表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/28

あの時の村を訪れる

「おはよう」


「ん、おはよう」


レアと朝の挨拶を交わす。


「何…すんだよ」


そんな彼女が何か投げてきた。


「…何だこれ」


「昨日シエルに変なことしたみたいだね」


顔だけは笑っているレア。


「変なことって何?」


ベティまで聞いてくる。

話題になっているシエルは顔を赤くして俯いた。


「何もしていない」


「昨日ここでぼーっと立ってたけど?」


やはり笑顔のまま俺に詰め寄ってくるレア。


「だから何もしていない」


「嘘つきなさいよこのケダモノ」


「俺はケダモノではない」


「こんなこと言ってるけどどう思う?」


「…ケダモノでした…」


「ほら見なさい」


更に詰め寄ってくるレア。


「私にもしてみなさいよ。どうせシエルだから文句言わないと思ったんでしょこの変態」


別にシエルだからしたわけではないんだがな。そうまで言うならやってやろうか。


「…俺を楽しませてくれるか?」


レアの腕を取り短くそう言った。


「は、離しなさいよ変態」


顔を赤くするレア。


「俺がしたのはこの程度だ。つべこべ言うな」


「つべこべって…つべdtp」


茹でられたくらい顔を真っ赤にして口を開いているが呂律が回っていない。


「お望み通りあんたにもしたが?」


「…何でエリアスは平気な顔してるのよ…」


「不満か?」


「何かムカつく…」


理不尽な話だ。


「それより準備はしたか?」


3人に話しかける。


「準備?」


レアだけが俺に聞いてきた


「今日は村を見に行くって聞いてないか?俺はちゃんと伝えたと思うが」


「あ…ごめん。エリアスのせいで忘れてた。エリアスが変態だから…」


「俺のせいかよ…まぁいい。準備してくれ。シエルから身を大事にしてくれと言われているから1人では行きにくい」


「そうですね。エリアスは私たちが守らないと行けませんから」


何故か胸を張るシエル。


「そうだよね。猪みたいに特攻しか出来ないエリアスを止められるのは私たちだけだもんね」


ベティもそう言っている。


「そうそう。いつか絶対魔王城に突っ込むから見とかないと。待っててね猪」


そう言って部屋に戻るレア。

お前も猪だろうと言いたかったが言う相手は既に居ない。





「…予想していたが酷い有様だな」


「これが…エリアスの村…」


王都を出て外にある村にやってきた俺たち。

あれ以降初めて見る村だが酷い有様だった。


「もう見る影もないな」


俺があの時に見た光景は最早残ってはいなかった。

処理が進んだ後なのだろう。


「こんな所に何の用だ」


「っ!」


声の聞こえた方を振り向くとあいつがいた。

魔王、グランアーシェ。


「お前のいた村は壊した。これでお前を縛るものはなくなった。なのに、どうしてだ?またお前がパーティに所属しているのは」


「悪いのかよ…」


「また裏切られるのが分からないのか?」


「…」


「裏切られる…どういうこと?」


レアが訊ねきた。


「…あんなジジイの言葉なんて聞かなくていい」


それより、灼炎を抜く。


「俺がここでお前を倒せば全部終わるんだろ?いい加減ストーカーするのは辞めてくれ」


「ストーカー…くくく…許せ。許せよ。勇者を育てるなど初めてのことでな。勇者になるのも勇者を育てるのもお互い初めてだろう。もっと気楽にいこう」


「ゴメンだな!」


灼炎を振り上げるとそのまま叩きつける。


「…ごふっ…」


予想外にも灼炎は奴の体を貫き地に斬り伏せた。

さすがは業物か。


「…」


「魔王を…一撃で?!」


レアが悲鳴に似た声を上げた。


「…俺を倒せて満足か?」


「…お前ほんとに魔王なのか?…弱過ぎないか?」


血を吐きながら膝をつく魔王。

しかしその顔は笑っていた。


「お前が…強すぎなんだよ」


「聞きたいことがある。お前俺に何をした?」


フッと口を歪める奴。


「魔力を与えた。俺が与えたのはそれだけだ」


「魔力…を?」


「お前は魔力がない以外は一流…いや天下無双の素質があった。しかし魔力がないだけで最弱扱い。それを受けてヘラヘラしているお前に俺は耐えられなかった。故に力を与えた。お前を育て上げることにした。いつの日か俺のライバルとなってくれることを期待して」


「俺が魔法を使えたのはそれか」


「あぁ。早速その力を奮ってくれているようで俺は鼻が高い」


「迷惑なもんだな」


「さぁ、俺を葬れ。それでお前は英雄となる。━━━━誇れお前は最強の勇者だ」


刃を横に引き抜いた。


「…最弱で結構だ」


今更最強など面倒くさい。


「今の…魔王ですよね?」


「そうだろうな」


シエルの質問に答える。

あいつは俺の見た限り魔王に見えたが。


「ちょっとちょっとちょっと!ストーップ!」


手を振って俺を止めようとしているレア。


「何なんだ?」


「何なんだじゃなくて魔王弱過ぎない?!」


「魔王が弱いんじゃなくてエリアスが強すぎるんだと思うけどね」


苦笑するベティ。


「俺なんか最弱でいいんだがな」


ふと魔王の方を見ると手を翳した。


「じゃあな。お前のストーキングもここで終わりだ」


その遺体を灰にする。

天へと昇っていくそれらを見送ってから口を開いた。




「これで、世界に平和は訪れた、と。さて、戻るか」


「もういいの?」


「別にこの村に特別な思いがある訳じゃない。ただ、どうなってるか見に来ただけだ」


そうして歩きだそうとしたところ。


「エリアス!」


レアの叫び声が聞こえた時には遅かった。


「…?」


胸を突き刺す激しい痛み。


「何勝手に行こうとしてんだ?お前、許さねぇよ。もっと楽しもうぜ」


「何…で。お前…」


胸から刃が生えていた。


「俺の偽物を斬って本物だと思い込んでいるのか?傑作だな」


腰の当たりを蹴り飛ばされて前に倒れる俺の体。


「くそ…」


油断した。あれが…本物だと思い込んだのは確かに俺の落ち度か…。


「こ、来ないで…」


「お前は俺好みの女だな…どうだ?俺の妃になるつもりはないか?」


震える声で嫌がるレアにそれでも近付く魔王。


「…」


体が動かない。

ベティやシエルもその場で座り込んでしまっていた。


「あんな男より俺の方が強いしかっこいい。乗り換えキャンペーンを今なら実施中だが考えるつもりは無いか?」


「…お断りだから」


「振られてしまったか」


顔に手を当て高笑いを始める魔王。


「しかし、気の強い女は好きだ。無理矢理にでも妃にしてくれよう」


「…」


手から灼炎が落ちた。

握る力が入らない。

閉じゆく瞳。死にたくない…死にたくない…。せっかく繋いだ命、捨てたくなんてない…。

でも不思議な程に自分の体が冷たくなっていくのを感じられた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ