶのは炎。
莫大な炎が奴を襲おうとしたがその前に避けられてしまった。
「…何だあの威力…」
男が驚いている。
ここから遥か先まで続く炎の槍。それは遠くの山の中腹に当たってようやく止まる。そこで生じた巨大な爆発。
「馬鹿な…ここまでの威力の魔法を無詠唱で…」
「こんなもので驚いていては一番槍の名も四天王の名も廃るぞ?」
その隙に胸を突き刺し直ぐに抜き出そうとした時。
「あれが見えぬか!人間!」
男が死にそうな声で王城の扉の方を指さした。
そこには人影があった。人影が誰かを拘束しているように見える。
「ユリヤ様!ユリヤ様だ!」
後ろからの声で理解する。ユリヤなのか。あれは
「貴様が動けば奴は死ぬぞ!」
男がそう言っている。確かにユリヤの首元には武器が押し当てられていた。
「ふはははは!!!これでは動けまい!!」
「くそ…卑怯者め」
「兄ちゃん1回下がった方がいいぞ!」
後ろから色々声が聞こえるがやはり知ったことではない。
ユリヤの周りにいた敵を消した。
「いいから黙ってろ」
その胸に灼炎を突き入れる。
「…この俺が…貴様のような人間如きに…」
「冥土の土産にお前を倒した男の名を教えてやる。俺は最弱のエリアス」
「…」
聞こえたかは分からないが手足を伸ばしてその場で倒れる魔族の男。
「…あいつ誰だ…四天王の1人をあんなにあっさり…」
後ろから声が聞こえる。
しかしこいつらに名乗る義理はない。
俺は目立ちたい訳じゃない。そうだな魔王を倒したのをこいつらということにすればいいか。
「あなた名前は?!」
1人の男が興奮気味に話しかけてきた。
「名前はない」
そう答えるとまた口を開く男。
「俺たちと手を組まないか?今からこの上の魔王を討伐に向かうところだったんだ」
「条件がある。お前達が魔王を倒したという風に公言してくれるならそれで構わない」
「そんな事でいいのか?喜んで引き受ける。おい、みんな!勝利はすぐそこだぞ!」
上がる歓声。
「…おい」
しかし見逃せないものがあった。
一人の女に違和感があった。
近付くとその腕を掴んだ。
「っ…」
「骨折か…」
「ち、違います!戦えます!」
否定しようとしているが痛そうにしているのは見てわかる。
「…」
指を踊らせるとここら一帯にいた人間の体から緑色の光が漏れる。
回復魔法だ。
「…回復魔法…しかも無詠唱…」
「ありえなくない…?」
周りが呆然としている中先へ進む。
奴は目の前にいるのだ。ここで止まっている場合ではない。
前へ進み門と扉を破壊してメインの城に侵入する。
これで全部終わりにしてやるよ。
気絶しているユリヤは後ろの奴らに任せることにした。




