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野生のクルマが飛び出した!

私、ルパン。排気量660ccのちょっぴり非力で小さめな何処にでもいる普通のクルマの子。

今日は毎日の様に会社へ向かうためのいつも通りの道のりを同じ時間に走ってたの。


「おニューの靴は悪くないけど、まあ普通かしらね?それよりも最近関節からギシギシと音がしちゃうのよ、嫌ねぇ。お医者様に診てもらおうかしら?」


フロント、リアやスタビのブッシュも交換時期かしらね?などなど他愛のない事を考えながら道を流していると、目の前に列車が現れました。


「あ、ちょうど行けそうね」


目の前に止まっていた五体くらいのクルマの列。私がその最後尾に並び止まろうとするとちょうといい感じのタイミングで車両通行帯のない道路を前に進み始めていきます。ここは私と同じ軽自動車ぐらいのスリムな体型なら行き違いもできるのだけど、バスやトラックなどが通るときはまるでレッドカーペットを歩いてく要人を側から眺める賑やかし要員が如く、その辺の路肩に身を寄せて大きなお代官様が通り過ぎるのを見守らなければなりません。


そんな通りを自転車レースのスプリントチームよろしくトレインを作って進んでく私達。花のお江戸の大名行列もかくやあらむといった具合で、他人に同じ廊下を歩きたくなさせる謎のプレッシャーとたまたま近くのレジの人と買い物が被った時の様な一方的な一体感を感じていると、彼は列車の最後尾にいる私のところに向かって急に身を寄せて来たのです。


D社のムーさんはおそらくこう思っていたのでしょう。


「ふぅ、やっと誰もおらんなったな。ぐへへほな左へ曲ろか」


列車の最後尾に不穏な影がさします。

え、ヤダァ、何この人? ひょっとして、痴漢?

私はこの時、虫の知らせか、数メートル先を進む前者の陰からその姿を確認した瞬間には既に靴慣らしの最中の綺麗なタイヤを擦りへらさんとブレーキの用意をしておりました。


「え? ちょっとまって! まだ私がここに居るんですけど!」


いやー、近寄らないでぇ!

ブレーキガツンのABSガガガでタイヤはズリズリズリー。

そうして道路脇のコンクリ壁とヌヌッと出てくるムーさんのおピンクなボディとデッドヒートを繰り広げる羽目になったのです。

先日パーキングに停めてたらバックでぶつけられて入院して帰って来たばっかりなのに、ルパンちゃんまた鈑金屋さん行っちゃうの? その前も信号停止中に掘られちゃったのに、今度は堀に行かされるの?

ふぇぇ、嫌なのにぶつかっちゃう。

不謹慎にもそんな事を考えてました。


流れも悪く法定速度30キロから少し遅いくらいで走っていたのが幸いしてか、ほんとギリギリで接触は免れましたが、車って急には止まらないものですね。ぶつからない様に壁に向かってハンドル切ってハラハラとしながら止まろうとする私を差し置いてムーさんは素知らぬ顔で出て来て更に逃げ場を塞いでくるようなド畜生でした。


多分、ムーさんは何も見ていなかったのでしょう。

急発進、急ブレーキのような不安定な挙動も見せずに夜中のコンビニから誰も通らぬ道路へ出る時のようにスーっと前に出てきたムーさんはそこから少し先の右の側道へサーっと曲がって消えてしまいました。まるで当て逃げに失敗しちまったぜ、と国道走ってる時に笑顔で私を見ながら歩いてやってきたヤバい人を見た時のような憤りを覚えましたね。故意でされるのは腹立たしいですが自覚すらなさそうなのは怨めしさまで感じます。


「私は何も見ていなかった、このことは他言無用だよ?わかったね」


ふぇぇ……。急に迫って来てあんなことやこんなことをさせてきたムーさんが過ぎていくのを、私は黙ってみていることしかできませんでした。

だって列車を切り離されたんですよ?自覚なく、それも強引に。流れが、そんな雰囲気があったじゃないですか。あーまだ続くのかぁ、長いなぁもう少し待つかーみたいな。

コンビニで例えるならレジ待ちで次の方どうぞー言われて行こうとしたら近くでラッキーと栄養ドリンク買いに来ただけの入店直後な客に順番割り込まれた挙句食べたかったコロッケとかの惣菜をついでに買い取られて売り切れちゃうっていう、そんな感じですよ?

でも、みんな明らかに奥の方のレジでデザートの棚の横まで並んでたわけじゃないですか。本来の次の人がペットボトルとサンドウィッチを片手に持って財布準備しながら「じゃあおかずどうしようかなぁ」ってなんか釈然としない顔してますよ?そんな感じですよ?


そう、釈然としないんですよね。

来年義務化される自動ブレーキなる怪しげな装置の存在が。

今回の例なら優先道路走ってたのに停車した車が横から急に突っ込んでくるとかされてもこっちが自動ブレーキで相手はカメラの再度がお留守だよと言わんばかりに割り込みし放題で割込みのお手伝いさせられてるのかよと。なんで横から来てたら発進できないような装置をつけていないのかと、仮にぶつけさせられてもこの場合最低一割負担のパティーンなのでしょうかね。

他にも代車に乗ってた時に自動ブレーキが誤作動したり、警告はいいが音だけ大きくて何の危険が危ないのかわけわかめだったんですよね、結局それも誤報でしたし。


現在主流の電子スロットルも当初はアクセルが戻らない不具合発生した車もあったそうですし、まだまだ熟成期間中なのかと思いますが、勝手に壁に向かってハンドル切られてチキンレースを始めても私は驚きません。結局機械もミスをするしそれを操るのも結局人間ですし、人間に魔法は使えないのはその辺の野生の生き物と変わりませんし、その人間が動かす車という乗り物はもはや野生の動物といっても良いのではないでしょうか?


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