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目覚めたら女の子がいた。どうやら生きているらしい

「どこだ、ここ…?」


ここは…どこだろうか、体を起こす。


「あ、起きた!」


目の前で知らないやつが騒いでいるがそれより気になることがあった。


「…?」


死んで…いない?


「足は、あるのか…」


布団を捲って足があるのかを確認してみた。

探し物は無事に見つかった。


「何してるの?」


俺の周りに他に寝ている奴がいないか確認してみたがいない。


「俺に話しかけていたのか?」


「うん、そうだよ」


目の前には金髪の少女がいた。

金の髪に金の瞳を持った少女。肩で切り揃えられた金色の髪、前髪の間から時折覗く瞳は美しかった。


「それは失礼した。確認したいがここはあの世じゃないよな?」


「違うと思うよ?」


「理解した。ありがとう」


どうやら俺は死んでいないらしい。


「…胸の傷もなし…か。それよりも見ない顔だな」


確かに俺はあの時胸を貫かれたはずだと思ったんだが…?

俺が死んでいないと言うならばあれは夢だったのか?


「それ私が言いたいんだけど」


ジトっとした目で見てくる少女。


「…ごめん」


その後何故か少女は謝った。


「あの村の唯一の生き残りらしいし仕方ないよね…」


「唯一の…生き残り…?」


思わずその両肩を掴んでしまった。どういうことだ。俺が…俺なんかが唯一の生き残り…?

ならやっぱりあれは現実だったのか。


「ちょ、痛いって、離して…」


「悪かった…」


「私こそごめん。混乱してるだろうに…」


「ここは何処なんだ?」


「わたしの家。レイシェンの王都だよ。とは言っても端の方だけど」


「王都?」


「うん。1人の勇者がいたはずの村で魔王が暴れたって聞いて片付けるために行ったんだよ。そしたら君が倒れてた。見た感じ怪我はなさそうだったから運んだんだけど。目覚めて良かった」


胸を撫で下ろす彼女。


「どれくらい眠ってた?」


「3日くらいじゃないかな」


「そんなに寝てたのか…」


他のみんなは…。でもどうして俺は生きているんだろう…記憶が曖昧だ。何だかモヤがかかったみたいに。


「もしかして貴方が勇者?」


「いや、違うがどうして?」


「倒れた貴方の近くに勇者の剣が落ちてたから」


「…っ!!!」


「どうしたの?」


「…思い出した。全部…思い出した。あのクソ野郎…」


「落ち着いて…?落ち着いて」


「…あぁ、悪かった…」


そうして話している時だった。


「何があったのか話を聞きたいです」


ガチャりと扉が開き今度は長い金髪を下ろした女の子が入ってきた。


「あ、ユリヤ」


ユリヤというらしいその少女。


「先に紹介されましたが私はユリヤというものです」


「エリアス…」


名乗っておく。


「エリアス…。聞いたことがある気がしますね」


「最弱のエリアス。それでしょう。おまけに細かい事情は分かりませんけど俺専用のzランクまで作られる始末ですよ」


普通はFまでしかないのに上限突破させてくれてありがたい話だ。


「…そのすみません」


謝ってきたユリヤ。別に事実だから構わないのだが。


「でもどうしてそうやって呼ばれてるの?最弱って言っても魔法使えないとかそういう感じなの?でも魔法使えないなら沢山いるし珍しいことじゃないよね。あ、私レアって言うよ。よろしくね」


そう言って微笑む彼女。

横目で見ながらユリヤに視線を戻す。


「火、水、氷、雷、風、土、光、闇…俺は全ての属性に適性があるんですよ」


「全属性…?すごくない?何が最弱なの?」


レアの質問に答える。


「魔法が使えないんですよ。全属性の魔法が使えるはずなのに魔力がないせいで、マトモに魔法が使えない。だからこそ面白がって最弱と呼ばれたのだと思いますよ」


「そういうことなんだね」


苦笑するレア。


「適正はあっても使えないんじゃ意味ないよねぇ。でもそれで最弱ってのはおかしい気もするけど」


「そうですね。魔法が使えない人なんて沢山いるのに酷い話です」


まぁ俺でも変なやつだと思うし仕方ないことだ。


「別に気にしてないですよ」


そう言ってベットから足を下ろした。


「話がそれてしまったけどそろそろ話しましょうか」


「お願い出来ますか?」


「えぇ」


そうして俺は話し始めた。


「つまりいつも通り暮らしていたら魔王が攻め込んできた…と?」


頷く。


「一瞬のことだった。奴が少し魔法を使うと一瞬にして村は灰になった…当たり前のように笑って…皆を殺した…」


「よくそれで生き残れましたね」


「…何でなんでしょうね」


俺は…あの時死んだはずなのだが…心臓を潰されて死んだ…と思う。

普通に考えて蘇生したのだろうか?

それと奴がベラベラ話していた分は黙っておこう。俺もよく理解出来ていないし余計に混乱させるだろう。


「数日後にグランアーシェ討伐作戦があります」


「…奴を…?」


「えぇ。まだ近くにいるという報告があるんです」


俺を見て続けるユリヤ。


「何をしているのかは分かりませんが旧王城付近に出没しているという情報があります。以前の襲撃で力を消費したのか攻撃してくる様子はないとのことでした」


旧王城…たしかこの近くにある捨てられた城か。

以前…というか昔はそこを使っていたらしいが何らかの事情で今ここに居を移したとの話だ。


「作戦に参加しませんか?」


「…俺には…力がない」


右手で左腕を強く握った。


「参加したいのは山々だ。でも…足を引っ張るだけだろう。それに怖いんだよ。あんだけ力を見せられて」


「分かりました。前日までは大丈夫ですので気が変わったら教えてください。レア」


ユリヤはその瞳をレアに向ける。


「エリアスの事は任せましたよ」


「任せて」


それを聞くと微笑んで部屋を出ていくユリヤ。


「…世話になったな」


痛む体を引きずって俺もこの部屋を出ようとした。


「何してるの?傷治ったの?任されたばっかりなんだけど?!」


しかし腕を掴まれた。


「…俺があのクソ野郎を止めないといけない」


今度は叩き潰す。あのうざいゴミくず野郎を俺の手で叩き潰す。


「最弱が最強に勝てるわけないよ」


しかしそれが現実だった。


「…」


それを言われたらおしまいだ。


「魔王は文句なしに最強の存在。少なくとも今のエリアスで勝てるなんて思わない方がいいよ」


「…」


「無駄死にしたいの?」


「…」


顔を逸らした。

その時腹の虫が鳴いた。


「何日も食べてないもんね」


クスッと笑うとちょっと待っててと言い残して部屋を出ていく彼女。

仕方ないか。帰ってくるのを待とう。


ブクマありがとうございます。

これからも読んでくださるとうれしいです。

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