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どうやら俺は死なないらしい

話をまとめた俺たちは雑魚を狩るために草原へと来ていた。


「あんたも来るんだな」


今日はユリヤが同行していた。てっきり俺の用件を伝えたら帰るのだと思っていたから意外だ。


「今日は休みでして。以前からレアとは面識があって時間があればこうして手伝ったりはしていましたよ」


初日に彼女とレアが一緒にいたのはそういうことか。


「なるほどな」


「でも、エリアスが入ってくれたなら私の代わりに動いてくれそうですね」


微笑むユリヤ。さっきの話は引っ張っていないみたいだ。切り替えは早い方なのか。


「ま、出来るだけ頑張らせてもらうつもりだ」


「期待してますよ」


「重役というわけか」


「そうですね。レア達は強くないのでフォローしてあげて下さい」


「いや、俺がフォローされる側だよ」


「過度な謙遜は皮肉に聞こえますよ?」


「そんなつもりはない」


しかし俺もこうやって動くのは初めてのことだし大目に見てほしいところではあるが。


「分かってますよ」


軽く笑うユリヤ。


「ベティ!そっち行ったよ!」


「分かった!」


俺達2人が少し離れたところで見ているとレア達はきちんと連携して1匹のゴブリンを仕留めようとしていた。


「一生城で寝てくれていたらいいのになあの魔王」


「本当にそうですよね。人間の村や街に降りてくると毎回余計なことばかりして面倒事を起こしますし」


レア達を見ていると最初の敵は倒したようで他のモンスターを追いかけ回していた。


「そういえば魔王はどうしてエリアスを選んだんでしょうね」


「さぁな。ベラベラ話されて何を話していたのか何も覚えていない」


「そんなに話すんですねあの魔王」


驚いたように口を開くユリヤ。


「1度口開けば中々口閉じないからうざいな。あれは」


「うざい…ですか」


ふふと笑うユリヤ。俺にとっては笑い事ではないんだがな。


「私もウザイとか思われていますか?」


「そんな訳ないだろ。あいつは特別だ。話し方もウザければ言葉もうざいし声もウザイ。真似しようとして出来るようなレベルにないぞあのウザさは」


「ちょっと真似してもらえたりとかって出来ますか?」


考えてからどんな内容を話していたか思い出しながら口にする。


「気に入った。初めて見た時から俺はその美しさに惹かれていた。あぁ俺は神に感謝しよう。この美しき少女と出会えたことを。巡り合わせてくれたことを」


そう言ってユリヤの頬に手を伸ばす。

驚いているようだがまだまだあいつのウザさには届かないだろう。


「あぁ…その美しさは俺の目を狂わせる。どうか俺の恋人になって欲しい。その美しさを持って俺の隣に立って欲しい。何年でも何十年でも例え永遠と思えるほどの時間の中でも君に、俺は俺の横にたっていてほしい。嗚呼…そうだ。その美しさこそ、俺が求めていた全て。嗚呼…美しい。美しい美しすぎる。目が焼けてしまいそうだ。自分の目を抉りとってそこに君の残した汗や残り香を封じこんで永遠に堪能していたいように思える。嗚呼俺を何処まで君はおかしくさせるつもりだ。そして俺は信じている。君の美しさを君の強さを君の心を。君はどれだけの時間が立とうとその鮮やかさを失わずに俺の横に立ち続けてくれると。俺は願っている。君にそうあって欲しいと。つまり、何が言いたいかと言うと俺の恋人として君には横にたってほしい。誰でもない俺自身がそう望んでいるのだ。そしてゆめゆめ忘れないでくれ。俺は君だけを愛し君だけを見つめよう。君が悪に落ちようと俺は君の味方だし君だけのヒーローとなる。あぁ、そうだ。君のそばには俺がいつもいる。愛していよう。そして俺を愛してくれ」


覚えている限りのウザさを込めて口にしてみた。


「私もしかして今愛の告白されたんですか?」


顔を赤らめるユリヤ。


「いや、よりうざく感じられるようにそういう内容にしてみただけだ」


「お、驚きました」


少し残念そうな顔をするユリヤ。


「でも、人にそうやって言われるのって嘘でも嬉しいものなんですね」


「そうなのか?」


まさかそう言われるとは思わなかった。


「うざくなかったか?」


「私は特には感じなかったですよ」


頭の後ろをかく。

俺だけ変なこと口走った変な奴みたいになってしまったな。


「…さっきの言葉は忘れてくれ」


照れ隠しで立ち上がる。

流石に何も感じずに口に出せるセリフではなかった。

ウザイと言われること前提で口にしたのだがそう思われなくて恥ずかしい。


「でも魔王は今のセリフをウザったらしく言うんですか?」


「そうだな。あいつなら俺よりうざく喋れるだろう」


「それはエリアスのウザさレベルが低いからかもしれませんね」


「そのレベルは一生低くて構わないものだな」


「たしかに」


クスッと笑うユリヤ。


「そのままがいいですねエリアスは」


「そうだろうな。誰もうざくなんてなりたくないわけだし」


あんなウザイと感じる奴に誰だってなりたくないだろう。


「でもそんなにウザイと感じさせる人ならちょっと会ってみたくもありますけどね」


「…辞めとけ。ただのクソ野郎だあいつは。誰かを不幸にすることしか能のないクソ野郎」


「散々な評価なんですね」


目を丸くするユリヤ。そんなに意外な言葉だったのだろうか。


「あいつは文字通りのクソだ。クズでウザイ」


「そんなになんですか?」


「ま、会って話してみれば分かる。あいつの全ては何もかもが人を不快にさせる。神様はあいつを嫌ってるんだろうな」


思わずそう思うレベルでウザイのだあいつは。

返しながらレア達に目を戻すと丁度こちらに戻ってきているところだった。


「2人で何の話してるの?」


「当代の魔王殿は大変うざいでございますという話だ」


「そうなの?」


「そうですよ。うざいみたいですね」


ユリヤもそう答えながら立ち上がった。


「で、レア達の方はどうなんだ?」


「依頼は終わったよ。ほら見て」


皮袋を俺に見せてくる彼女。中を覗くと確かに依頼された分量だろう素材が入っていた。


「早かったな」


「だって敵は雑魚ばっかだったし」


「なるほどな。もう少し時間がかかると思っていたが早かったな」


「それは私たちが弱いってこと?」


「そうとは言っていない。俺は最弱だから適正な時間が分からないだけだ。予想してたより早かったな。それだけ」


「なんてね…冗談だよ。でももう少し必死に弁明して欲しかったかも」


クスッと笑うレア。


「ドSだな隊長は」


「誰がドSよ」


ジトっと見てくる。


「エリアス、レアは直ぐにすねるのでそういうこと言うのは控えてくださいね」


「ユリヤだって直ぐ拗ねるじゃん」


頬を膨らませて抗議する彼女。


「私は拗ねませんから」


2人で言い合いを始める。

随分仲がいいらしいな。


「何でもいいが依頼も終わったなら街に戻ろうぜ」


皆に声をかけて草原を後に擦ろことにしたその時だった。一陣の鋭い風が草原を駆け抜けた。


「待てよ」


その背中を駆け巡る怖気。


「誰が失せていいと言った…エリアス?」


目の前には…魔王がいた。魔王がそこに当たり前のように立っていた。

風に靡く髪色は黒。

前髪の間から除く目も黒いものだった。


「お前らは逃げろ」


灼炎を抜きながらそう促した。


「エリアスは?」


「いいから。離れてくれ…レア達も巻き込んでしまう。俺なら大丈夫だ。あいつを寝かせて追いつく」


「優しき勇者よ!」


叫びながら白銀の刃を振るってきた魔王。その一撃を何とか防ぐ。


「…待ってるから」


そう言って遠ざかるレア達の姿を視界の端で捉えた。


「氷柱よ…」


奴の刃を受けながら魔法を使う。

突如地面から現れた何本もの氷の柱。それが奴に回避を強要させる。

しかし


「甘い」


奴を倒すことは出来なかった。でも


「そこだ」


「…」


奴を囲うように柱を設置できた。

その真ん中…奴の立つ位置に雷属性の魔法を発動させた。


「神の裁き…だと?」


これには奴も驚きを隠せきれなかったらしい。

雷属性最強魔法の神の裁き。

一定範囲内に高威力の雷撃をいくつも降り注がせる攻撃魔法。


「…ちっ…」


しかしそれをもってしても奴を仕留めることは叶わなかった。流石…魔王といったところか。

しかしダメージは通ったようでその体や装備には傷が見られた。


「お前に…与えすぎたかも知れぬな…魔法の適性自体はあるというのは知っていたがここまでとはな…」


「後悔は地獄でしろ」


前に差し出した右手を下に下ろし更に雷の雨を降らせる。

しかしそれを尽く避ける魔王。


「舐められたものだな」


一瞬にして近付いてきた魔王。

その掌打を後方に飛んで避ける。


「かかったな!」


しかし、それは悪手だったらしく足を凍らされた。


「くそ…」


剥がれない…


「もう1つ見せてみよ。まだ隠し玉があるのだろう?」


そう言って俺の胸に白銀の刃を突き刺してきた。


「ぐぅぅ…」


身体が焼けるように痛い。


「この程度で終わる訳はないのだろう?」


刃を引き抜かれて支えを失い地に倒れる俺の体。


「ったりめぇだ…ボケ…」


「よくぞ吠えた。それでこそ勇者に相応しい」


ふははははと天に届くくらいの哄笑を始める魔王グランアーシェ。

血を吐き出しながら草を掴んで起き上がろうとした。


「ならん。誰が許した」


俺の肩に足を置いてそれを阻止する魔王。

そんな奴の口の端からも血が漏れていた。


「勇者には最大限の敬意を」


そう言って俺に手のひらを向ける魔王。

その手に…極小の地獄が生成され始めた。

あれを完成させては不味い。それだけは嫌にはっきりと理解出来た。


「…やめろ…やめろ!お前正気か?!」


今も尚エネルギー全てが奴の手に集っている。


「俺はお前を信じている」


こいつは全ての魔力をこれに回している。勿論防御も全て捨てて余すことなくこの魔法に使用している。

そして…それが招く結末など考えなくてもわかる。

こいつ…命を捨てる気か…?ここを巻き込み街1つで済めばいい…そんな量の魔力がここに集まっていた。下手をすれば…世界すら消失する。


「爆ぜよ━━━━インフェルノ」


「やめろぉぉぉぉ!!!!」


俺も何とか直前に魔法を展開した。こいつと俺を包み込む小さな結界。

こんなもの流れ出せば…世界が終わる…。


「俺の矛とお前の盾どちらが強いか勝負といこうじゃないか」


そして今…奴の手からそれが放たれた。

刹那俺たちの体を襲う圧倒的な衝撃波。

生きていられるわけがなかった。




「づぅ…」


頭を抑えながら立ち上がる。


「くくく、ふはははは…」


目の前では同じように立ち上がった魔王グランアーシェの姿。


「勇者に必要なのは無限に立ち上がる気力と。それからそのための命。お前はそれを持っているようだな。おめでとうお前は不死の英雄だ」


「…」


死にたくないと願った。その結果がこれか。不死。決して死ぬことのない体。

俺は…初めてこいつに出会った時もそう思った。

そしてその時から俺はこの不死の肉体になっていたのだろう。どうしても死ぬことのない体。

今全てを理解した。俺は最初こいつに殺されたが生き返ったのだと。


「誇るがいい。俺の全力のインフェルノを防いだこと」


辺りの草原を見回す。確かに俺たち以外の被害らしい被害は出ていなかった。


「…お前は放っておけない」


灼炎を抜き出す。


「年甲斐もなくはしゃいでしまったな。では、また今度会おう勇者」


「ふざけんなよ」


「ふざけて等いない。それに俺の本体はここにない。今この俺を切っても無駄だぞ?」


「…どういうことだ」


「俺があれを受けて尚生きていることについて考えれば分かるだろ?俺が本物じゃないから、だ。お前は不死でも俺はそうではない」


「…試してみなくては分からないだろう」


刀をやつに向けた。

そして、そのまま走り振り上げたそれを振り下ろすと鮮血を吹き出して倒れる奴の体。


「…出任せかよ…」


あれで魔力は尽きたのだろう。倒すのは実に呆気なかった。


「…燃えろ」


それを燃やしてから俺はレア達の後を追うことにした。


次タイトル変更予定です

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