シエルは小動物みたいなところが可愛い
宣言通り俺は魔王を倒してレア達に追いついた。
「あ、帰ってきた」
「何とかな」
俺が王都の門から中に入るとすぐそこにレア達が待ってくれていた。
「大丈夫ですか?」
シエルが心配そうに聞いてくるが今のところは何ともない。
復活した時に傷は治っているみたいだし。目だった傷はない。
「心配したから」
涙を浮かべてベティがそう口にする。
「エリアスのいる方からすごい爆発音が聞こえて…しかも爆風もここまで届いてたんだよ…」
ということは全て抑えられなかったか。守ることの方が難しいとは思うが…やはりそうなのかもしれない。それにあいつは自滅覚悟であの魔法を使ってきたし。
「あれでよく無事だったよね」
「何とかな」
「何とかなって…帰ってこなかったらあの世でも追いかけ回してたから」
「怖いこと言うなよな」
レアとこんな会話をしていると帰ってきたんだなってそう実感する。
「でも…今回は本当に心配したから…」
3人が俺につめよってきた。
「…心配させて悪かったな。にしてもベティがそこまで心配してくれるとは思わなかったな」
「…ごめん。リーダーの手前だったから…」
あの時のこと、前のリーダーの事を思い出しているのか。
「分かってるよ。気にするなよ」
「ふぁー疲れたー」
その時だった。聞き覚えのある声が門の方から聞こえた。
「お、最弱じゃねぇか」
「パリスか」
あの時の男が俺に気付いたようだ。
しかし俺に目を向けたのも一瞬。
「ベティそろそろ帰ってくるつもりはないか?」
「お断り。私はもうエリアスについて行くって決めたから」
「…あのよ、その男の何がいいんだよ?確かに最弱ではないのかもしれない。でもよ。最弱の称号は拭えてないんだぞ?」
「パリスみたいに見捨てないとこかな」
そう言って俺の腕に抱きついてくるベティ。
「ま、そういう訳みたいだ。諦めてくれ」
「…そうかよ。行こうぜ」
舌打ちして俺を一瞥して去っていくパリス達。
それを見送ってから口を開いた。
「俺達も行くか」
この後行くべき場所があるのだ。俺達もそこに向かうことにした。
「…こんなのどうだろうか…」
街に戻ってきた俺達は適当な武具屋に入るとそこで色々と物色を始めた。
そうして見つけた1本の刀。
「かっこいいしいいねそれ」
隣にいるレアがそう言ってくれるようなものだった。
持ってきた感触としては長い割に軽いと感じた。
「…だが俺にはやはり必要のないものかもな」
手に持った武器を元に戻す。
灼炎を無くした時用に買っておこうかと思ったがこんなもの無くさないだろう。
「買わないんですか?」
「辞めておくことにする。もう持ってるし無くすことなんてないだろうし」
シエルの質問に答える。
「なら、アクセサリーとかどうですか?」
「アクセサリー?」
「武器や防具程ではないですが元になった素材に応じて効果を得られるものなんです微量ですが」
「いいかもしれないな、それ」
「じゃあ見に行こうよ」
ベティが俺の腕を掴んできた。
「だってよ隊長さん」
「エリアスの好きにするといいよ。今日はエリアスのための買い物だしね」
頷いてくれたのを見て店を出るとそれらしき店に入る。
家に戻った俺たちはリビングで机を囲んでいた。
「欲しいものなかったな」
「それだけ強かったら欲しいアクセサリーもないかもね」
「そうですね。私も浅はかでした」
「だねー。羨ましいくらいエリアスは強いもんね」
俺の言葉に3人がそれぞれ反応を示した。
「そういえば今まで魔法使えなかったって聞いたけどどうしてすんなり使えるようになったの?」
「それ、私も気になってた。特に私を治してくれたあんな魔法…ぶっつけ本番の初回で使える人なんてエリアスくらいじゃないの?」
レアの言葉にそう続いたベティ。
「…恥ずかしい話だが俺は昔ヒーローになりたかったんだよ。勇者にな」
「そうだったんですか?」
聞いてくるシエル。
「あぁ、俺は…誰にも負けないヒーローになりたかった。どんな不条理だってぶっ飛ばして駆け抜ける正義のヒーローにな。笑ってくれ…似合わないって」
苦笑する。
でも俺の言葉を聞いて首を横に振るレアだった。
「笑わないよ。夢なんてその人の自由じゃん」
その言葉を聞いて少しうれしくなった。俺も夢を見ていいのだろうか、と。
「そうか。ありがとう」
でも、夢を見るのは簡単でも実現はできなかった。俺はそれになれなかった。だからこそ苦笑する。
「でも、それって何でヒーローになりたいって思ったの?」
ベティの質問に答えるために彼女の方を向いた。
「子供の頃に女の子を泣かしたらぶん殴られてな。誰に殴られたかは覚えてないけどその時に言われたんだ『お前の手は誰かを泣かすためにあるんじゃない。誰かを笑顔にするために付いてんだろ』って。子供の頃の記憶だけど今でも覚えている。それで俺は正義のヒーローになりたいってそう思った」
少し顔を下に向けて皮肉げに笑う。今の俺は過去の自分が望んだような人間になれているだろうか。いや、きっとなれてなんてない。
「それがエリアスの夢の始まりだったんですか?」
「もう諦めたがね。俺はヒーローにはなれない」
「ううん。エリアスは私にとってのヒーローだよ」
しかし俺の言葉を否定してそう言ってくれるベティ。
「…ありがとうな。でももう辞めることにする」
「そんなこと言わないでよ、また目指してみない?」
「似合わないな。他のやつにでも任せよう。俺はしょせん最弱だ。まだその気が抜けない。だから魔王の前に立つつもりもないんだよ」
「でも、その夢と魔法と、どう関係があるんですか?」
シエルの質問。それを今から話そうとしていたところだ。
「笑ってくれて構わないが俺は昔妄想だけは得意だったんだよ。やっぱり全属性に適正があるからこそ歯がゆかった。魔法を使えないのを。でも現実は残酷でみんな俺を馬鹿にしてきた。最弱の約立たずってな。それが悔しくて俺は必死に妄想してきた。俺が戦場の真ん中に立って強力な魔法を使って敵を殲滅して褒められる妄想を」
そんな妄想を何度も何度も繰り返していたからだろうな。
俺がこうして魔法を使えたのは。
「俺が今まで使ってきた魔法はその時に考えていたような身の丈を知らないものばかりだ。結果こうして実際に使えるようになった時に役立つというのは嬉しい話だがな」
少し嬉しくなる。
「そういうことだったんだね。エリアスが強力な魔法を使える理由分かったよ」
微笑むレア。分かってもらえたようで何よりだ。
「まぁ、そんなところだ」
口にして全員の顔を見る。
「今日はこれから何か用事でもあるのか?」
「特にないかなぁ」
「私も」
「ないですよ」
みんなないようだ。ならここで話しておこうか。
「明日は村へ行きたいんだ」
「あんまり経ってないけどいいの?」
「構わない」
レアの質問に答える。
「その…本当に大丈夫なんですか?まだ大して時間が経っていないと思いますが」
「問題ない。そもそも俺はあの村で嫌われていた。大切な奴がいた訳でもないし大切なものがあった訳でもない」
「ならどうして?」
ベティが不思議そうな顔で聞いてくる。
「俺の育った村だ。どのような形であれどうなってしまったのかは目に焼き付けておきたい。ただ、それだけだ。それに…あの後何が起きたのか分かるかもしれないし。それに実際現場に戻ると何か思い出すかもしれない」
あそこで何が起きたのかをきっちりと思い出せるかもしれない。
「そうだよね。とりあえず確認しておきたいよね」
「そういうことだ。今日は眠いんで先に寝させてもらうよ」
そう口にして俺は一人部屋に戻るころにした。
「まだ起きてたのか」
中々眠れずに外の空気を吸おうと出たところシエルに出会った。
「エリアスですか」
「あぁ。中々眠れなくてな」
答えてベンチに腰掛けた。それからしばらくしてシエルが話しかけてきた。
「ほんとに魔王の討伐はしないんですか?」
「俺から挑むつもりは今のところない。何で俺がわざわざ行かなくちゃならないんだ。それに手柄欲しがってるやつは山ほどいるそいつらにやらせればいい」
「私はエリアスにして欲しいです。今は力があるのに…エリアスが見下されてるのを見るのは心苦しいものがありますから」
「…」
「1人が嫌なら私達もついて行きますから」
「そうか」
そっけなく答えたからか俺の前に来て人差し指を立てた彼女。
「ちょっと、何でそんな態度なんですか?」
「態度悪い事だけが取り柄でな」
珍しくジトっとした目で見てくるシエルに皮肉げに口元を歪めて返す。
「そんなんじゃモテませんよ?」
「結構結構。俺の心配するのは良いがシエルはどうなんだ」
「それは…」
「非モテ同士仲良くしましょうよ」
そう言ってみたが、その細い腕を掴むと少し強引にこちらを見させる。
「え…?」
「昨日の返事聞けてなかったな?俺を愛してくれるのかどうかって話」
立ち上がって顔を赤くするシエルを壁際まで連れていく。
「俺がモテなくて心配するならシエルが俺を愛してくれたらそれでいいんだろう?」
「ふえぇ?」
顔を赤くしながら今にも泣きだしそうな雰囲気があるシエル。これが加虐心というものだろうか。
少し違うか?でももう少し困らせたくなった。
「だ、ダメですよ。中には…レア達がいますよ…」
「声抑えればいいだろ?もっとその声を聞かせてくれ…」
「だ、だめです…よ…」
「そうか。ならやめよう」
「え?」
茹でられたタコのように顔を赤くして俺を見てくるシエル。
「辞めて欲しいんだろ?だから辞めた。それとももっとして欲しかった?」
「そ、それは…」
悩むシエル。
「明日は早いしな。ちゃんと寝ておくんだぞ」
そう言い残して俺も部屋に戻ることにした。
棒立ちするシエルを最後に視界に入れてから中に戻ることにした。
タイトル変更しました。
これからも読んでいただけると嬉しいです。




