07-わんことキャンドル-
俺はキャンドルを1つ取り出して机に置いた。
失礼かもだが実験対象は多いほうがいい。
「これは?」
「寝るときに火を付けると香りが出るんだ。
で、それでよく眠れるようになる」
それを聞いてぎょっとした顔になった。
・・・あっぶね、睨めっこだったら負けてた。
「・・・私に何をするつもりですか?」
「・・・あー、はい。言い方が悪かったですね」
姫さんにアロマキャンドルについて説明すると疑いながらも興味があるようだ。
てか、会話に違和感が半端ないんだが。
「そんなものを作っていたんですね」
「そんなものとは失礼な。
あと作ったものとしてはシャンプーとかあるんだぞ」
シャンプーの説明もするとそれも興味深そうに見ていた。
「姫さん思ったんだがなんか会話おかしくね?」
「あ、気づきましたか?
今までこの国の言語で会話していたんですよ」
・・・まじかよ。
達成感がいきなり来たぞ。
「スキルの恩恵もありますが頑張りましたね」
「まさかここまで来れるとは」
「翻訳の薬も安くはありませんからね。
王宮の人間としては助かります」
これで刺激的な朝の要因が1つ消えたな。
あれ、お酢の一気飲みみたいできついんだよな。
「それでシャンプー?なんですが私にも少しいただけませんか?」
「構わないよ。ちょっと待ってて」
小型の瓶に移して姫さんに渡すと少し嬉しそうだった。
「そうですね、いくつ渡せば」
「別にいいよ。ここでお世話になってるし」
「それとこれとは別です。
私個人の買い物ですから」
無駄にしっかりしてるお嬢さんだ。
なら適当な価格でいいだろ。
「だったら50Kとかでいいかな小さい瓶だし」
「そんなに安く?」
「まだ試作品だし、髪質に合わないかも知れないからね」
「わかりました。でもちゃんと使えたら製品で買いますからね」
「そんときはお願い」
そして時間になりキャンドルとシャンプーを持って帰っていった。
「さてスラスラ読めるわけじゃないからもうちょい勉強がんばるか。
することないし」
そこから1時間ほどしてから携帯を充電して気絶するように眠った。
「今日は一段とお機嫌がよろしいようで」
「実は・・・」
私はゼクトに部屋であったことを話した。
「異世界の知識ですか」
「そうみたい。
あ、湯浴みの準備をお願い」
ゼクトは目を見知らいて驚いていた。
「異世界の影響も悪いものばかりじゃないようで」
「なによ、何かおかしい?」
「いえ何も。
湯浴みの準備は既にできています」
湯浴みではメイドに体、そして髪を洗ってもらったが小瓶1本使ってしまった。
香りもよく、サッパリ感がクセになるわね。これは買わないと。
「姫様、髪の毛の艶が増したように感じられます」
「そうかしら?」
「はい。指通りもすばらしいかと」
ふふふ、思わず笑みが生まれてしまうわね。
気分がいいまま部屋に着くとゼクトがキャンドルを置いていた。
「姫様、こちらを調べさせていただきましたが。
毒や魔法などは見受けられませんでした。安全なものと確認させていただきました」
「そう?だったら早速使わせてもらうわ」
本当に彼は不思議よね。
そんなことを思いながら眠っていくのであった。
「んんー、よく寝たな。
筋肉痛以外は万全の体調だ」
コンコン
ん?朝早いな。
「あ、おはよう」
「・・・おはようございます」
手元の霜タオルを床に落としながらメイドさんは挨拶を返してくれた。
え?そんなに驚くこと?
「今日は随分とお早いのですね」
「うん。自分でもびっくりしてる」
早起きできたのと言葉が通じてるのにびっくりしてるんだけどね。
「言葉も通じてるし、スキルってスゲー」
「となりますと翻訳の薬も」
「うん、もう大丈夫だと思う」
体を回してバキバキいわせて今日の予定を考えた。
「とりあえず朝食だな。
はぁ、気が重くなる」
「あまりそう言わずに。肉類は贅沢品なのですから」
度がすぎれば体調崩すぞ、主に俺が崩すぞ。
恒例行事の朝食と訓練とレインボーを終わらせて屋敷に向かった。
「今日も来たのか・・・
体調が悪いのか?」
「いえ、いつも以上にきつい訓練で」
「そんなことか。安心しろ騎士は全員味わっているはずだ。
俺も何回苦しんだことか」
「ははは、お疲れ様です」
「お互いにな」
だいぶ打ち解けてきたな、あの人も苦労人なんだな。
なんて思いながら玄関に来ると執事さんが出迎えてくれた。
「御足労ありがとうございます」
「いえいえ、俺でよければ」
「あなただからですよ。
ではこちらの方に」
そして応接室に行くと少しはクマがなくなった女性が待っていた。
紅茶や焼き菓子がありなんとも言えない空気が漂っていた。
「そんなに緊張なさらないで。
実は相談がありまして」
「相談ですか?」
「はい。あなたにはうちの指名冒険者になって欲しいの」
「指名冒険者ですか?」
すごく嬉しいんだが、いいのか俺なんかで。
ただ、ワンコの世話してるだけだしな。
「お・・・私は田舎出身で冒険者になったのもつい先日の世間知らずですよ」
「それはここでも学べます。
いかがですか?」
「・・・これからよろしくお願いします」
王城以外に色々と教えてもらえるいい機会だろ。
ここで学ばせてもらうか。
「では仕事内容です。
基本はうちの3匹のお世話。
余裕が有るようならナイアンの補佐をしてあげて」
「わかりました」
「基本給は1日1000K。
ナイアンの報告次第ではもう少し渡しますが1日遅れてしまいます」
「1000Kも・・・」
600Kから1000Kまで上がりましたよ。
すごく嬉しいです。
「なにかあったらナイアンに聞いて」
「はい。わかりました」
「説明は以上ね」
まぁ、ワンちゃんのお世話だけだと時間余るしな。
せっかくだし俺も常識を学ばせてもらおう。
「最後にあなたのお名前を伺っておきましょうか」
「はい。私はカズヤ、戦うのは苦手な冒険者です」
「ふふふ、随分と珍しい冒険者さんね」
「あ、それとよかったらこれを」
カバンからキャンドルを取り出しアロマキャンドルの説明をした。
「・・・なるほど。
それでもどうしてこのようなものを?」
「最近寝不足と聞いたので作ってみました。
効果は昨日自分の体で試したので合わない限りは大丈夫です。
念のためですが執事さんこれに毒などがないか確認できますか?」
「はい。可能です」
姫さんに渡す時もこれを試せば良かったんじゃね?
まぁ、過ぎたこと言っても仕方ないか。
「とりあえずこれを渡しておくので安全だと思ったら渡してあげてください」
「かしこまりました。
思ったのですがあなたは冒険者より商人のほうがあっているのでは?」
「商人って頭使わないといけないじゃないですか。
少々自信がなくてですね」
本当は闇が深そうでめんどくさそうだからです。
なんて口では言わないけど思ってしまうくらいいいよね?
「おーよしよし」
ワンコ部屋に行くと早速3匹が寄ってきた。
マジ癒しだわ。心のオアシスだ。
「お座り」
はい可愛い。
3匹ともちゃんとお座りし、尻尾を振っている。
「頭いいなお前らー。
ちょ、顔舐めんな、口に舌いれんな」
さて、今日も遊んでいくか。
ちゃんとこの子達も見るよ!
「おい」
「ん?どうした?」
少年---スロット君が来ると3匹とも黙ってしまった。
あー、これは重症だな。
「・・・今暇だから手伝ってやる」
「おう、んじゃ手伝ってもらうか」
さっきから犬の方に視線が向いてるから本当は犬と遊びたいんだろうな。
「何をするんだ?」
「これでこの子達を撫でてあげて」
「わかった」
ブラシを持って犬に近づいたが犬も俺を中心に逃げた。
これはこれで一種の遊びなんじゃないか?
「・・・もういい」
「おいおい、早いよ。
まず、座って近づいて」
「俺は貴族なんだぞ」
「犬にとっては関係ないさ。
それに、この子達も家族ならこの子達も貴族だ」
渋々といった感じで座って近づくと年長者の大型犬シュシュ君が近づいて1舐めした。
「うわ!?」
「驚かない。挨拶みたいなもんだ。
それと手を出すなら下から」
「わ、わかった」
シュシュくんには慣れたのか不器用ながらブラッシングをしていく。
「ちょっと、キッチンをお借りしても?」
「僭越ながらついて行かせていただきます」
「お、俺も行くぞ」
3人と3匹をつれてキッチンに行きクッキーとお目当てのものも探す。
「あった。これを1ついただきたいのですが」
「木の皿ですか?」
「はい。使わないのであればですが」
「いいですが何にお使いに?」
「この子達の遊び道具ですよ」
形的のもフリスビーにちょうどいいし。
この子達もボールだけだと飽きるだろう。
「うし、焼きあがったな。
お前らいい匂いだからってこっち来ない、危ないから」
ちゃんと人用、犬用のクッキーを作り執事さんに渡した。
「奥さんに渡してあげてください。
小腹の時など丁度いいでしょう」
「ありがとうございます」
あとは粗熱を取って。
さて。
「お座り。よく出来ました」
いい食いっぷりだね、嬉しくなるよ。
「俺にも教えてくれないか」
「いいぞ。まずはこれを3つ持ってお座りという」
「お、お座り!」
まぁ、3匹とものんびりしてるよな。
お座りのおの字すら見せないとは。
「で、できない」
「クッキーちらつかせてから、あと声少し抑えて」
「すぅはぁ・・・・お座り」
俺の顔をみながら座った。
まぁ、俺が教えたからそうなんだが、ね?
「で、できたぞ!」
「クッキーあげて、ちゃんと撫でて褒めながらね」
「手は下から」
うん、3匹ともお利口さんだ。
ちゃんと食べたと思ったらこれだよ。
「お、おい舐めるな。
何もないから」
「ははは、見てる分には面白いな」
「見てないで助けろー!」
さてと、次に執事さんだな。
とりあえずスロットは放置して会話を進めた。
「執事さん、このお皿は犬が噛むんですが壊れづらくできますか」
「はい。少々お待ちを。
‘プロテクション‘」
おお?フリスビーが謎オーラに。
これが魔法ってやつか・・・便利ーー。
「これで1日持つでしょう」
「ありがとうございます。
さて庭に行くぞ」
毛玉の中からスロットが出てきて尻尾を振って落ち着きがなくなったワンちゃんと庭に向かった。
「ぜぇ・・・助けてくれてもいいじゃないか」
「本当に嫌だったら助けるけど?」
「・・・いや、いいや」
楽しかったようです。
微かに笑ってるし。
「ま、忙しくなるのはこれからなんだけどな」
「へ?」
投稿は2~3日に一回。
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