06-初給料-
繰り返すこと数回、ワンコ達は頭がいいのかちゃんと覚えてくれた。
「どしたみんな?」
「はっはっ」
鼻に押されたが何をしたのか・・・
単純に遊びたいとかそういうこと?
「庭に連れて行っても?」
「どうぞ」
俺が部屋から出ると足元を元気に駆け回る小型犬のキキ君。
急かすように押してくる大型犬ララ君。
じっとしているが尻尾は正直シュシュ君。
「それは?」
「この子達の遊び道具ですよ」
3匹とも首輪に紐は通しているが念の為だそうだ。
「へいパス!」
ボールを投げるとララ君だけが全力で取りにいった。
キキ君は走っては戻ってきてまた走って行くを繰り返す。
シュシュ君は木の棒をくわえてきた。
「ははは、体力持つかな」
俺は1日全力で走り、投げ続けた。
「ぜぇ・・・はぁ・・・」
「「「はっはっはっ」」」
「元気すぎんだろお前ら」
仰向けに寝たせいで顔中唾液まみれだ。
人がつっこいなこいつら。
「執事さん、この子達に水を・・・。
喉渇いてるみたいです」
「はい」
で、持ってきたのは白い液体と。
「ちょっと待ってください。
これは?」
「牛乳です。
これを飲ませようかと」
「ダメです。
水にしてください」
わからん牛乳とか腹下すわ、教えることは多そうだな。
すぐに水を持ってきてくれて美味しそうに飲んでいる。
「ワンちゃんたちと私たちの食事は違うんです。
元気がなかったのもこれが理由かも知れないですね」
「はぁ・・・ではどのようにすれば」
「時間的には・・・
あー、料理法は明日教えますから今日はキッチン使わせてもらっていいですか?」
作った方が早いべ。
人の台所はいるの気が引けるけど。
キッチンに入ることを許してくれて、ググりながら作ると美味しそうにバクバクと食べ始めた。
「これが犬用です」
「これは・・・薄いですね」
「ですよね。でもこれが丁度いいみたいです」
「おいお前!」
ん?なんぞや?
見ると男の子がいた。
「うちの犬に変なもん食わせるな!」
「えーっと、俺は依頼できた冒険者カズヤって言うんだ。君は?」
「お、俺はスロット」
将来が不安になる名前だ。
破産だけはしないようね。
「お母様は忙しいんだ!
仕事を増やすのは許さないぞ!」
「とりあえず声を抑えよう。この子達怯えてるから」
「あ。ご、ごめん」
3匹共俺の後ろに隠れちゃったし。
大声はびっくりするよね。
「そのお母さんが大切なんだね」
「うん。最近忙しすぎて食事すら食べてないから」
それは大変だ。てかそんなに忙しいなら犬は二の次にしろよ。
・・・できなかったってことだよな。
「もうちょっと調理してていいですか?」
みたところ執事さんも料理もしてたみたいだからな。
スロット君と会話しながら調理を始めて数分。サンドイッチを作ってみた。
「これじゃダメかな」
「毒見の方を」
一口食べると目を見開いた。
「坊ちゃんこれはあなたに毒です。
私が全部食べます」
「え?だ、大丈夫なのか?」
「冗談ですよ、素晴らしい出来です。
どうぞ、坊ちゃん」
「お、美味しい」
よかった口にあったか。
執事さん心臓に悪いんでやめてください、死んでしまいます。
「これだと手が汚れませんから、食べれると思います」
「ありがとうございます。早速お届けに」
「すまんが失礼してるぜ」
ダンロンさんが扉の前にいた。
びっくりした、どうしたんだろうか?
「おめぇがあまりにもおせぇからよ、迎えに来たってやつだ」
「すいませんダンロンさん。
この人は私の先生みたい人です」
ダンロンさんが紙を見して自己紹介すると執事さんはびっくりしていた。
「でだ、今日は帰るぞ。
夕飯にいねぇと何を言われるか」
「わかりました。
今日は失礼します、また明日な」
最後の1舐めをワンコ達にくらい、依頼場所を後にした。
「がはは、うまくいってんじゃねぇか。
もしかしたら名指し依頼になるかもな」
「流石にありませんよ。
はぁ、依頼って大変ですね」
「バカ野郎、大変じゃねぇ依頼なんてあるかよ。
で今日はいくら稼いだんだ?」
・・・はい?
「依頼料ってどっから貰うんですか?」
「あん?その他の場合は依頼者から直接もらうんだが」
つまりはそういうことだよな。
「まさかお前」
「もらってないですね」
「がはは、こりゃ傑作だ。
初依頼がタダ働きかよ」
ちゃんとオチをつけながら俺の初依頼は終わった。
ついでに言うとその他依頼はギルドに依頼すときにお金を渡して冒険者に伝わるそうです。
次の日訓練後ギルドに行くと探されていたようだった。
「カズヤさん、昨日の依頼の依頼主から連絡があり急いできて欲しいと」
「わかりました」
「カズヤさんわかっているとは思いますが、もし問題が発生いたしましても当ギルドでは一切の関与をいたしませんので」
「大丈夫です、わかっています」
呼び出しがあったがどうしたんだ?
まさか、料理やワンコ達になんかしちゃったか?
不安感からか足取りが早く依頼主元に向かった。
「ん?昨日の冒険者か。入るといい」
「あ、はい。ありがとうございます」
「あ、カズヤさん。こちらの方に」
なんだ?無駄に緊張感が半端じゃない。
応接室のような場所でふかふかの椅子だったが全然リラックスできなかった。
「急にお呼び出しして申し訳ありません」
「い、いえ大丈夫ですがどうしましたか?
何かありまs」
「申し訳ありませんでした」
素早いDO GE ZAだった。
びっくりして思考が追いつかない。
「王宮の冒険者とは露知らず、依頼金も渡さずに・・・
本当に申し訳ありませんでした!」
「や、やめてください」
「いいえ!処罰はなんなりと受けます!
ですが息子の、息子のスロットだけは」
「ですから」
俺は女性に近づいて肩を持って頭を上げさせた。
「依頼金に関してはこちらの勉強不足が主な原因です。
謝るのはこちらの方です。すいませんでした」
「いえいえ、そんな」
「頭を下げようとしないでください、困りますから」
実際困ってますから。
でもよかった、俺に不備は無いようだ。いや不備しかなかったわけなんだけど。
「私も勉強させていただきました、ありがとうございます」
「そ、そんな」
「では知らなかった私も悪かったし、私に渡せなかったあなたも悪かった。
これで手を打ちましょうそうしましょう」
ここは無理矢理にでもはいと言わせないとめんどくさい。
「・・・いいんですか?」
「いいんです。
あ、じゃあこうしましょう。少しでも悪いと思うなら」
「お、思うなら」
あー、いたずらして楽しいと思う人の気持ちが分かってしまった。
執事さんもこんな気持ちだったのだろう。
「今日もお世話の依頼をさせてください」
「・・・へ?」
「ですから依頼を。
昨日があまりにも楽しかったのでよろしいですか?」
俺としては楽しい職場が手に入るから特しかないぜ。
さあ、はいというのです。
「きゅぅ・・・」
「ふぁ!?」
奥さんは倒れてしまった。
いやいや、私にどないしろと。
「誰かー!誰かー!衛生兵ー!」
一体僕はどうなってしまうんでしょう。
また違う不安感で押しつぶされてしまいそうです。
「すいません、奥様はあまりにも多忙で」
「命に別状がなくて本当によかったですよ」
聞いたところによると旦那さんが亡くなってから1人で切り盛りしていたようだ。
最近は寝る間も惜しんで仕事をしていたようで、昨日なんて不安で眠れなったようだ。
申し訳ないことしたな。
「それで私は何をすればいいですか?」
「そのことですが奥様のことがありますから今日のところはお暇の方を」
「わかりました」
「それとこちらが昨日の報酬です。遅れてしまい申し訳ありません」
「私の世間知らずが原因ですのでお気になさらず」
布袋はすごくぎっしりとしていた。
あれ?200Kだよな?
「1匹あたり200Kで600Kですが、色々と勉強の方させていただいたので1000Kにさせていただきました」
「えーっと、嬉しいんですが大丈夫ですか?」
「これからもご贔屓にということで」
「ありがとうございます」
思わぬ報酬だった。
個人的にも嬉しいのでありがたく頂こう。
「それと明日もなのですがお屋敷に足を運んでいただくことはできますか?」
「あ、はい。わかりました」
「ありがとうございます。
ではまた明日」
「よろしくお願いします」
さて今日は暇になってしまった。となると、時間でも潰すか。
向かう場所はとりあえずあそこだな。
装飾品売り場に向かい指輪の価格をチェックした。
ふふふ、こう受講料的ことで指輪代をそっと渡す算段よ。
・・・悲しくなってきた。
「・・・そうか」
エンチャントの指輪はアホみたく高く。
普通の指輪ですら10000Kになっていた。
「ま、少しでも軽減できればいいか」
で、次は城内で制作だな。
急いで自室に戻ってリンゴっぽい香りのエッセンシャルオイルを作った。
「で、あとは適当な容器だな」
近くにいた騎士さんに使わないガラス製の容器とろうをもらってきた。
「・・・うっし。完成した」
できるだけ香りを抑えて造り早速試してみた。
すると、ほのかにりんごの甘めの香りのするキャンドルが出来上がった。
「あとは自分で試してみるか」
試作で3つも作れたから大丈夫そうだったら明日にでも渡すか。
これで快眠に少しでも協力できれば万々歳だな。
さて試してなかったスマフォだな。
○インとかまだ試してなかったし。
「あらら、俺のことは行方不明で大変なことになってんな」
心配になったので書き込んでみようかと思ったんだが、一切の書き込みが行えなかった。
試しに動画にも書き込んでみようかと思ったがそれもできなかった。
ソシャゲも操作ができなかった、残念。
「なるほど、そういう仕組みか。
繋がるだけでももうけもんだな」
通信には俺の情報も流してるはずなんだけどね。
どうなってんだこのスマフォ・・・
コンコン
「はい」
「ご夕飯の時間です」
「ありがとう」
・・・そういえばこの世界の人はスマフォ見ても驚かないな。
「質問なんだがこれ見ても何か思うところは?」
「これとは?」
おやおや?目の前に突きつけてるのに反応がないぞ?
・・・もしかして
「えーと、何が見えます?」
「?あなたの手のひらですが」
・・・どうやら見えないようです。
これは強い武器になるな。
「変な質問してごめん。
また実験しててそれで」
「この甘い香りはそういうことですか。
気をつけてくださいね、奇妙な人を見る目で見られてしまいますよ」
「あはは、気をつけるよ」
そして、夕飯を終えて姫さんに頼んで勉強を見てもらった。
「あなたの部屋はいつも不思議な香りがしてますね」
「まぁ、ただの実験してるだけなんだけどね。
・・・よかったら試してみる?」
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