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最弱は最強の存在を倒しました

目当てのものを入手した俺たちは地上へと戻ってきた。


「エリアスがいると楽だね」


「そうか?」


「だって私達何もしてないし…それだけエリアスが強いから私たち何にもやることないもん」


少しもじもじしながらそう口にするレア。


「そうですよ。私達何もしてないです…」


シエルも顔を俯けた。


「悪いな…パーティなんて入ったことないからなんでも1人でやって…」


「どんなタネがあるのか気になるところだが、教えてくれないんだろう?最弱。おっともう最弱ではないか」


ふっと笑うパリス。


「呼んでくれても構わないがな。もう最弱呼びの方が違和感はないし」


握り締めた手を開いてみた。それにしてもこんな力を手に入れられるなんて思わなかったな。


「そういえば…お前が言っていた男はどこ行ったんだろうな」


「分からねぇ。俺らが奥へ向かってた時に追い越すように行ったんだがどこにもいなかったな。気味の悪い奴だ」


パリスがそう言ったときだった。


「俺を探しているのか?」


それは地の底から鳴り響くような声だった。

聞こえた方…ダンジョンの入口を振り返り見た。

そこにはこっちに向かって地の底から這い上がって来る長髪の男がいた。


「一本目の神刀の入手おめでとう。そう言っておこうか」


「な、何だよこいつ…」


パリス達は思わず後ずさっていた。

仕方ない反応だろう。


「魔王ってのは随分暇みたいだな」


「いや、暇ではない。勇者の育成に日々忙しい」


そう口にしているが忙しそうには見えない。

それから奴が目を閉じた瞬間。

遺跡エリアが燃えた。

全体が燃え始めた。


「…」


それを上から土砂降りの雨を降らすことで鎮火する。


「随分様になってきたようだな。我が親友よ。魔法の使い方には慣れたか?」


「お蔭さまでな」


「思ったより強くなってくれていて嬉しい。いや、これは少しばかり強くなりすぎか…」


ごちゃごちゃ口にしながらその手に持っていた何かを下に落としてから俺の横を通り過ぎようとした男。


「これは俺からのプレゼントだ。遊んでくれ。俺はお前とは遊んでやれないが代わりくらいにはなるだろうさ」


そう口にして手を振って去っていく魔王だが、しばらく進んだところで霧のように消えていった。


「グルゥ…」


代わりに奴が今落としたそれは息を吹き返したように動き始めた。


「…一旦下がろう」


レア達に声をかけて下がる。


「グルゥ…ガルゥ!」


雄叫びを上げるそれは立ち上がると急速に成長を始めた。

さっきまで子供だったはずのドラゴンは成長し成体となった。

口から黒い火が零れている。


「馬鹿な…死者の蘇生だと…?」


「あれ、さっき倒したドラゴンだよね」


「そのようだな」


パリスとベティの質問に答える。


「エリアス、あれは流石に危険すぎます。退きませんか?」


シエルが提案してきたがそれには乗れない。


「悪いが、それはなしだ」


「どうしてですか?」


「あんなもの放っておけばどうなる」


間違いなく暴れそうだが。

さっきまであった大人しそうな雰囲気はどこかへ消え去っていた。


「馬鹿だろお前…本当に死ぬぞあれは。素直にシド様に連絡すべきだ」


パリスもそう言ってくるが知らない。

灼炎を抜く。

向こうも口を開けてエネルギーを溜めていた。

あの口に溜めた炎を俺たちに向かって吐くつもりだろう。その結果どうなるかは想像したくない


「そもそもこんなところであんな奴に負けてたら俺は頂点に手が出せない」


「頂点ってなんの事だよ…あいつも頂点の一角だろうが一晩で村1つ破壊できるんだぞドラゴンってのは!」


「いいから黙ってろ」


刀の切っ先を向ける。


『我が声に答えろ』


囁きかけると刀が光を放つ。

最初から刀身をまとっていた炎はその勢いを更に強めた。


「馬鹿な…最弱を…神刀が認めただと…」


パリスが後ずさりながら呟いた。


「破邪の光…間違いない。灼炎が…あの灼炎がエリアスを…認めた…」


認めるとか何とかそういう話はよく分からない。

ベティ達も後ずさっていた。

確かにこの灼炎から溢れ出る炎は熱くないとはいえそうさせたくなるものを感じる。


「ゴァァァ!!!!!!」


ドラゴンが吐き出したその炎の一撃。


「ひっ!」


シエルは頭を抱えて蹲っていた。


『灰となれ』


俺はただその場で灼炎を一振りする。


「グルゥ!!!!!!!」


瞬間刀から放たれた巨大な炎がドラゴンの放ったそれすら燃やしながら突き進み奴の体を灰と化す。


「思ったより弱かったな」


既に体のないドラゴンを確認してから刀を鞘に戻す。


「は?…」


後ろを振り返るとパリスが尻餅をついて口を開けていた。


「お前…あれをやったのか?」


「見ていなかったのか?俺が消し飛ばしたところを」


首を横に振りながら口にする。なぜ見ていないのだ。俺が消し飛ばすところを。

せっかく最弱が最強の一角を消し飛ばしたというのに。


「いや…ありえない…ドラゴンはもっと耐久値が…」


「これが現実だ。ペラペラ何を言っても俺が消し飛ばした。それは変わらない」


「流石エリアスだよね」


「流石です」


レアとシエルがそう口にしながら近寄ってきた。


「ほんと…これで何で最弱って呼ばれてたのか分からない」


少し笑いながらベティも俺の近くへ寄ってきた。


「パリス、いい加減認めた方がいいよ。エリアスはもう最弱じゃないこと」


「いや…それは出来ねぇ…それを認めたら俺が最弱になっちまう」


よく分からない理論だなそれは。


「俺は認めねぇぞ最弱!どうせ何か仕組んでたんだろ!あの男と仲良さそうだったもんな」


魔王のことか。あれはあいつが勝手に俺を親友だと思い込んでいるだけなんだがな。


「おい、行くぞお前ら」


メンバーに声をかけて逃げる様にここを去っていくパリス。

それを見てから仲間に目をやるとみんな苦笑いしていた。


「そろそろ戻るか。俺も目当てのものは手に入れたことだし」


灼炎を見つめる。

これがあれば…あいつに手が届くかもしれない。最弱と呼ばれる俺でも手が届くだろう。


「でも、凄いよねエリアス」


ベティが俺の手にある刀を覗き込んでくる。


「灼炎に認められるなんて」


「その認められるってのはどういう意味なんだ?」


「え?」


「はい?」


「何言ってるの?」


ベティ達が一斉に目を見開いた。


「だからその…認められる…ってのはどういうことなんだ?」


「馬鹿?」


「馬鹿とはなんだ」


レアの辛辣な言葉にそう返す。

しかし今回ばかりはシエルも呆れたような顔をしていた。

そして彼女が説明してくれるのか右手の人差し指を立てた。


「いいですか、エリアス」


「うん」


「灼炎…とか神刀と呼ばれるレベルの業物は神刀と呼ばれているだけあって誰が握っても確かにかなり強いです」


「そうなのか?」


「そうなのか?って知らずに取りに来たの?!」


詰め寄ってくるレア。


「知らなかった…名前がかっこよかったから欲しくなっただけだ…」


「はぁぁぁぁぁ????名前がかっこよかっただけ???」


ベティも変な声を上げている。何だ…俺がおかしいのか?


「だって…名前が…」


「名前がじゃないでしょ…」


レアも呆れたような顔で首を横に降っている。


「くすっ…でもエリアス面白いよね」


笑うベティだった。


「何が?」


「名前がかっこいいからって理由で神刀取りに来てしかも認められるなんて…普通は有り得ない話だしちょっと羨ましいな」


羨望の眼差しで俺を見るベティ。


「そうですよ。とても名誉な事なんですよ。神刀に認められるって」


頬をふくらませてそう言うシエル。

どうやら俺の感覚がおかしいことは分かった。


「続き話しますね。その刀は誰が振っても強いんですけど普通は真の力を引き出せません。引き出すにはその灼炎に持ち主として認めてもらう必要があるんです」


「それが認められるとかどうとかって言うことでいいのか?」


頷くシエル。


「で、俺は認められた、と?」


「はい。だって灼炎の炎さっきよりまとう炎が猛々しいですからね」


確かに今俺が持っているこれはさっき拾った時より燃え盛るような炎をまとっていた。

熱くはないから本物の炎ではないのだろう。


「さっき平然とドラゴンの炎を消し去りながら灰にしてましたが、あんな事も普通できませんからね!」


強めの口調でそう言ってくるシエル。


「ん、まぁいい。とりあえず戻ろうぜ。疲れたし」


「エリアスってマイペースだよね」


クスッと笑うベティ。


「いつも誰にも相手にされなかったから1人の感覚が抜けなくてな悪いな」


「ううん。いいと思うよ」


「そうか」


そう言われると自然と笑みが零れた。

そんな会話をしてから俺たちは帰るべき場所に戻ることにした。




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