from cat -ね小話-
私たち盗賊なんてバレないし良くなってルンルンにゃ。
久しぶりに大手を振って街を歩く気分は最高にゃ!
「姉さん!何をしてるんですか!」
「なんにゃ、お前か。大手を振って街を歩いてるだけにゃー」
「いいっすね!
俺らは警備してる最中なんで羨ましいっス!」
ふふふ、折角の休日なのにゃ。今までは森で日向ぼっこして過ごすだけにゃったから新鮮にゃ。
それにお昼寝ポイントも見つけないといけにゃいから今日は忙しいにゃ。
「ではこれで失礼するっス!」
「頑張って働くにゃー」
さーてどこに行くか悩むにゃ。
この街も詳しくなんて知らにゃいし。とりあえずいい匂いのところに向かうかにゃ。
「おい嬢ちゃん!食ってかねぇか、サービスするぜ」
「んんー、おいしそうな匂いにゃ。これなんにゃ?」
「アースバードの串焼きだ、うめぇぞ」
「んー、大きいのくれるなら買うにゃ」
「かー、可愛い子に弱いのは男の性だね。
かみさんに内緒で頼むぜ」
「ありがとうにゃー」
あいつちょろいにゃ。
早速バレて怒られてるけど知らないにゃー。
「ん?なんにゃこれ?」
なんか丸いのが跳ねてきたにゃ。
本当にこの街は見たことないものばっかりあるにゃ。
「ねぇちゃん取ってー!」
「これかにゃ?」
噴水前はのんびりした空気が流れているからか子供たちが遊んでいる。
警備員もいるので親御さんたちも安心してるようだ。
丸いのを持って子供のところに向かうとニコニコとこっちを見てきたにゃ。
な、何にゃ?なんかおかしいところがあるのかにゃ?
「ねぇちゃんも遊ぼうよ!一人足りないんだ!」
「んー、いいけど何するにゃ?」
「簡単だよ!えーっとねぇ」
あの丸いの--ボールを掴まないで地面に付けないようにする遊びみたいだにゃ。
ふん、子供だにゃ。そんな単純なもので楽しめるなんて羨ましいにゃ。
「いくよー」
「いいにゃー」
ここは大人の余裕をみせるにゃ。
適度に遊ばせて満足させればいいんにゃろうし。
「よ、ほ」
「ねぇちゃんすげー!」
アクロバットな動きをだしボールを子供たちに渡していく。
これ、無茶苦茶楽しいにゃぁぁぁぁ!
「いったにゃ!」
「俺もやるー!」
「おお、すごいにゃ!
でも怪我はダメにゃ!」
子供が転びそうになったら助け、木の上にボールが乗ったら取ったりしていたらいつの間にか夕暮れ。
楽しい時間は直ぐにすぎて行き子供たちも帰っていった。
「ばいばーい」
「またにゃー。
んー、疲れたにゃ。夕飯どうするかにゃー」
「おい」
ん?噴水を警備していた警備員が話してきたにゃ。
なんにゃ、悪いことしてないにゃ。
「子供の相手をしてくれて助かった。
どうだ?これから飲みでもしないか?」
「なんにゃ?ニャンパかにゃ?」
「感謝の気持ちだ。
久々に楽しめた」
「まぁ、いいにゃ。
それでどこに行くのかにゃ?」
警備員に酒場に連れて行かれると他の警備員に知ってる顔もいたにゃ。
あいつら仕事終わりにここにいたのかにゃ。
「あ、姉さん!どうして」
「なんだこいつらの知り合いか?」
「知り合いもなにも上司っス」
「な、なに?上司とはしらず」
「いいにゃいいにゃ。でも、おごってもらえるにゃ?」
「は、ははは。そうさせてもらいます」
ラッキー。魔物の縦社会に感謝にゃ。
しかもこの店飲んだことない酒まで置いているにゃ。
「みんな、今日は飲むにゃよー!」
「「おお!」」
場の空気は最高。そして甘い酒。
こんな状況で酔うなってほうが無理にゃ。
「歌うニャー。踊るニャー!」
「いえぇぇぇぇ!」「え?」
「ぼえぇぇ!」
「「ぐぁぁぁ」」
みんなが耳を抑えてるけど笑ってるにゃ。
本当に楽しいにゃ。この街に来て本当によかったにゃ。
-数時間後-
「にゃはは、酔ったにゃ」
「姉さん、飲みすぎっス」
もう、視界ぐるぐるにゃ。
これ明日酷いことになりそうにゃ。
「あー、いい月にゃね」
「ちょ、姉さんどこに行くんっスか!?」
今日の月は近くで見たい気分にゃー。
ひょいひょいと壁を上り屋根まで行くと月も綺麗に街も静かで最高にゃ。
「うう、そろそろ帰るかにゃ」
夜風もあって寒くなってきたにゃ。
さーて帰って寝るかにゃ。
地面に降りのんびりと歩いていると、浮浪者が歩いてきたにゃ。
昼は見なかったけどやっぱりいるんにゃな。
「ん?なんにゃこれ?」
手があったかいにゃ。この赤いのは血かにゃ?
手足が痺れ仰向けに倒れると写っていたのは変わらず明るい月だけだった。
「ようやっとツキが回ってきやがった」
目を覚ますと腕と足が拘束され力が入らなかった。
なんにゃ、何が起きてるにゃ?
「ようやく目を覚ましたようだな。
止血もしてやったんだから感謝しろよ」
「誰にゃ、お前」
こいつ誰にゃ?
確かに止血はされてるけど、目的はなんにゃ?
「…忘れるか。そうか、そうだよな!」
「ぐっ」
傷口が殴られ血が滲む。
痛いにゃ、そして。
「う、べぇぇぇ」
「ははは、汚ねぇ!てめぇみたいなクソ女にはお似合いだな!」
髪を掴まれ上を向かされ気持ち悪さに負けて、吐いてしまうが顔にかかってしまう。
「ははははは!はぁ、はぁ。
さあて、お前の汚ねぇ姿も見れたことだしわかってないお前にネタばらしだ」
「はぁはぁ。ぺ。
なんにゃ」
「俺はな、お前に全てを奪われたんだよ!
ああ、なにもかもだ!金も身分も恋人も!
俺はお前に復讐するためだけに生きてきたんだよ!」
男は血走った目でナイフをだし、腕や太ももを切りつける。
「ははは、お前の人生、くだらないにゃ」
「黙れ!」
「がっ」
傷口を柄で殴られ広がっていく。
痛い、無茶苦茶痛いにゃ。
「何泣いてんだ?
お前には誰もいない。助けに来る訳無いだろ?
お前はずっと1人で死んで行くんだよ」
「やめるにゃ」
「1人で生きて1人で死んでいく。
お前の人生なんて何の価値もなく終わっていくんだ」
『あんたなんかがいるから』
っち、嫌なこと思い出したにゃ。
思い出さないようにしていたのに。
「おいおいどうした?
さっきまでの威勢はよ!」
「うるさいにゃ」
「そういうことか。
どうせそうだろ?
誰も愛さない。お前みたいなクソ女を誰が好き好んで選ぶか!」
『あんたのせいで私は』
「お前なんか」
『あんたなんか』
「『死ねばいいのに』」
今まで胸の奥深くにしまっていた記憶。
忘れていた、忘れようとしてきた記憶がフラッシュバックする。
「お母さん」
「ははは、それだよ。その顔が見たかった!
最後の最後にいい表情が見れてよかったぜ!」
目の前でニヤニヤと笑いながらロープを解くがもう立ち上がる元気すらない。
足は震え、どこに力を入れればいいかわからない。
「じゃあな、あの世であいつに謝ってこいよ!」
目の前に白銀の刃が迫る。
でも怖くない。これでもいい気がした。
が代わりに顔に降り注いできた暖かいものだった。
「最近あいつが移ってきたか?」
「んだよ、お前は」
目の前にいたのは真っ赤ななにかだ。
腕にはナイフが刺さり、床を赤く染め上げる。
「さて、貴様には選択肢が2つだ。
おとなしく着いてくるか、ぶちのめされてから連れて行かれるか」
「ふざけんなふざけんなふざけんな!
お前には何の関係もないだろ!」
ナイフを握り訳も分からず振り回す。
危ないはずだが、赤いもの-アグヴェル-はため息を着いた。
「手加減は苦手なんだがな」
呑気に怪我を手当しながら歩き振りかぶって殴った。
ただそれだけだった。それだけで男は吹き飛ばされ壁に埋まった。
「…死んでないよな?」
アグヴェルは手早く警備団を呼び男は連行された。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫」
っち、どうやらあの野郎この女に手を出していたようだな
どこかで見た気がするがまぁ、気のせいだろう。
「はぁ。おい、あとは任せたぞ」
「はい!隊長はどこに」
「こいつの介護をする」
あの野郎、女が吐くまで痛めつけやがって。
状況だけなら男が悪いが女の話も聞かないとな。
「で、家はどこだ?」
「えーとその、わからない」
「…はぁ、どうしてこうなった」
どうやらショックがあり混濁してるみたいだ。
こういうのはあいつが担当だろ。
「とりあえず、ここで顔でも洗え」
噴水前にきて顔だけでも洗わせようと思った。
拭きはしたが気持ち悪いだろうからな。
「って馬鹿か!」
尖った石を持って喉に刺そうとしていた。
とっさのことだったので手のひらで何とかした。
今日は怪我が耐えないな、あいつにポーションでももらうか。
「殺してよ」
「は?」
「私はもう、死にたい。
お願いだよ」
「はぁ、歯食いしばれ」
拳を握り一発殴った。
女とはいえ魔物だ。これくらいなら大丈夫だろ。
白猫は噴水に真っ直ぐ飛んでいき水柱を立てた。
あいつならもっとうまくことを運んだんだろうな。
「死にたいなんて抜かすな。
残さるやつの気持ちを考えろ」
小さい頃から親に言われてきた言葉だ。
すっかり口癖になったようだ。
「誰も私のこと」
「たく、面倒な奴だ」
夜風も寒いしさっさと帰りたいんだが。
はぁ、あいつも話してたが女の子には優しくだったか?
「折角俺が助けたんだ。
勝手に死ぬな。恩があるなら返してから死ね」
家も近いし、これくらいなら平気だろう。
上着を投げかけてから帰路に着いた。
「じゃあな」
「…顔が痛いし熱いにゃ」
あの変なやつ上着投げてきたけど水含んで意味ないにゃ。
まったく全然役に立たないやつにゃ。
「あはは、本当に変なやつにゃ。
本当、使えないけど、これ暖かいにゃ」
びちゃびちゃの服を着て、家に着いた。
家の魔道具で乾燥させて顔に湿布を貼った。
「まったく、明日仕事なのに湿布臭くなるのかにゃ」
これでも女の子なんだから気をつけて欲しいモノにゃ。
はぁ、今日は疲れたにゃ。
色々あり疲れたのかお布団に入ると直ぐに眠ってしまった。
こんな街いいと思ったけど何も良くないにゃ。本当最悪な街にゃ。
「あれ?姉さん。その顔どうしたんッスか?」
「にゃはは、昨日ちょっとあったにゃ」
「そッスか。姉さんの顔を傷つけるなんて酷い奴ッスね!」
「そうにゃろ?本当に変な奴にゃ」
「そうッスよ。って姉さん何笑ってるんッスか?」
あれ笑ってたのかにゃ?調子狂うにゃ。
「お前ら集まれ。
今日からお前らの上官だ」
「あ、姉さん。上司来たッス。
俺もいつか後輩持つッスよ!」
変な奴にゃ。あそこに変な奴がいるにゃ。
え?上官?え?
「おい、そこぼさっとしてないでこっち来い」
「あ、姉さん、姉さん。目つけられてるッス」
「へにゃ?」
目の前には変な奴。あれ?なんにゃなんにゃ?
頭が真っ白になっていくにゃ。
「昨日のやつか。
早速怠けるとは舐められたものだな」
「にゃにゃ」
「お、おい。どうした?」
こ、腰が抜けてるにゃ。
また足に力が入ってないにゃ、どうしてにゃ?
「はぁ、本当に面倒な奴だ。
おい!お前らは俺の部隊と組手だ」
「は、離すにゃ」
「少し黙ってろ。
上司の命令に逆らったら打ち首だ」
膝と肩を持たれて抱っこされてるにゃ。
こ、これすごいにゃ。すごく恥ずかしいけど、なんで嬉しいにゃ。
「にゃはは」
「腰抜かしたと思ったら笑うのか。
俺の周りには変な奴しかいないのか」
「大丈夫にゃ。
変なやつには変な奴がお供されるものにゃ」
もうどうにでもなるにゃ。
変に鼓動が早くてテンションも上がってるにゃ。
「一生ついていくにゃ、上官」
「一生は勘弁してくれ」
いーやーにゃ!
なんかわかんないけどこいつの近くは幸せなんにゃ。
この気持ち上官にも伝わってるともっと幸せにゃ。
まるでお昼寝するときの陽気のような幸せに包まれながら、救護室に運ばれた。
同じ気持ちをアグヴェルも感じていたが部下に風邪薬をもらっていた。




