閑話-お姫様?アリス襲来
今日も今日とて接客の日々。
いつのもおっさんに肉系の朝食、貴族にデザートを付けて朝食は終わり。
最近だと田舎基準の近所に孤児院ができたので、余裕があるときお菓子作ってウルが遊びに行くついでに届けてる。
少年少女は掃除の手伝いしてくれて助かるんだ。でも少年は遊びたがるから大変なんだ。
「今日のお昼何ー?」
「んー、炒飯かな。おやつ何がいい」
「クレープ」
「はいはい、ってパルム乗らないで」
「食べたい。駄目?」
「…わかったよ」
全く、パルムは本当にクレープ好きだよな。
いっつも作ってるから無駄に上手くなっちゃったし。
「兄ちゃんはいっつも尻にしかれてるよな」
「!?」
「ウル姉ともだから不倫だ」
「ドロドロ?」「刺すんだって」
「ちょ、何覚えちゃってるの!?」
怖いわ、最近の子供って怖いわ!
誰だよ、この子の近くでそんなことこの子達の近くで話したの。
「誰かいるかしら」
「はいはーい、今行きます」
…どっかで聞いたことある声だが接客してればよくあることだしいいか。
さて、今空いてる部屋は、
「あ、あなたは!」
「お、お久しぶりです」
あ、あなたは!あー、えーっと関取さん。
目の前に居たのは勇者召喚の際に居たお姫様、アリスがパワーアップして目の前に居た。
「あなた、いきなり消えるとはどういうことですか?職務怠慢ですわ」
「い、いやー。色んなことがあって」
ど、どないしよ。とりあえず食堂に案内するか。
「カズヤ、どうしたの」
「あ、パルム。彼女はえーっと」
「ア・リ・スですわ!名前位しっかりと覚えてくださいまし」
「す、すいません」
「足が疲れましたの。早く案内してくださいまし」
「は、はい」
変な負い目感じちゃって逆らえねぇ。
あ、元々逆らえるような人じゃないや。
「それで彼女は誰ですの?」
「パルムのことですか?パルムは「俺の嫁」です。
実は「子供もできた」のでってパルム!?」
「まぁ、それは喜ばしいこと。
実は私も婚約いたしましたのよ」
え?この人と婚約?
お、応援させて頂こう。見知らぬ方頑張って。
「それにしても、随分かわりましたね」
「ははは、色々ありましたから」
「話して頂けます?」
「…そうですね。今日の仕事は難しくないので少々お時間いただけますか?」
「ええ。私もここで待ち合わせをしていますの」
ほう、ここも有名になってくれて嬉しいよ。
さて色々と話すか。できればウルもいてくれると助かるんだけど悩みどころだな。
「ただいま帰りました」
「あ、ウル」
「カズヤただいまです。あら、王妃様がいらしていたのですね」
「あら、どうも」
おや、どうやらそこまで根に持っていないようだ。
まぁ、何年もたってるから流石に大丈夫か。
「では話を始めますね」
俺は俺がいなくなってからのことを話した。
随分と昔のことを話した気がする。3年以上も昔のことだしな。
「…なるほど。こちらにも落ち度があった様ですね」
「気にしないでください。そのおかげで今幸せですから」
「…そのようですね。でも私の気が収まりませんわ。
彼らに変わって謝らせてください」
「いえ、本当にやめてください。
俺はちゃん本人たちから謝らせますから」
「…そうね。できる限り応援させてもらうわ」
そんなことを話していると部屋にもう1人見知った人が入ってきた。
あの貴族さんだ。え?うそ、この人が旦那さん?
「アリス、ここがオススメの宿でね」
「ふふふ、わかってるわ」
「おやおや、この宿の主人を早速気に入ったみたいだね」
「それがね、エスク」
姫さんが俺とのことを一通り話すと驚きながらも手を握ってきた。
ちょ、ブンブンしないで手首痛いから!
「やっぱりこの宿を選んで正解だった!
今日は一緒に飲みでもしたいんだが残念ながら違うところに予約を入れてしまってね」
「ははは、気にしないでください。
時間出来たときでいいので飲みましょう」
ちょっと語りたいこともあるし。
そんなことを言っていると冒険者が帰ってきて、アリス達も高級な宿の方に移っていった。
「おい、兄ちゃん!いつもんで頼むぜ」
「はいはーい!パルム、ウル手伝ってくれ」
「ん」「任せてください」
今日も温泉に入り抱き枕にされながら日々は過ぎていく。
「いらっしゃいませ」
「やあ、カズヤ君。今日はありがとう」
「いえいえ、お時間を作ってもらったのはこちらですから」
今日は貴族さんや冒険者、そして俺を含めた全員で飲みだ。
始まると同時にみんなで騒ぎ始めにぎやかになっていく。
「おい、もっと飲め!」
「ちょ、種族的にあなたの方が強いに決まってるでしょ!」
「歌って踊りまーす」
『イエーーーーーイ!』
あー、楽しいし、だいぶ酔が回ってきてしまった。
貴族さんも酔が回ってきているようだし聞くなら今しかないかな。
「貴族さん」
「ん?なんだいカズヤ君?」
「姫さんとはやっぱり政略的なものですか?」
「いやいやいや、僕から求婚したんだ」
…まじで?
姫さんの幸せは約束されていたものだとしても意外な形だった。
「む、その顔は失礼なこと考えてるね?」
「う゛。すいません」
「いや、いいんだよ。
…実は僕は2度目の結婚でね。1人目の妻は病気で体がどんどん細くなっていってしまったんだ。
その時アリスを見て、色々な感情があったけど1目惚れしてしまったみたいでね」
気持ちは理解できなくはない。
パルムに初めてあった時は本当に心配になった。
「そこからアピールして、頑張って何年もかかったな。
彼女がついに認めてくれてね。付き合い始めて数ヶ月の時に彼女が王族って知った時は血の気が引いたけど。
それでも僕は彼女と共にしたかったんだ。説得してなんとか婚約まで持っていったわけさ」
「す、すごいですね。末永く幸せになれそうでいいと思いますよ」
「…ははは、そんな君もね」
「はい?ごぉぺ!?」
ちょ、首痛い。誰だ後ろから首狙ってきたの!?
「あー、カズヤですぅ」
「チュー」
「んむ!?酒臭!
誰だこの2人に酒飲ましたやつ!?」
この2人まだお酒に弱いようでものの数分で出来上がってしまうようだ。
しかも絡み酒だから余計タチ悪い。
「ずるぃ、私も」
「んー!貴族さん笑ってないで助けてくださいよ!」
「駄目、逃がさない」
「ぐあぁぁぁぁドレインはやめてくれー!」
体力吸われるし、2人解けないしで逃げれねぇ。
皆はニコニコとこっち見てるだけだし。
「君たちも末永く幸せになりそうだ」
「がはは、蹴られて死にたくねぇんでな。
きばれ兄ちゃん、男としては幸せな死に方だぜ」
「畜生おぼえんー!」
アリスは気まずそうにこっちを見ず。
みんなは俺らをみて冷やかし、俺は2人のキス魔に襲われた。
皆、笑って幸せそうだ。
円盤は4色に輝き、扉は空かず。
『勇者揃いし時、扉は開かれるbyD・田中』
「っち、まさかこんなところであいつが必要になるなんて」
「もう扉を壊そうよ」
「…ダメですね。この塔、魔法無効の上物理は効きません」
勇者は途方に暮れ話し合いの末もう1人の勇者を探すことに決めた。
若干1名反対をしていたがショウヘイの1言で押し黙った。
「無理矢理にでも連れてくるぞ。
この世界から魔物を消して幸せな世界を作るために」
勇者一行はその場を去った。
世界を救うため。初代にして最強の魔王を倒すため。元の世界に帰るため。
『欲望の塔』を後に。




