防衛作戦に向けての最終確認
そのままユリヤに案内された俺たちは普段は来ない村に来ていた。王都の外、砦ともいえる場所だ。
「ここが作戦本部です」
ユリヤが説明してくれる。
彼女に案内された作戦本部と呼ばれた酒場の中には30人程度の人間がいた。予め聞いていた10よりは多い事実に安心するが…。
「まだ人が来るって聞いてはいたがお前かよ。最弱」
その中には俺を笑うような目で見てくるパリスの姿があった。
相変わらず不快なその視線。
「パリス…」
そんなパリスを逆に睨むような目で見るベティ。
何にも言わない俺の代わりに睨んでくれているのだろう。
「どうしたんだよベティ。ようやくそいつのパーティ抜ける気になったか?」
「そんなことない。私はエリアスについて行くから」
「その選択後悔するなよ」
「絶対しないから」
ベティはかつての仲間に怯むことなくまっすぐにその目を見つめる。
それを見て声に出して笑い始めるパリス達。
「その威勢…どこまでもつか見物だな。今ならなかったことにしてやろうと思っていたがなしだ」
「…」
ベティはそれ以上言葉を発することは無かった。
そうして席に着いた俺達。
「えぇ…と、今から作戦について説明します」
しばらく待っているとユリヤが全員に聞こえる位置で作戦について話し始めた。
「先ず今回の作戦ですが向かってくるモンスター達を砦で待ち構えそこで一気に叩くという算段です」
「この人数でそれが出来るのかよ。3000、だろ?しかも最弱込みで?」
パリスが皮肉げな口調で質問する。
それを聞いて笑い始めるここに集まった人間たち。どうやら普通の人間にはこの作戦は思わずそんな反応を示したくなるくらい無謀なものに見えるらしい。
「可能です」
しかしユリヤは毅然とした態度でそう断言する。
「何を馬鹿な。とち狂ったか?3000…それがどんな数かあんたも知ってんだろ?」
「では、貴方は勝率の低いこの依頼を何故受けたのですか?」
「…報酬がいいからだよ。それにこの国が終われば俺達も苦しくなる。適当なところで逃げる。それで終わりだ。ここに集まった奴らみんなそうだろう」
「なるほど。でも終わりになんてさせませんよ」
「…なら期待したいがな」
俺を見るパリス。
「あんな最弱にまで頼らなくちゃならない程追い込まれた今の状態で終わりにならなければあんたのお陰だよ」
「彼はもう最弱じゃない。あなたも知ってるでしょ」
しかしその言葉にベティがそう言い返していた。
「灼炎のお陰だろ。それがなければ最弱なことに変わりは無いはずだ。誰が持とうが一定以上の力を与える神刀。それを持っていればドラゴンを倒すことも出来るだろう」
俺の刀を見るパリス。
「そうやってエリアスの本当の力を見ないんだね」
「本当の力?こいつは最弱だろ。そこから多少上がれたのは灼炎のお陰。俺の考えは間違っているか?お前も知っているだろ?神刀と呼ばれるほどの武器は使用者本人を強化すること。そいつの真の力はしょせん最弱だ」
そう言って笑う。これ以上ぐだぐだ続けるのも無駄だ。
「そうだな。俺は最弱だ。これで終わりなこの話は」
ユリヤに目を向けて続きを促す。
それを受けて頷くとまた口を開き始めるユリヤ。
「先ずですが私とエリアスのパーティが前線に立ちます」
「馬鹿な…」
どよめく酒場内。
「そいつは今自分で最弱って認めただろ!いくら神刀を持っているとは言っても魔法の能力なんて微塵もないはずだろ?!そんな奴と前線に立つって言ってんのか?!」
またパリスが勢いよくそう言葉を並び立てていた。
しかし今度は本当に焦っているようなそんな風に見えた。
「それはパリスがそう思っているだけでしょう?」
「いやそいつだけじゃない」
ユリヤの言葉を聞いて一人の男が立ち上がった。
「俺もそいつが活躍できるとは思えない。むしろ足を引っ張るだけだろう。何故ならそいつは最弱のエリアス。いくら神刀とは言え前線で活躍出来るほどの力をそいつに与えんだろう」
「貴方の言い分は理解できます。しかしこれは決定事項です」
「イカれてんのかあんた」
「イカれてなどいませんよ」
黙って男を見つめるユリヤ。屈強な男を相手に一歩も引かない。
「先に俺たちを前線に出してくれないか?正直その男では手に余るだろう。俺達ならば力不足ではないと思うが」
折れなさそうな彼女を見てか妥協案を提案する男。
その男の近くにはパーティメンバーがいた。確かに強そうには見える。
「そうですね分かりました」
少し考えていたがユリヤも承諾したらしい。
「なら、あなた達と私、それからエリアスのパーティで前線に挑みます。残りの方に関しては後で私から詳細を伝えます」
そうして俺達はユリヤの言葉で同じポジション同士でとりあえず固まることになった。
そこにはさっきの男達もいる。
「最弱のエリアス、お前の名前は知っている」
さっき立ち居がった男がそう声をかけてきた。
「そりゃ、どうも」
「聞いたところによると魔法を一切使えないという話だが?」
確認するような目で俺を見てくる。
「いや、最近使えるようになった」
「最弱ではなくなった、というのはそういうことか?しかしお前は自身で最弱と名乗った。どういうことだ?」
「言っても無駄だから最弱だって名乗ってんだよ。昨日まで最弱だった奴が最強になったと口にしたところで信じないだろう」
「それもそうだが…」
何か言いたそうな男。俺からこれ以上言えることなんてないが。
「その辺の判断はあんたに任せるしかないし俺から言えることはもうない、というより言っても無駄だ。だが出来ることはある。作戦であんたが俺の働きを見れば嫌でも俺がどういう存在なのかを理解できるだろう」
一つだけ伝えておくことにした。
「そういうことですね。見て驚かないでくださいね。今エリアスはこの世界で最強を狙えるレベルですから」
援護してくれるユリヤだが。俺としては最強かどうとかは特に興味がない話だ。
「なら見させてもらうとしよう。俺はジェクス。よろしくな最弱」
そう言って俺に手を差し伸ばしてくるジェクス。
「あぁ、よろしくな」
そうして俺たちは手を組むことになった。




