門番を倒し最強の武器を手に入れた
ベティを迎え入れた俺たちは更にダンジョンの奥へと潜ってきた。
「ここが最後のエリアだな」
階段を降りたそこは最下層。これ以上先はこのダンジョンには存在しない。
丁寧なことにそう書かれていた。
「何なの…この紙」
俺の持っているそれの正体を聞いてくるベティ。
「俺の遠くにいる親友に貰った」
「その人凄いんだね。こんなの用意できるなんてここのダンジョンを踏破したってことなのかな?」
「多分な」
答えながら石造りの通路を歩いていると前から人影が近付いてきた。
「最弱…」
あいつらだった。
「それに…ベティ?」
信じられないような目で彼女を見る男。
しかしそれも一瞬、直ぐにさっき見た顔に戻った。
「無事…だったのか?良かった。逃げるぞ」
「…ごめん…エリアスのパーティに入ることにした」
「…この最弱の…か?何考えてんだよ。考え直せよ」
「そうだ。考え直せよ。最弱だぞ?」
ベティの元仲間達がリーダーに同意するようにそう声をかけている。
「それにそいつじゃ毒の治療まで出来ないだろ?俺らも戻るところだ。一緒に戻って治療しよう」
「治してもらったからいいよ。もう苦しくないから」
「誰に…?…あの男か?」
自分の後方…ダンジョンの最奥に目をやる男。この先に誰かいるのか?
「あの男?私はエリアスに治してもらった」
「最弱が?」
男が驚いた顔で俺を見るのも一瞬。
「冗談はよせ。結託してビビらせようとしてんだろ?それより戻るぞ。おい最弱。お前も戻った方がいい。どうやってベティを助けたのかは分からないがこの先にいるのはお前の手に追えるやつじゃない」
「いや、進む」
短く答えて横を通り抜け奥へと進む。
「おい、最弱!聞いてんのか?マジで死ぬぞ?」
「俺は死にはしない」
「思い上がるのもいい加減にしろよ最弱。善意で言ってやってんだぞ」
俺の胸ぐらを掴む男。
「離せよ」
「…死ぬつもりか?あいつの強さをお前は理解していない。デビルカイザーをどうやって凌いでベティをここまで連れてきたのかは分からない。だがこの先にいるのはあんな奴の比じゃねぇよ。戻れ」
「…」
手を払って奥へ進む。
「おい、聞いてんのか?」
「黙ってろ。時間が無いんだ」
「ベティ!お前バカなのか?あんなアホについて行って」
「アホはあなたでしょ」
背後からそんな会話が聞こえてくる。
俺としてはさっきあのリーダーが話していた男というのが気になる。
早く行かなくては。
「あぁ!くそ!」
後ろから俺達に付いてくるあのパーティ。
「…おい最弱。俺はパリスだ」
「エリアスだ」
言ってから気付いた。名乗らなくてもいいかということに。こいつなら知っているだろうし。
「俺らがこんなにボロボロなことに何も思わないのか?それだけこの先にいるのはやばいんだよ。デビルカイザーも十分やばい。でもな。この先にいるのは俺らの手に追える奴じゃない。SSSランクのパーティでも全滅の可能性もある種だぞ」
「知らん」
「知らんって…あぁ…くそが!付いてきゃいいんだろ!」
「別に同行しなくていい」
「お前にじゃねぇよ!ベティがせっかく助かったんだからあいつに付き合ってやるって話だ!元仲間だしな」
「別に来なくていいけど」
ベティにもそう言われている。
「…流石に後味が悪すぎるんだよ付き合わせてくれ」
「勝手にしろ」
そう口にして更に奥へ進むと開けた場所に出た。
その奥には扉があった。両開きの扉。
その前にいるのはドラゴン。子供のドラゴン。
「ひっ!」
パリスは悲鳴を上げているが気にせずに前に出る。
「ここで俺に出会ったのが運の尽きだな」
氷の剣を生み出し歩みを進める。
「魔剣…まさか魔法を使えるのか?」
「あぁ」
「グルゥ…」
俺の接近に気付いてか顔を上げるドラゴン。
「邪魔だ」
魔法で凍らせてから砕く。
「…」
粉々になったそれに目をやらずに扉の前に立った。そして開けようとした時
「待て待て!」
パリスが飛んできて俺の方を掴む。
「何だ」
「何だじゃねぇ…。何だ今の魔法…」
「ただの氷属性魔法。凍らせただけだろ。それより手に負えないモンスターってのはどこに居るんだ?この先か?」
「…お前が砕いたあれだよ…有り得ねぇよ」
指をブンブン振ってあれを指さしていた。
「あぁ…こいつだったのか。お前の名誉を守る為にももう少し苦戦すべきだったのかもな」
「はぁ…?」
あれだけやばいと言った相手を俺が軽く砕いてしまったのだ、パリスを見つめる目は厳しいものかと思っていたが奴の仲間が見ていたのは彼ではなく俺だった。
「すご…」
「こんな強い人見たことない…誰なのよ最弱とか言った人…」
なんて事を言われて少し驚いてしまった。
力を出しすぎたか。これでもダンジョンが崩れないように抑えたつもりだが。
「エリアス、すごいです!」
俺の右手に抱き着いてくるシエル。
「そんなにすごいか?大したことないと思うが」
特に大技を使った自覚もないし、それだけ言われる方が妙な気持ちになる。それとも俺の魔法が弱すぎることに対しての皮肉だろうか?
「大したことあるよ!」
逆側の腕に抱き着いてくるベティ。
「子供とは言えドラゴンをあれだけで倒す人なんて過去にもいなかったはずだよ」
「そうなのか?」
そう言われると世辞でもうれしくなるのが人間だ。
「エリアス自分がどれだけの力持ってるのか全然自覚しないよね」
苦笑するレア。そんなにすごいことをしてしまったのだろうか。
「まぁいい」
興味はない。それよりも…扉に手をかける。
中は小部屋になっていて金色に光る宝箱が置かれていた。
それに手を伸ばし蓋を開けると
「これが…灼炎…」
中には刀身に炎を纏った刀があった。
その柄を手に取り外に出す。
「それ…火属性の使い手が1度は触れて見たいって願う…灼炎だよな…?」
指先を振るわせながら俺の持つ刀を指さすパリス。
「本物なのか?」
俺がこの灼炎を手に取ったことが意外なのか声は震えていた。
「本物だろうな」
短く告げて小部屋の外に出る。
それより男…というのは誰だったんだろうな。それらしい奴は見なかったが。
何とも言えない気持ちを抱えながらも地上に戻ることにした。




