2話 異世界……そして勇者就任
強烈な光に視界を奪われ、再び目を開けるとそこは空以外何も無い空間だった。
いや、今僕が足を置いている大理石のような材質の板は空に浮かんでいるようだ。
とは言っても、これも目指できる範囲で途切れている。
僕はそんな空と白板の世界に来てしまったようだ。
◇◆◇◆◇
「うーん、ラノベとかならこんな展開にはならないんだけどな…」
僕は所謂オタク文化をこよなく愛している。
…まあ、隠してはいるけど。
それでもこういった転移物は結構読んだのだけれども、魔法陣に吸われた後の展開としては神様のところに行くか、呼び出した人たちのところに行くのに…
この何も無い空間に跳ぶような展開はなぁ…
あんまり無いなぁ…
そう考えていると僕の目にチラリと金属光沢の光が映る。
歩いて近づいてみるとそこにかなり長め…刀剣ほどの長さの鍵が落ちていた。
…いや、置いてあったが正しいのか?
それ以外には何も無い空間なのでとりあえず拾い上げてみる。
技巧が凝らされアンティーク調のデザインの鍵はどこか神秘的な雰囲気を纏っており、金属製なはずなのに羽根のように軽かった。
感心しながら見ていると太陽の光に当てられ虹色に輝き始めた。
「おお!なんか綺麗だな…」
思わずこの光に魅せられてしまう。
しかし、この光は次第に輝きを増していきどんどん周りを光で包んでいった。
僕はそれを見て手を離そうとするが離すどころか身動き1つすら取れなくなっていて、気づけばその光に飲み込まれてしまったのだった。
◇◆◇◆◇
瞼をうっすらと開ける。
そこにはもう眩しい光はなく、誰かが自分を揺すっている。
「…て…ださい…」
ん?
「起きてください!」
僕はあまりの大きい声に飛び起きる。
「ふぅ…やっと起きましたね…」
そう呟くのは金髪碧眼の美少女で、頭にティアラを付けている。
…やはりここは異世界で今いるのは王城のどこかだろう。
「申し遅れました、私はミアナ・サリア・ベルブリア、このラーサリア王国の第二皇女です。宜しくお願いしますね?勇者様?」
へ?勇者?
───僕はこの日、異世界のブラックな職業、「勇者」になってしまったのだった。
Tips
カイト君はめんどくさがり屋。